本記事は、笹田が新聞販売会社様のセミナーにてお話しした内容をまとめたものです。
本日の流れ
司会:皆さんこんにちは。昨今の新聞販売の現場は非常に厳しい状況にさらされています。10年前、2012年には全国で4,777万部あった新聞発行部数も2022年には3,084万部へと35%以上も減少しております。しかしながら、私たちは営業会社です。営業で道を切り開いていく必要があります。本日は、新聞業界以外のトップセールスの視点で、新聞営業をアップデートできるヒントを得られればと思います。それでは本日の講師をご紹介いたします。株式会社営業ハック代表取締役、笹田裕嗣様です。
笹田:皆様こんにちは、営業ハックの笹田です。本日はよろしくお願い致します。私のキャリアの中心は新規開拓営業ですが、新規獲得したお客様を自分で担当し続ける一気通貫型の営業もしていました。研修やコンサルティングで個人宅への牛乳の訪問営業に関わった経験もありますので、皆さんの役に立つお話ができるのではと思っています。
司会:本日の内容ですが、まず新規営業、次に既存顧客営業、最後に新聞営業のあり方、この3つの視点でお話をいただきたいと思います。
新規営業の課題
新聞の「お試し」は響いているか
司会:では、さっそく新規営業について。新聞販売店の営業は基本的に訪問営業で、最近はお試し1週間無料などのサービスを主軸にしています。しかし、新聞購読者数が減っている中、新聞を読まない層への営業で苦戦してるのが現状です。この新規営業について、笹田さんのお考え、またはアドバイスをいただければと思います。
笹田:はい、新聞に限らず1週間お試しのような形の営業のアプローチはよく目にします。ただ、「お試し営業」が効果的なのは、消費者がその商品を使用したことがない、もしくは使用したイメージがわかないケースです。
ですので、「お試し」は食品や飲料の新商品の販促には効果があると思います。しかし、皆さんが営業されている新聞はどうでしょうか。新聞は定期購読しなくてもコンビニや駅に行けば今日の分は買うことができます。試してみたところで「読むかな?」「読んでもなあ」みたいなネガティブな感想を持つ方は一定数いるでしょう。
情報を収集するにしても、わざわざ新聞を購読しなくてもネットニュースで十分、ツイッターのトレンドで十分と思っている方が多いと思われます。そう考えると、「1週間無料なのでお試しで読んでください」という営業トークは刺さりづらいのではないでしょうか。
お客様は、なぜ新聞をやめてしまったのか?
笹田:そこで、これから営業活動を進めるにあたっては、ぜひ地域特性を考えながらアプローチを進めていただきたいと思います。
ポイントは、お客様に何を価値としてもらうのか、また、何が相手のネックになっているのかを予測して伝えてあげることです。皆さんご存知のヤクルトならば、レディーさんが個人宅に訪問して直接お手渡しする。お客様と会話することを価値として訴求できます。皆さんの場合、お客様との会話を価値化するのは難しいので、まず認識するべきことは、「新聞を過去に手に取ったことがある人に営業している」、そして「その人たちはきっと高い確率で新聞に挫折した可能性が高い」と捉えることです。これが、営業の幅や可能性を高めることにつながります。
お客様とお話をするにあたって、たとえばWebに強そうとかSNSをやっていそうな相手なら、新聞なんか十分間に合っていますと言われる可能性は高いでしょう。そういった予測が立てられれば、「最近ツイッターで話題になったあの話、うちの新聞でも取り上げたらかなり反響がありまして、ぜひ深く知っていただきたいと思って今日新聞をお持ちしました」といった話ができます。「ネットニュースに書いていない裏側や記者が深くリサーチした記事なので一緒に勉強しませんか」といった姿勢を示す、お客様が過去新聞をやめてしまった理由を払拭する、もしくはそれ以上のメリットがあるという話をするわけです。
新聞離れ、それ以前に書物を手に取って読む、文字を読むという習慣が薄れているという前提はあります。しかし、そうは言っても新聞に価値を感じる方がいるのもまた事実です。新聞に挫折した人にどんな価値提供をすれば、どんな価値を想像させることができれば買ってもらえるのか。この点をぜひ意識していただければと思います。
「声を集める」「声を届ける」営業活動
笹田:もう一つ、皆さんにお願いをしたいことがあります。新規の営業にあたっては、ぜひお客様の声を集めてください。これは、ネットに転がってるお手軽な情報リサーチをしようというのではありません。地域の声として集めていただきたいんです。「お隣さんが実はこんなことを言っていました」というのはNG ですが、「この地域に住まわれている同年代の方にはこういったお声が多いので、今日は新聞をお持ちしました」とお伝えすれば、売り込みトークではありません。お客様の声をご紹介しただけなので、相手の納得度、信用してくれる確率もグンと高まります。
「売り込む」ではなく「声を届ける」。そういった姿勢や考え方を持つことも営業の可能性を広げると思います。
「営業をアップデートする」のとらえ方
司会:ありがとうございます。「一緒に勉強しませんか」というフレーズはすごくいいなと思いました。とはいえ今、営業マンが営業だけではなく配達やいろいろな業務をしている中で、なかなか勉強する時間が取れないという事情もあります。
新規営業で多くのスタッフが挫折するポイントは、なかなか営業の中身をアップデートできないことかと思うんですが、この点は仕組みですとか教育の仕方ですとか、営業のレベルアップにつながることに販売店はどのように取り組むべきでしょうか。
笹田:そうですね、ひとつ意識していただきたいのは、時代は変化したけれどもお客様はそんなに変化したのだろうか?というところです。たとえば3年、5年、10年のスパンで見れば、お客様は随分変わった、本当に新聞を読まなくなったと言えると思いますが、1週間前と今日で違いがあるかというと、ほぼ変化はないですよね。「時代に合わせて営業をアップデートしていく」という課題の捉え方をしてしまうと、あまりにハードルが上がってしまうと思います。そこで、先ほども例としてご紹介しましたが、お客様の声を届けるという姿勢をぜひ持っていただきたいんです。
先般参加させていただいたS-1グランプリでもお話ししたことですが、自分の活動にレバレッジをかけるという考え方をご紹介します。レバレッジとは何か。一石二鳥、いや一石三鳥、もっと一石十鳥を目指しましょうということです。営業して売れた、あるいは売れなかった。その結果だけなら一石で一鳥が取れるか取れないかです。けれども、売れなかったとしてもお客さんから「声」をいただくことができれば、こういう傾向があると分かる。あるいは売れたお客さんに「どうして買ってもらえたのですか?」と聞いて、たとえば「いや実は最近いろんなニュースで情報を集めてるんだけど腑に落ちなくて、ちゃんとした情報に触れたいと思ったんだよ」といったことを言ってもらえたとしたら、お客様に共感してもらえる確率も上がると思います。
お客様の声を引き出すことができれば、新規開拓の確率、成功の可能性は上がるはずです。ぜひ 「言葉探し」に取り組んでください。
既存顧客営業の課題
「やめます」と言われて慌てるのはナンセンス
司会:ありがとうございます。では、次のテーマ、既存顧客営業に行きたいと思います。昨今、新聞の購読を中止される方が非常に増えています。その理由は、ネットで十分だったりとか、最近は家計が苦しいというお話もあったり、これに対して「何とか続けてくださいよ」というお願いベースの営業では新聞離れに歯止めがかからないと感じています。
お客様への価値というお話が出ましたが、価値の提供、新聞を取ることでどうなるのかという価値を感じてもらえる営業が必要なのだと思います。では、既存顧客の営業についてお考えをいただけますでしょうか。
笹田:はい ありがとうございます。先ほどの新規開拓とは観点を変えた回答ができたらと思います。お客様に「解約します」と言われた時、多くの営業は「うわっ!やめちゃうんだ」「やばい、上司に怒られる!」と慌てるのではないでしょうか。私も経験があります。ただ、慌てている時点でナンセンスなんですよ。
なぜなら、やめるにあたっては、お客様に何かしらの兆候があるはずだからです。人は毎月取っているものを昨日今日でやめようと思うことはあまりなくて、たとえば3ヶ月前にこんなことを考えたかもしれません。「最近、新聞を読んでいないな。かと言って、新聞を取っておかないと困ることもありそうだ。でも読まないし、読まなくても困っていないよな」。で、それ以降もやはり新聞を読んでいない。そして1ヶ月前ついに「これ、お金の無駄じゃないか」という結論に至るわけです。お客様の頭の中には必ず迷いの積み重ねがあります。こういった、お客様が不安、不満、負担に思っていることを「やめます」と言われたタイミングで初めて知るから慌てるんです。
情に訴えて構わない
笹田:声が聞けたとしても解約するお客様はいると思います。ですが、事前に知ることができていたらフォローできたことはあったかもしれません。カバーする、お役に立てる、提案できることがあったにもかかわらず、やめるという最終手段を行使されて慌てている。だからこそ、お客様の小さな不安、不満、困りごとがないか、負担がないかを日常的にしっかり聞き取ることが重要なんです。
お客様と普段から会話して、「いつも丁寧にサポートしてくれているし、この人は裏切れないなあ」と思ってもらえたら勝ちです。けれども多くの営業、特に新聞営業や牛乳営業は必要なものを持ってきてさっさと帰る、それ以外に来るのは料金を受け取りに来るときだけ、という印象があります。作業員に情は移りません。けれども、いつも丁寧にサポートしてくれる、大事にしてくれる、私のことを特別扱いしてくれている、そういった営業を裏切ることはなかなかできません。心理学で言うところの返報性ですね。個人は法人と違って感情で意思決定するケースが多いと言えます。情に訴えるコミュニケーションやアプローチを重ねておくことは、お客様の解約を事前に防ぐことにつながります。
アンケートはNG!
司会:ありがとうございます。それならば、事前にお客様の事情を知るためにアンケートをしたらどうだろうと考えたんですが、いかがでしょうか。
笹田:アンケートは絶対にやらない方がいいです。なぜなら、アンケートはお客様が気付いていない不安や不満を気づかせてしまうリスクがあるからです。「不安に思ってること、不満なことはありますか?」「新聞は一週間のうち何回読みますか?」などと聞いてしまうと、これまでそんなことを考えもしなかったお客様が「そういえば、最近全然新聞読んでないわ。もういいや」と考えるかもしれません。安易なアンケートは危険です。
さらに、人間には一貫性の原理というものがあって、一度自分で下した決定を裏付けようという心理が働きます。すなわち、「いらない」と思ったらいらないと言っている人の情報を集め、「使わない」と決めたらもう使わない方向に気持ちを進めてしまうものです。「新聞は負担だ」と思われてしまったら、これをひっくり返すのは非常に難しい。
じゃあどうやって聞くのか?たとえば、「最近どうですか」という会話をした上で、新聞のどのあたりが読めていないとか、負担になっている部分はありますか?といったことを雑談の延長で聞くことができれば良いですね。もちろん皆さんの営業スタイルや訪問して各戸にどれぐらい時間をかけるのかという事情もあると思いますが、負担や不安などネガティブな意見を聞くときには、アンケートよりも会話ができる関係を作る方が有益です。
あくまで会話の中で気持ちや状況を聞いていく、そこから仮説や予測を立てるという形でアプローチすることをお薦めします。と言うよりも、そうしないと難しいですよね。
電話営業で大事なこと
司会:ここ3年間、コロナ禍でリアルな訪問営業が封じられていた事情もあり、電話での営業が増えています。この電話営業は、さきほどお話に出た「作業」の営業になりがちだと思うんですが、リアルな訪問の営業と電話での営業は、やはり気をつけるポイントは変わってくるものでしょうか。それに加えて、電話での継続営業の注意点やポイントについてお教えください。
笹田:私は、基本的に人は電話が嫌いだという前提でコミュニケーション取ることが大事だと思っています。電話には「出ない」、もしくは「切る」という選択肢があります。したがって、一回嫌われてしまうと以後なかなか電話で会話をすることが難しくなるので、「取りあえず電話しました」というアクションはできる限り、と言うか絶対に取らないようにしたいですね。
「取りあえずの電話」とは、相手にとって価値のない電話です。たとえばヒアリングで電話をかけて、「ご状況いかがですか?お困りごとはありませんか?」「大丈夫です、間に合ってます」という会話があったとします。ここにお客様のメリットは一つもありません。営業が安心するためだけの会話です。そうならないように、一つでいいですから、お客様にとってお役に立てる情報やクスッと笑えるネタを準備してください。それによってお客様からいただける情報も変わってきます。話せて良かったと思っていただける情報が自分の会話の中にあるかどうか、これを一つの基準にしていただくと良いでしょう。
お客様との「点」の関係をつなぐ
司会:クスッと笑える情報というのは、どの程度の情報ならば合格といいいますか、例などあればいただけるとありがたいですが・・・。
笹田:ありません。よく聞かれるんですよ、「鉄板トークありますか?」「外せないネタってありますか?」と。笑うツボ、感じる基準は皆違うので、これを言っておけば大丈夫という話題はあり得ないんです。
あくまで自分が顧客の営業担当として責任を果たそうとするのであれば、目の前にいるお客様、あるいはこれから電話をかける相手は何が好きなのか、どういう会話を重ねていけば良いのかを真剣に考えるべきでしょう。点と点をつなげて線にするように、過去のやり取りを大事にして営業する。具体的には、会話の記録を残しておくことを徹底してください。
お客様が一番不満を感じる営業はどんな営業だと思いますか?それは、自分が話したことを忘れている営業です。「前も言ったよね。何回も言ってるよね」と思われることが、顧客離れの一番大きな理由です。ですから、お客様のことを分かっている状態、そこを目指してください。
司会:お客様情報を蓄積する、またそれをつなげていくというところは業界的にも非常に弱いと考えていますので、参考にしたいと思います。
新聞営業のあり方
サブスクモデルが参考になる?
司会:それでは3つ目のテーマ、新聞営業のあり方についてです。新聞販売の現場でなかなか成果が出にくくなってきている中、お客様に新聞の価値を伝える努力を我々が怠ってるという考え方もあるかもしれません。カスタマーサクセスという言葉がこの業界では通じづらいのですが、お客様自身がどうなるのか、これを使うことによってどういった未来が待っているかという部分が抜け落ちているんじゃないかとも、私自身は考えています。
新聞は一種のサブスクモデルとも思っているのですが、最近IT業界を中心にサブスクを採用する業界が増えています。『ザ・モデル』という有名な書籍があって、『ザ・モデル』型の営業体制は大変参考になると思うのですが、現状ではなかなか業界的に厳しいかなとも考えています。
新聞販売店が2年後、3年後も営業を続けていくためには、何が必要でどう営業を組み立てていけばいいのか。非常に悩んでいるのですが、この点についてお話しいただけますでしょうか。
笹田:はい、ありがとうございます。世の中のトレンドでは、サブスクリプション、いわゆるサブスクですが、IT業界のSaaSのように定期的にチャリンチャリンとお金をいただこうという会社は多くなっています。ただ新聞は顧客単価を上げることがビジネスモデル上難しいですよね。サブスクモデルが目指しているところは、LTVという考え方があるのですが、一人あたり一社あたりの生涯契約期間中にもらえるお金の最大化です。したがって、契約期間を長くする、もしくは顧客単価を上げていく、この二つのアプローチを行いながら売上全体のパイを増やしていくというものです。
この点において、新聞業界が同じような形にできるのかというと難しい。それならばお客様に解約されないようにするために、自分たちがまずやれることをやっていくしかありません。もちろん違ったプラン、たとえばイベントなど、違う形でお金をもらう戦略を考えることも大事ですが、一営業という側面から見れば、解約されないようにする、もしくは新規顧客を増やしていくことに集中するのは必然と思います。
お客様の取り合いでなく「時間の取り合い」
笹田:しかし、新規獲得は難しいですよね。新聞離れがあり、それ以前に人口の減少があります。不謹慎かもしれませんが、お客様が亡くなられて届け先がなくなったケースもあるでしょう。そういった現実を前に、今後どうしていけば良いのかというと、顧客の取り合いという観点を一旦置いて、時間の取り合いをしている発想を持つべきだと思っています。
スマートフォンやパソコンが普及し、雑誌ですらほぼスマートフォンで読めてしまう時代です。その中で、皆さんはどうやって自分が提供しているものに時間を使ってもらおうとしていますか?タイムパフォーマンスという言葉が生まれたように、消費者の時間意識が高くなったこの時代、お金を使ってもらう前に時間を使ってもらうことに勝ち筋が立っているのかどうか。この点を、まず考えてください。
先ほど、『ザ・モデル』という書籍のお話をいただきました。『ザ・モデル』は営業を4つの機能に分解しています。【マーケティング】が集客活動をして、【インサイドセールス】が商談やアポイントを作り、【フィールドセールス】が商談に対応して、【カスタマーサクセス】が契約後の顧客の支援をします。『ザ・モデル』の本質は営業の分業化ではなく、顧客になってくれた人への支援を手厚くしてLTV、生涯顧客価値を上げていこうというものです。
昔の、景気がよく人口が増えていた時代は、イケイケドンドンでとにかくたくさん契約を取ってこいというやり方で良かったんです。解約されてもそれ以上に新規の売上を作ることができました。しかし今、顧客は限られ、ましてや減っていく時代においては、解約数を減らすことが何より優先度の高い課題です。そのために、先ほどお話しした時間獲得競争の意識を持つことが必要なんです。
司会:時間の取り合い、なかなか私もそういった意識は持てていませんでした。具体的に、何か一つでもいいので、どういう視点を持てば時間の取り合いを具体的な行動に移せるのか、教えていただけないでしょうか。
笹田:人の時間の優先順位を知ることに尽きます。たとえば人生の優先順位の1位はビールを飲みながらYouTubeをダラダラ見ることだという人がいるかもしれません。その人に「価値があるからこれをやってみて」と言っても、おそらくYouTubeの時間を削ってまで動かないでしょう。相手にとって時間の優先順位が高いもの、何かの時間を削ってでもこの時間だけは作りたいもの、それが何か、それを知ることがスタートになります。
野球の大谷翔平選手はよく寝るという記事がありました。試合後、他の選手にご飯に誘われても、自分は寝たいから帰ると言うそうです。これを聞けば、他の選手と会話するのも有意義なのにもったいないと思う方もいるでしょう。しかし、大谷選手にとっては自分のベストパフォーマンスを出すために寝る時間は譲れない。人によって時間の使い方の優先順位は違うということを理解した上で、お客様にとって優先順位が高いものが何かを考えようというのが、私からの回答です。
新聞販売店の強みを生かした売上アップのヒント
司会:ありがとうございます。ひとつ前の質問に戻ってしまいますが、新聞販売店は既存顧客の単価が上げづらいという課題にぶつかっています。新聞の価格は決まっていますし、そこに積み上げられる商材も現状少ないという現実があります。
笹田さんは牛乳の営業のご経験もあるとのことでしたが、新聞販売店が単価を上げることが可能な商材はあるものでしょうか。あるいは、笹田さんだったらどうやって新聞のお客様の単価を積み上げようと考えるでしょうか。世帯あたりの単価を上げるという視点になるかもしれませんが、こういう商材もいけるのでは?というものがあればヒントをいただければありがたいのですが。
笹田:そうですね、商材は特別ないですけれど、逆に言うと何でもできると思ってます。なぜなら、個人情報が獲得しにくいこの時代に、皆さんは個人情報やデータがいただけているわけですから、逆に言うとその地域やマーケットで買ってもらえる確率が高いものは何か、それをキャッチできる立場にあると思います。
新聞を購読している人にそれほど大きな傾向はないでしょう。それよりも、地域という単位で考えた方が、売れるもの、必要な物が分かってくるのではないかと思います。
たとえば、新聞の広告に入っているスーパーからお金をいただいて、ポイントカードの入会案内を行うとか。そういった形でお金をいただく先を変えることができるかもしれません。広告に付加価値をつけるという発想も可能です。「売る」という発想ではなく、購読者から料金をいただく以外に広告主からお金をもらう。自分たちがお客様の個人情報を持っているというメリットを活かして何か提供できないか、付加価値が付けられないか、といったことを考えてみてはいかがでしょう。
個人向け営業の難しさ
司会:ありがとうございます。笹田さんはこれまでいろんなものを売られた経験があると思うのですが、個人相手の営業で売ったもので、これは難しかったという商材はありますか?
笹田:個人向けの営業は全部難しいですね。いらないと言われることが圧倒的に多いので。ただ、その中でも太陽光発電のパネルですとか、ネットですでに情報が出回ってしまっている商材、消費者の先入観が強い商材はさらに難しくなります。どんな商材でも大事なことですが、営業する相手にその商材がどんな先入観を持たれているのかを知っておかなければなりません。それは地域や販売先によって変わることもあるので、それも加味してリサーチするのがベターかと思います。
新聞営業の新人教育はどうすればいい?
司会:個人向け営業は難しいというお話が出たので、新人教育についても伺いたいと思います。個人宅への飛び込みの厳しさ、そこで心が折れてしまうこともあるのですが、新人スタッフの教育は年を経るごとに難しいと感じています。そこで、新人にはどのような営業教育をしていくべきか教えていただいてもよろしいでしょうか。
笹田:はい。まず営業は負けることが多いということをちゃんと伝えておくことだと思います。仕事を「綺麗にやりたい」というのが特に若手の方にすごく多い傾向があって、綺麗とは何かと言うと、失敗が少ない仕事をしたいということです。誰しも失敗をしたいとは思いませんが、個人向け営業は一定数の失敗は織り込んでおく必要があります。
営業という確率論の世界で勝負をするなら、相手のことを事前に知ることが成功の大きな鍵を握ります。法人営業であれば会社のホームページを見るなりして営業先をある程度調べることはできますが、個人は個人情報が保護されているので事前に知ることは難しい。この前提で考えたときに勝ち筋を作りづらいわけです。
したがって、結果的にはある程度「量」で問題を解決しにいかなければ勝てない、商売にならない、仕事にならない。これを事前に、新人にいかに理解してもらうかというところが最初の大事なポイントです。失敗する、嫌われる、お断りされる。これを前提として捉えましょうということが一つ。
もう一つはPDCAを回す、これに尽きます。失敗を失敗で終わらせてしまえば、何の意味も成長もありません。失敗から学んで行動を変えるのが必然ですし、それをできる人が成果を出せる人です。同じことをやって同じ失敗を繰り返さない、という当り前のことを意外と営業は疎かにしがちです。このことはぜひ理解してほしいですし、理解できない人はこの世界に入ってきてはいけないでしょう。
司会:PDCAを回すというところをもう少し深く教えてください。営業経験がないスタッフを採用して、一緒にインターホンを押すところから教育していくわけですが、元々営業が得意な子は自分でPDCAを回して成長していくものの、そうでない子は壁にぶつかってだんだんやる気がなくなっていくことが多いんです。ここで気をつけるべき教育のステップというものはあるのでしょうか。
笹田:新卒で営業が得意も不得意もないと思います。あるとすれば、営業が好きか嫌いか、もしくは体育会系の経験をしていてうまくいかないこと、理不尽なことに免疫があるかどうかくらいでしょう。
得意か不得意かは置いておいて、営業のステップは伝えておかなければいけません。最終的に契約をいただくまでにやらなければいけないことはたくさんあります。身につけなければいけないスキルもあるでしょう。まずは、会話ができるようになることが必要です。上司の同行なしで商品説明を1人でできる、1人で契約の話ができる、契約がいただけるようになる、といった段階があると思うんです。けれども、営業の評価はどうしても契約数に偏りがちなので、プロセスを理解することがないまま営業に出てPDCAが回らないことが多々あります。
たとえば、テレアポが10件取れたから「頑張ってるね」ではなく、アポ数は今まだ伸び悩んでいるけれど担当者と話せた確率、受付を突破できた確率、決裁権のある人と話せた確率がこれだけ増えたからもう少し頑張れば大丈夫、というように最終的に独り立ちできるまでのステップを示して理解してもらうことがすごく重要です。
質疑応答
牛乳試飲の確率アップの方法は?
司会:笹田さんは牛乳の営業をされていたということですが・・・。
笹田:あ、それは牛乳の販売会社のコンサルティングで関わったということです。
司会:そうなんですか。実はうちも牛乳の販売をしておりまして、牛乳の営業は試飲を取ってもらうのを一番初めに教えられるんですが、これのハードルが結構高いんです。そこで、試飲を取ってもらう確率を上げるヒントをいただけないでしょうか。
笹田:その前に、試飲が本当に必要なのかという議論が必要ですね。牛乳など試飲しなくても味の想像がつくわけで、逆に試飲したから「いらない」と返答がしやすくなる可能性もあります。人間はある程度惰性で生きているので、表現は悪いですが一回契約したら勝ちという側面も正直あります。試飲をやめたら売れたということも実際あるので、そもそもハードルの高い試飲をそこまでしてやる必要があるのかどうか、それが一つのポイントです。
それを踏まえても試飲をした方が売れる確率が高いということであれば、試飲すべき理由、必要性を訴求するところが営業における勝ち筋につながってくると思います。
キャラを売るべきか、商材を売るべきか
司会:次は、参加者の方から直接質問していただきます。
参加者:具体的なお話しをいただいて本当に勉強になりました。ありがとうございます。僕が質問したいのは、お客様にアプローチするときに個人のキャラを売るべきなのか、商材を売るべきなのか。次に、ある程度話せるお客様に対して、断られたときにどれぐらい食いついていくのがお客様にとって不快な感じにならないかといったことです。よろしくお願いします。
笹田:最初のご質問は、意思決定の仕方によると思いますね。感情が大きく影響するお客様であれば個人やキャラクターで、言い方は悪いですがゴマスリ営業で売れる方も一定数います。一方で効率やパフォーマンス、費用対効果を評価されるお客先に行くと、誰が営業に来ようが関係ないので、そこは商品の価値で営業するべきでしょう。よって、回答は「地域特性や自分が営業する相手の判断基準に合わせて使い分ける」になります。
一つ補足しますと、個人のキャラクターであろうが商材であろうが、まず相手に嫌われないようにすることが大前提です。特に個人向けの営業はそうです。嫌われない工夫とは、たとえば身だしなみを整えるといったことです。それに加えて、まずは怪しまれないように、私はあなたの敵ではないということを理解してもらえるやり取りや情報提供がされてるかどうかがすごく重要だと思います。
次のご質問、いつ撤退するか、どこまで押すべきかですが、相手との事前のコミュニケーションや関係がどこまで構築できているのかによって決まると思います。たとえば、初回の訪問でインターホンを押して「買ってくれるまで帰りません」というような営業をしてしまえば、2 回目はもうありません。もう1つ例をあげると、地元の10年来の友達に「新聞取ってよ」と言ったら断られて、別の機会にまた「新聞取ってよ」と言っても関係が崩れることはないと思います。一方で、1回で嫌われるお客様がいるとしたら、関係が希薄だからです。どういった関係を作った上でクロージングするのか、この点を考えて基準にしていただけると良いと思います。
インターホンの突破方法は?
司会:インターホンが突破できない、なかなかお客様に出てきていただけないんですけど、そこで気をつけるポイントなどはありますか?
笹田:はい、基本的に「見られている」意識を持ちましょう。インターホンはいくつも種類があると思うんですが、とにかく自分は何もかも見られている思ってください。スマートフォンや携帯をいじっていて、家の人の声が聞こえた瞬間に顔を上げて表情が変わったら「もうこいつダメだな」と、お客さんの心が離れるんです。心が離れるポイントを自ら作っていませんか?家の前、マンション内、敷地内では常に演じていることが営業の大前提です。
たとえば、自分がカメラ越しにどう映っているのか。こういうことに対して意識的でいてください。たとえばZOOMでミーティングするときも同じですが、画面に目から上しか写っていない人がいます。あるいは顔がやけに近すぎる人とか、逆にめちゃくちゃ遠い人、いろんな人がいるんですが、自分はこの画角で清潔感を一瞬でも訴えかけることができているのかどうか。相手はインターホンの画面だけで「こいつ嫌だな」「気持ち悪いな」「いい人そうだな」といったことを判断しているのです。
あともう一つは、声が聞き取りづらくないか。声はインターホンでは基本的に聞き取りづらいので、大きな声で話すのは最低限のマナーと考えてください
自分のPRチラシの事前配布はあり?
司会:では、ここからは参加者からいただいた質問を私からご紹介します。この方は、新規の飛び込み営業をするとき事前に自分のPRチラシを入れているそうなんです。事前にそういったチラシを入れるのはどうなんでしょう?という質問です。
笹田:人によりますね。それをフックにして会話につなげられる人はうまくいきますし、逆にただ入れるだけで何も変わらない人もいるでしょう。この点においては、チラシを入れて次にどういった形に会話をつないでいくのかを考えて、チラシがあった方が会話できるという人はやりましょう。チラシがなくてもできるのであれば、そこに時間を割かないで違ったところに時間を使う方がいい思います。結局、自分が何に時間とお金を使って一番成果につながるのか、後工程にどうつなげていくのかという発想で判断するべきだと思います。
プレゼント営業をやめたい
司会:もう一つ、参加者からいただいた質問です。新聞は、洗剤とかビールとか、そういった商品をお届けして契約をしてもらう営業手法を取っているんですが、これを変えたいけど変えられない。変えるとしたら、どういう風に変えていったらいいでしょう。今までそれに慣れてきた人たちはどうやって変えていけばいいのか。
笹田:これは、もう中止するしかないです。ほとんどの営業は売れるやり方よりも今までのやり方に流れるので、その選択肢が残される限りは永遠にやり続けるでしょう。したがって、「洗剤のプレゼントは禁止」としない限りは残り続けると思います。身も蓋もない話ではあるんですが、現実問題としてはそこがベースです。
司会:ありがとうございました。それでは、これにて本日のセミナーは終了とさせていただきます。
笹田:ありがとうございました。
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