今回のテーマは「仕事における正解とは何か」です。若手社員が先輩や上司に「どうしたら良いですか?」と質問するとき、質問者は正解を求めがちですが、仕事によって、立場によって、求められることによって正解は変わるものです。
若手社員が「もっと裁量のある仕事がしたい」と言うとき、たいていは「自分でやり方や進め方を自由に決められる」仕事がしたいわけです。そう考えれば、裁量と正解のバランスや組み合わせを考えておかないとコミュニケーションに行き違いが生じます。
結論から言うと「どうしたら良いですか?」という質問はNGです。それはなぜなのか。質問をする部下、質問される上司、いずれの立場の方にも考えていただきたいと思います。
「どうしたら良いですか?」というイケていない質問
仕事の中でこんな質問をしたこと、されたことのある人はいるでしょう。
「これってどうしたら良いんですか?」
この質問自体がまったくイケていないということを、ビジネスマンなら強く認識してください。
質問者に裁量が与えられていない仕事に関する質問なら、管理している上司はマニュアルを整備しておく必要があります。その種の質問の答は決まっています。「この問題が起きたらこの作業を実行する」といったもので、AIやITの技術で置き換えられるものです。「Aの次はB、Bの次はC、Cにトラブルが起きたらC´に変更しDを行う」など手順が決まっていて分岐も少ないなら、指定通りにこなしていけばOK。作業手順についての「どうしたら良いですか?」は上司や先輩に聞くのでなくマニュアルで確認するべきです。
マニュアルに記載がない問題は上司に確認するべきですが、ここで質問者は「マニュアルに書いていない点でこういった課題、問題を感じているのですが、どうすれば良いですか?」という聞き方をしなければなりません。
質問者に裁量がない場合とある場合
質問する際に大事なことは2つあります。1つは「このような取り組みをしたのですが分からなかったので、どうしたら良いですか?」と前提を伝えることです。ただし、これは質問者に裁量がない場合です。裁量がある人ならば、「どうしたら良いですか?」と聞いても上司は「知らん」とつれないでしょう。実際、「好きに進めてください」「自分がイメージしている形で進めてください」しか答えようがありません。
裁量を与えられているということは、自分の判断で仕事を進めていいわけです。もちろん何でも好きなようにやって良いわけではなく、目指すべきゴールは決まっています。たとえば、上司と部下のコミュニケーションでどうしたら良いかという悩みならば「働いているメンバーがしっかり成果を出せる状況ができていればいい」となるでしょう。弊社ならば「営業の悩みをゼロにする」会社なので、営業の悩みがなくなることに役立つか、もう一つは社内で「時間生産性」という言葉を使っているのですが、一時間あたりの高い生産性が生み出せるか、そういった判断のもとに仕事を進めるのであれば任せます。
裁量のある人から「どうしたら良いですか?」と聞かれたら、上司は情けない気持ちになって「君はどうしたいの?」と思うはずです。そのくらい「どうしたら良いですか?」という質問は、役割、切り口においてまったくイケていないということを認識してください。それが、これから円滑に仕事を進めていく上で非常に重要です。
まずは「自分がどうしたいか」
仕事は、基本的にコミュニケーションの連続です。仕事とは依頼です。誰かから依頼を受けてそれを実行することでお金の循環が生まれていく。その依頼に対して「自分はどうしたいか」をきちんと伝えられているでしょうか?現実は、伝えられていない人よりも考えていない人のほうが圧倒的に多いです。これは、問題が起きたら思考停止してしまう人が非常に多いということでもあります。
繰り返しますが、「どうしたら良いですか?」という質問はNGです。まずは自分がどうしたいかをきちんと語れているか、考えているか、思考停止していないか。理想の状態にするために、マニュアルに書いてあることはマニュアルを確認する。マニュアルに書いていない問題は「自分だったらこうする、けれどもそのやり方でうまくいくかどうか分からない」ならば上司に「自分はこうしたいのですが、正しいかどうか分からないので確認させてください」と質問してOKです。
問題はなぜ発生するのか
問題はそもそもなぜ起こるのか、それは理想と現実の間にギャップがあるからです。理想に至っていない現状があるから問題なのです。こうしたい、こうありたいという未来像がなければ、そもそも問題は生まれません。
たとえば「テストなんかどうでもいい」という生徒は、テストが何点であろうが問題意識は生まれないわけです。しかし先生は、「このテストで60点は取ってもらわないと、20点では進学、進級は難しい」と感じているから「進学する」「進級する」という未来を見据え、生徒が足りない40点を増やすための課題を考え指導することになります。
現状を精査すれば、この生徒なら計算力が弱いとか、集中力が足りないとか、解決するべき課題が見えてきます。課題を解決すれば問題が減っていき、問題がなくなったら現実はより良い方向に進んでいく、といった順番でより良い変化が起きていきます。
上司は答合わせの道具ではなく相談相手
そもそも、上司が答を持っているという考えを捨てるべきです。自分より高い給料を貰っている、ポジションや役割が上にある、だから部下は「答をください」と言いたいかもしれません。しかし、正しい上司の使い方は、「相談相手として使う」です。
ChatGPTに質問を投げかけるのと同じように上司を使ってはダメです。ChatGPTに「京都に旅行したら見ておくべきスポットは?」と質問すれば、「ここがおススメです」と答が返ってきます。ツールならそれで良いのです。
上司が部下にやってほしいことは、自分ではできない現場における問題・課題の解決です。役職が上がれば上がるほど、現実問題として現場から遠くなり、見えづらくなっていく。けれども現場の一つ一つの事象を解決するアクションをすべて自分で取ることは不可能です。ですから会社は人を雇って、増やして、業務を進めてもらっているわけです。
組織に役割や階層がある理由を考える
一つ一つの現場の問題・課題について、部下がすべて同じレベル感で「答をください」という仕事をしていたら上司の仕事がなくなりません。上司は永遠に上司の仕事ができないわけです。部下の皆さんは、そういったことを意識できていますか?
会社において役割や階層があるのはどういった意味、意図、目的があるのかをきちんと理解していたら、やるべきことはシンプルです。自分の階層において自分の影響力をコントロールして成果を出していくだけです。プレーヤーがお客様の一番近くにいてコミュニケーションを取っていかなければいけないし、マネージャーになればそのメンバーが成果を出せる状態を支援していくのが仕事になります。
課から部、部から会社というように視点を高くしていくと視野が変わってきます。「答をください」型の質問は、上司を答合わせ、もしくは答を回収するための道具としてしか認識していないので、そんな質問をしているうちは自分の役割、ポジションは上がりません。自分がそこに介在している、役割を与えてもらっている意味や価値や理由をきちんと考えていなければ、自分の価値が上がらないことを理解してください。
役割によって求められているものの違い
結局、会社が仕事において大きな役割や高い給料、ポジションを得てほしい人材は、会社の方向性や意図、目的を理解して、それに沿った意思決定や判断、マネジメントができる人です。そのような人が上に来てくれないと会社がブレるのです。
自分がその会社で上に行きたいのであれば、会社の指針、方針は何かを考えなければいけないし、答合わせではなく答を出す側になっていかなければなりません。会社の答は、ミッション、ビジョン、理念に沿った形で成果を出すことだけです。お金に色はないと言われますが、「稼ぐ」において色はあります。「何をしてもいいから稼いで来い」と言うのなら会社にする必要はないのです。弊社ならば「営業の悩みをゼロにする」というビジョン、ミッションに基づいたアクションであれば、成果が出せるように自由に頑張ってもらえれば、後は「楽しく働きましょう」でOKです。
「答を求める」というアクションから脱却することが自分の市場価値を上げていきます。今回は、「どうしたら良いですか?」と「正解」を得ようとする質問がなぜ的外れなのかを組織論から解説しました。
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