今日のテーマは「脱・体育会営業」です。大層なタイトルをつけましたが、かく言う私もゴリゴリの体育会営業の出身・経験者です。体育会営業、すなわち気合と根性と時間で困難を乗り越えてきましたが、それでは必ず限界がきます。営業とは、良い戦略を立てて正しい努力をしていけば、正しい成果に結びつくもの。ただ闇雲に頑張るのでなく、戦略やマネジメントを考えてみたいというのが今回の趣旨です。
行動量で問題解決する営業
皆さんは営業というとどのようなイメージを持っていますか?たとえば「焼畑営業」。体育会型の営業組織は、とにかく行動量で問題を解決しようとします。そうして一つの市場(畑)で顧客を取り尽くしたらまた別の市場に移って同じことを繰り返します。
「ローラー営業」という営業もあります。たとえば電話帳の上から下までくまなくかけまくる。飛び込み営業をするならば、ビルの上から下まで一軒一軒訪問する形式です。余談ですが、飛び込み営業は最初にビルの最上階に行って、そこから一階ずつ階段で降りてくるのが一番時間的に早いと言われています。私は、そんなことはないだろうと下からどんどん上がっていったら、やっぱり先人の知恵は侮れません。上から降りてきた方が早かったのでした。少し話は逸れましたが「ローラー営業」、とにかく上から下に営業をかける方式です。
最近多いのは、SNSやWebサイトの問い合わせフォームに営業メールを送る「メール爆撃」。メールアドレスをホームページから取得して送ることもあります。以上のように、行動量で問題を解決するタイプのマネジメントは一定数存在します。
目指すのは「燃費の良い営業」
実際に行動量で問題が解決できて成果につながることもあるので、それらを全て否定したいわけではありません。ただ、行動量を担保できるのであれば、それをより良い形で活用し、量を成果に変えていく、燃費の良い営業を実践しようというのが今回のテーマです。
なぜ燃費が良い営業、つまり頑張った分だけ成果につながる営業を目指すのかというと「辛いから」に尽きます。私も成果が出ない時期があり、辛くて営業をやめたくなった経験があります。営業をやっている方で、これまでずっと順風満々で、動けば動いただけ売れたという方はいないでしょう。ほとんどのトップセールスは、なかなか成果が出ない、うまくいかない時期を乗り越えて今のポジションを確立していると思います。トップセールスも元々トップセールスであったわけではなく、まだお客様が一人もいない新人時代から新規で売上を、お客様を、案件を作ってきて、その積み重ねで今があるはずです。
今、営業の分業化が進んでおり、インサイドセールスからトスアップされた見込み客を案件化・商談化していく営業が増えています。したがって、今と昔のトップセールスの定義も少しずつ変わってきていますが、昔ながらの営業の話をすると、かつては自分でアポを取って、自分で案件化して、商談を行って、受注を獲得して、カスタマーサクセスまで全てやるスタイルが主流でした。このような場合、売上目標を追いかけるためには、新規案件を作るのはもちろんですが、既存のお客様だけでも既に一定の売上を確保しています。そこまで行くために何をやるべきなのか。新規だけをとにかく行動量で何とかするというのでは、うまくいかない時期が長引いてしまいます。
頑張ったのに成果にかえってこない、評価もされない。そんな辛い時期が長引くのをなくす、部下の方にはそうさせないマネジメントをする。それはどうすれば良いのかを説明します。
営業の成果は掛け算で決まる
まず、営業の成果はどのように決まるのでしょうか。営業の成果は「量」「率」「質」の掛け算で決まります。当然、いずれかが0では成果が出ません。「量」とはシンプルに行動量・活動量です。会社によってはアクティビティといった表現をしますが、まずは「営業の努力」「頑張り」「活動」という原資があります。分かりやすい例で、テレアポしてアポイントを増やしたいと思った時、アポイントが生まれる原資=ガソリンは何でしょう?かけた電話の数です。電話をかけなかったら、アポイントは生まれません。
当り前ですが、これは意外と盲点だと思っています。10件アポイントが取りたい。100件アポイントが取りたい。なのに5件しか電話をかけていない。これでは目標に届かないに決まっています。したがって、営業を進めていく中で、自分が出すべき成果に必要な最低限の活動量、アクティビティ量はどれくらいか、これを押さえておくことがまず前提です。
そして次のポイントが「率」、アポ率や成約率(成功率)になります。10件電話をかければ、10%の成功確率ならば10×10%で1件のアポイント獲得が期待できます。ここで考えておくべきことは、目指すべき成功確率がどのくらいかです。野球ならば10回打席に立って3本ヒットを打ったら一流と呼ばれます。3割、つまり30%です。見方を変えると7回、70%は失敗が許されます。それでも一流と呼ばれるのが野球の世界です。
成功率の定義は業界によって異なります。コールドリストと呼ばれる接点のない新規の相手、もしくは関係が未成熟な相手のリストをもとにテレアポする時は、アポの獲得率は最大で10%前後です。一般的な平均値では1~3%くらいでしょうか。100本電話をかけたら99回は断られたり、不在であったり、居留守を使われたりしながら1件アポが取れたらOK。そういった「率」を実現可能性として定義していることが重要です。10件アポイントが取りたい時に営業が「10本電話をかけます」と言っても「おいおい、アポ率100%なわけがないだろう。当社の商材、当社のブランド、知名度ならば10%で上出来」というように、成功率を正しく設定しておかないとメンバー、現場が疲弊してしまいます。
そしてもう一つ、「質」と書きましたが、これは受注単価、成約金額という捉え方をしてください。たとえばLTV=生涯顧客価値という形です。マーケティング関連、Web系・IT系の商品やサービス、スタートアップのプロダクトはそうですが、1人のお客様から契約期間中にいくらのお金がいただけるのか。また、1回の契約の中でいくらのお金をいただくことができるのか。これが、「質」の部分です。
営業における成果というのは、基本的に売上で評価されることが多いので、「量」「率」「質」この3つの観点に向き合っていく必要があります。
なぜ人材業界は量的問題解決に走るのか
営業の成果は「量」「率」「質」で決まると説明しましたが、体育会系営業は量的問題解決に走りがちです。量的な問題解決、すなわち気合いと根性と時間で何とかしようとしてしまっていませんか?
私は学生時代野球部でした。野球部でレギュラーになって活躍したいと思った私がとったアクションは何だったでしょう?誰よりも長く練習することでした。事実、それでレギュラーになり、結果的にキャプテンにもなりました。
結局、私の解決策は時間でした。気合い、根性、時間。これらは結局、全部同じことを言っている場合が多いのです。根性を何で見せるのかというと、長く働く、遅くまで頑張る。気合を何で見せるのかというと、誰よりも早く出社する。結局のところ、「時間を増やす」を主にしたマネジメントになっている。これが、ここでの大事なポイントです。せっかく時間をかけたのであれば、発揮するべきパフォーマンスに対して最適なトレーニングを積む、最適なアクションを取るべきです。そんなことは、誰しも分かっています。ただ、できていないという現実がそこにある。では、どうやっていけば良いのか。
ここで、人材業界の話をします。人材業界は前で説明したような量的問題解決になぜシフトしやすいのかを詳しく解説します。
人材業界の特徴①ニーズの発生頻度が多い
ポイントは3点、1つ目が「ニーズの発生頻度が多い」という点です。これは、本来は問題ではなくありがたいことですが、背景があります。たとえば、特に非正規雇用、派遣やアルバイト、パートといった方々と正社員の離職率、退職率はどちらが高いでしょうか?非正規で働かれている方の離職率が高いのです。
私は派遣会社の営業をやっていたことがあるのですが、派遣で働いている方が20人いると月に1人くらい辞めてしまうケースが多々ありました。理由は、会社組織に問題があるというより、非正規の方は家庭の事情や時間の都合等々があってフルタイムで働けなかったり、何かあった時に辞めなければいけない事情があるからです。ですから、組織、会社に迷惑をかけたくないので最初から非正規で働いている方が多いのです。
諸事情を抱えて働いている方が多いことから、ニーズは人の入れ替え、もしくは誰かが辞めてしまった時の補充の頻度、発生頻度が高いところに発生します。したがって、人材ビジネスは他業界と比較した際に、同じ金額の商品・サービスと比べてニーズが生まれる頻度が高い傾向にあります。
人材業界の特徴②入れ替え・交換・同時利用が多い
ポイントの2つ目は、入れ替え・交換・同時利用が多いことです。ニーズの発生頻度の高さと合わせて、担当の営業マンがよく変わるというのが業界の特徴です。ここ最近は、人材業界も離職率が落ち着いてきたという話を在籍した会社からも聞きましたが、やはり人の入れ替えが多いと営業の入れ替えも多いようです。
商品・サービスは1度使ったらずっと固定的に使うことが多いと思います。コピー機など、様々なメーカーのコピー機を使っている会社はあまりないでしょう。しかし人材業界のビジネスは、当時100人規模の派遣スタッフを活用していた会社は派遣会社を同時に20社使っていました。同じニーズ、困り事に対して同時に複数の会社を利用、活用しながら自社の人的課題を解決するアクションを取っている会社が多い傾向にありました。
人材業界の特徴③全業種・規模が抱える企業課題である
そして、最後に人材はあらゆる業種、あらゆる規模の会社が抱える課題であるという点です。経営資源は「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4つがあります。会社の規模によって抱えている課題は異なりますが、「ヒト」という課題は全ての会社に共通です。社長1人の会社が「そろそろ事務の子を入れてサポートしてもらわないと無理かな」というのはヒトの課題です。1万人の会社で、「組織の生産性が上がらないから人の入れ替えをしないといけないかな」というのも同じくヒトの課題です。
形は異なれど、いずれの会社もヒトという経営資源に何かしらの課題やニーズを抱えています。つまり、ニーズの発生頻度が高く、人の入れ替えや同時利用が多く、全ての会社が抱えている課題であれば、営業は動けば何かしらニーズにぶつかるわけです。お客先に行けば、困っている、お願いしたいと言ってもらえる可能性が高い。したがって、考えるよりも動いた方が早いという考えに傾きやすいのです。
私は様々な会社で営業研修をしていますが、研修後すぐに「一人で営業してきなさい」というのはやはり人材業界です。勉強するよりもとにかく営業に出た方が早く成果が出るというのを、過去の経験・体験の中で知っているのです。
逆にOA機器や IT等、専門知識がないと営業ができない業種もあります。規模が大きいクライアントを抱えている会社なら、粗相があったら今後チャンスが1年、2年、5年、10年ともらえないことも起こるので、これらの業種や会社は営業が1人で動くまでに半年から1年をかけます。
これは各社の人材育成戦略なので、どれが良い悪いというわけではありません。人材業界のビジネスモデル柄、特に採用ジャンルにおいては、とにかく早く多く動いておいた方が何かしらの成果が得られる可能性があるので、量的問題解決に走ってしまう。そういった背景があるということです。
大塚商会の驚異的な商談創出力
こういった、量を増やすことによって問題解決をしてきた会社は人材業界以外にも多数あります。弊社のクライアントにもあります。直近でいけば大塚商会です。皆さんもご存知かもしれませんが、「お客様のビジネスを深く理解して、オフィスに関するあらゆる“困った”を丸ごと解決するのが大塚商会です」と、ホームページに書かれていました。皆さんは、大塚商会の年間の商談件数をご存知ですか?
年間300万件以上の商談実績
データを引っ張ってみました。中・長期経営方針に書かれていたのですが、2022年の実績が336万商談、2021年が342万商談、2020年は320万商談を行ったとのことです。
桁が違います。半端ないです。年間300万件以上の商談をしているのです。成約率、受注率は2023年が10%、2022年は9.5%、2021年は9.2%です。9~10%の間を推移してますが、つまり、大塚商会は336万商談を行って33万6,000件の受注を獲得しているいうことです。
大塚商会がやろうとしていることは、商談数を増やして顧客の増加をはかり、1顧客あたりの売上高を増やしていくということです。しかし、大塚商会は社員にとにかく商談数を増やせ、アポ数を増やせ、もっと頑張れと言っているわけではありません。「マンパワー依存からの卒業」のために、これだけの活動量を挙げているというところです。
336万商談、342万商談、今年はすでに166万商談なので、既に300万商談を超える見込みは立っていると思われます。矛盾していると思われましたか?マンパワーによる問題解決から卒業しようと言っているのに、商談数を増やせというのはどうなんだと。いいえ、商談数を増やすこと自体は、会社の成長において非常に重要です。大塚商会ですが、特に営業では、人材に関してAIを使った商談対応も行っていくことが事業戦略に書かれていました。
商談のデータ分析
大塚商会がこれだけの商談数を確保するためにやっているのは「商談のデータ分析」です。直近の数年だけではなく過去の何万件もの商談データを活用してAIに展開させていく。営業がやるべきことに注力をさせていく。そうなると上司の仕事は、営業が行動するタイミングでしっかり動けるようにアシスタントしていく、サポートしていくことだと資料に書かれていました。
これだけの活動量を確保することによって、まずは売上の原資、受注の原資を作る。そして、その情報を活用した成約率は9~10%。10%の成約率=受注率ということは、90%は失注しています。しかし、90%の失注を活用する術や意識を持っていることが、マンパワー依存から卒業するための非常に重要なヒントだと思います。
マンパワー依存体質からの卒業
リスト至上主義
新規開拓営業で失敗しないための3つのポイントを説明します。リスト至上主義とは、良いリストにこだわるということです。大事なことは「とにかくリストを増やして営業していこう」ではなく、「成果・成約率が高いアクションが取れるリストを探していこう、作っていこう」です。
撤退ラインの設定
「やらない」という判断が作れる状態を作るのも必要なアクションです。そこで「撤退ラインの設定」をあげました。「とにかく動け」「動いて終わり」ではなく、動いた結果、これ以上やっても続かないと思った時には、意図、意識を持って撤退する、それ以上やらないという判断も下さなければなりません。
新規のアポ取りで、テレアポ、飛び込み、DM、SNS、様々な手法が出てきました。SNSもX(Twitter)、Facebook、LinkedIn等、様々なものが営業に使われます。そのような環境の下では、自分が今やるべきもの、使えるべきものの取捨選択が必要です。取らないアクションを決めるということです。
データドリブン
3つ目はデータドリブンです。「やったことを無駄にしない」ということは、今の成果だけではなく、得られたデータを活用し分析することに時間と意識を割いていくということです。大塚商会=営業会社というイメージを持っている方は多いと思いますが、大塚商会が年間300万件以上の商談を重ねているという事実は、それだけで会社の成長力、個々人の頑張りを活用する組織体制を持っていることを物語っています。
プレゼン不要な提案
独占案件を作り出す
なぜ、こんなお話をさせてもらったのか。理由は、営業において頑張らなくていい案件が存在するからです。たとえば、常に良い企画書、提案書を作らなければならないのかというと、全部が全部そうでなくて構いません。たとえば、もう受注が確定している案件がそうです。
私が人材営業していた時は、いかに独占案件をもらうかを強く意識していました。「他社に声をかける前に弊社にチャンスをください。1週間いただいて良い人を連れてくることができなかったら、他社にお声掛けください。1週間で連れてくる自信があるので、その間は私のことを待っていただけませんか」と、お願いします。「そんなことやっていいの?」と思われるかもしれませんが、意外に多くの会社が受け入れてくれました。
私が独占案件をいただける成功率は1/5、つまり20%でした。担当者の5人に1人は「分かった、ちょっと待ってみる」とOKをいただけました。その後ヒイヒイ言いながら、ワーワーやりながら、めちゃくちゃ頑張ります。他社がいない状態をいかに作るかというのは、差別化が非常に難しい人材ビジネスにおいて強力な戦法です。
やっていること自体は、人を連れてきて紹介して働いていただくだけです。研修ビジネス等も同じです。営業の方は、「こういう研修ができます」と様々な切り口から差別化してアプローチしていると思いますが、傍から見たら全部一緒に見えてしまう。プロでなければ違いが分からないのが、人材ビジネスの難しさだと思います。
したがって、いかに他社に声をかける前に自分だけに声をかけてもらい待っていただくか。このアクションが非常に大事なのですが、どうすれば独占で自分だけにお声掛けいただけるのかというと、答はシンプルです。「お願い」です。
多くの営業は綺麗に営業したいと思っていますが、「綺麗に営業する=頭を下げない営業」になってしまっていることが多いです。一言、「少しだけ待っていただけませんか」とお願いをする。相手にとって損がない、こちらがしっかりやることに信頼、確信を持っていていただけるのであれば、お客様は待ってくれることがあります。もちろん、NOと言われることもあります。ただ、言わなければ広がらない可能性もあるので、「独占で」とお願いするのです。「私の提案を待ってください」というお願いを、ぜひ実践してください。
失注をひっくり返そうとするのは愚策
もう一方で、失注確定案件があります。これは、相見積りを取らないと社内の稟議が通らないという場合、もう他社に発注するのは決定しているが見積りが必要だからと依頼されるケースです。見積りを求めているにも関わらず、商談してくれないケースがそれです。これは一定数あるので、ここに時間や気持ち、労力を割いてひっくり返しに行くぐらいであれば、きちんと同じ土俵で比較・検討してもらえる会社に時間を使った方が当然ながら良いです。
もう受注が決まっている案件であれば、カスタマーサクセスに時間を割いた方がいいと思います。決まっているものをひっくり返すのは非常に困難です。もう発注が来ないことが決定的であるにも関わらず何とかしようと躍起になるくらいなら、悩んでいる相手に時間と気持ちを割くべきでしょう。多くの案件は「そこ」が大事です。コンペ、比較、検討中の案件。ぜひこの案件の見極めをしてください。頑張るべきところはどこなのか、正しく認識することが必要です。
プレゼンテーションとの向き合い方
プレゼンテーションの本質
プレゼンテーションの本質は、相手への決断材料の提示です。商品・サービスの説明ではありません。相手の決断材料を提示し、その材料に対して納得感を高めてもらうことです。ですから、その提案で何の課題が解決できるのか、何と比較した時に我々が良いのか、逆にどこが悪いのか。そして、この条件で我々がお手伝いしますということを、しっかりと伝えきることが重要です。悩んでいる人の、背中を押すのが営業の役割だというイメージです。
営業が正しく頑張るべきところ
営業が正しく頑張るところは、正しく聞くこと。ニーズの合意を得ること。我々にできることの先にある、相手の得たいことを適正に伝えること。そして、どういう風に実現していくのか、条件対比を提示して合意をいただくこと。これらの納得感を高めていくためのコミュニケーションこそが、営業が実行するべきこと、頑張るべきことです。
とにかく、営業は商談に集中しましょう。お客様先に足繁く通えばいいのではありません。実行するべきヒアリング、ニーズ合意、ベネフィットの提示、アプローチ、そして条件提示。これらをしっかりと伝えて、理解と納得を得ることが重要です。ここを頑張らなければ、営業は「頑張っている」と言えません。頑張っているつもりにも関わらず成果が出ない営業は、実行するべきことに対して時間を割けていないケースが多いと言えます。
トレードオフの自覚
そしてもう一方、実行するべきことを十分に実行しているけれどもなかなか決まらないケースがあります。決まらないから長引く。リードタイムが長ければ、営業はそこに時間を割かなければなりません。営業パーソンが意外とやっていない、意識していない考え方の一つが「トレードオフ」です。トレードオフとは、一度に2つを得ることはできない、一石二鳥はできない、あちら立てればこちら立たずということです。
私はよく、レバレッジを利かせましょう、一石何鳥を目指しましょうという話をします。しかし、レバレッジを効かすことが難しいアクションもあります。それは、お客様との1 to 1のコミュニケーションです。もちろん、1 to 1のコミュニケーションの内容を事後にコンテンツ化したりホワイトペーパーに活用する一石二鳥はできるのですが、コミュニケーションしている時間に同時にやれることはありません。たとえば、今ここで私がA社にテレアポをしているなら、同時にB社に連絡を取ることはできないのです。その時間に、他社がB社に対して営業をかけて商談しているかもしれません。
時間はトレードオフで、何かをしていたら何かを得られないということを自覚していますか?認識してますか?「明日やろうは馬鹿野郎」などとドラマで言っていました。明日に先延ばしにした結果、他社が動いているというケースは実際によくあります。私もそうでした。「この会社は優先度からすると少し後回しでもいいな。来週連絡すればいいや」と思って翌週連絡したら、「ごめん、飛び込みで来た営業さんにお願いしちゃった。また今度お願いするね」と言われたことがあります。
自らチャンス、きっかけを逃してしまった。これはシンプルに、内容ではなくタイミングを逃した例でした。私たちはトレードオフを強く意識するべきです。何かをしている間は、他の人に時間を割くことができません。今このアクションをしていたら、営業ができない、商談に行けない。時間がなくなっていく。こういったことを自覚していますか。
1日24時間は、全ての人に共通して与えられた時間です。この限られた時間の中で、働いてる時間は8時間。残業が長くて10時間、11時間、12時間と働いている方もいるとはいえ、基本的には8時間の中でいかに成果を出すかが会社員であり、サラリーマンであり、営業パーソンです。そう考えた時、今自分はどこに時間を割くべきかをきちんと取捨選択できているか、優先順位をつけられているか。
少々脱線しましたが、今この話をさせていただいたのは、リードタイム、すなわちお客様の検討時間が長くなればなるほど、他のお客様に時間と気持ちを割くことができなくなる、そのことを意識してほしいからです。
決まらないプレゼンとは
では、なぜお客様は決められないのか。決まらないプレゼンテーションには理由があります。決め手がない、理解が足りない、信頼が足りない、ニーズが不十分、喚起しきれていない、選択肢がなくて本当にこれでいいのか不安、情報を持っていない、緊急性が足りない、予算が足りない。お客様が決めてくれない理由は様々です。しかし、ということは、不足があれば埋めればいい、それだけです。ぜひ埋めてあげましょう。埋めるための情報提供のためにコミュニケーションを取ってください。
ただ、お客様が「決めるために足りないこと」を正確に理解してくれていればいいのですが、現実的にはそうでないこともあります。たとえば、「ごめん、忙しくて」といったお断りをされることも多々あるのではないかと思います。
ここで「忙しい」の本質を履き違えないでください。ほとんどの「忙しい」は「時間がない」ではなく「優先順位が低い」です。たとえば、今日見たいテレビ番組が夜の10時からあるとしたら、何をおいても家に帰ってテレビを見るでしょう。どうしてもやりたいことがあれば、人は時間を作るはずです。「時間がない」というのは、時間を作るほど優先順位が高くない、やりたいという気持ちになっていないということです。このことを、ぜひ認識してください。
相手は人間です。このことを強く認識したうえで、足りない部分を補うコミュニケーションを実践してください。これは、一つは「納得する」ということです。頭で理解する、すなわちロジック、理屈の部分です。一方で、気持ちの部分に注目するならば、優先順位を上げるためのコミュニケーションを取れているかどうかです。
何より重要な「誰に営業するか」
営業が正しく成果を出すために、我々が営業代行という形で営業の実験をする中で分かった「一番、成果貢献が高い改善アクションとは何なのか」は、「誰に営業するか」です。どう営業するか、誰が営業するかよりも、誰に営業するかが最も重要なのです。
そして、営業するべき相手の「不を解消する」ためのコミュニケーションをしっかり実践してください。「不信」「不要」「不急」「不適」、この「4つの不」を解消することが重要です。言い換えれば、こちらから提案している内容は、相手にとってお金を払ってでも解決、解消したい内容になっているかどうか。このことをぜひ意識してください。
そして、それを踏まえて誰に営業するかです。顧客ターゲットの設定をしっかり絞り込んでください。特定の条件をしっかり満たす相手に営業しましょう。
昔の営業は、100社のリストがあったとしたら、とにかく全てにコンタクトを取る。そんなアクションを取っていました。ただ、これだけ商品・サービスが乱立していて、多様な人の多様な価値観がある中で、人が困っていること、悩んでいること、やりたいことは大きく広がっています。個人のダイバーシティは組織のダイバーシティにつながり、そして組織のダイバーシティが起こるのならば、商品・サービス、プロダクトがどんどん多様化していくのも当然です。
商品・サービス、プロダクトが多様化していけば、そこにあるニッチなニーズに応える商品・サービスが生まれて当然です。したがって、マーケットは大きくなくとも、特定の人たちのためだけに問題解決するプロダクトも増えています。改めて、自分たちが強みを発揮できるお客様やターゲットを決めて、絞り込んでいきましょう。
タッチポイントマネジメントという視点
営業先と接触頻度
現代の営業において、タッチポイントのマネジメントは非常に重要です。タッチポイントとは、顧客との接点です。リードにとにかくメルマガを送ろう、とにかくホワイトペーパーを送ろう、ウェビナーを開催してとりあえず来てもらおう。このようなアクションをするよりも、しかるべき人にしかるべきアクションをするということです。
売れ続ける営業は、100人に対して10回アプローチをします。絞った相手に複数回の接点を作ります。逆に、新規偏重型の営業は接触する人数は多いものの、1人に対しての接触回数が少ない。1000人に各1回、合計1,000回営業するようなことをやってしまいます。逆に絞り込みすぎてしまう営業もいます。たとえば、1,000回のアプローチをするとして、10人に対して100回アプローチをする。いずれにしても1,000回のアプローチです。ただ、10人しか見込みがいない状態だと、10人のお客様から受注がなかったらもう持ち玉がない。
成果を出し続ける営業が実践していることは、顧客と見込み客の両方を増やし続けることです。今日の受注は今日の頑張りではありません。これまで自分が頑張って顧客や見込み客との関係づくりをしてきた、その成果です。
見込み客、顧客、優良顧客を同時に増やす
営業がインサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサービスに分かれているのは、マーケティング活動を通じてリスト、すなわち営業先、営業できる相手を確保し、インサイドセールスで見込み客を増やし、フィールドセールスで顧客を増やし、カスタマーサクセスでプラチナ会員のようなサービスを提供して優良顧客を増やしていく手法です 。営業における役割分担がしっかり機能している組織は、営業先、見込み顧客、顧客、優良顧客というように顧客をアップデートして、引き上げて、増やしていくことに成功しています。
一人で営業している方は、優良顧客を増やすアクションだけになっていませんか?見込み客がいなくなって、今月受注をいただくと来月見込みがなくなってキツイ、といった状態が起こるのはまさにその典型例です。見込み客、顧客、優良顧客、これらを全部増やしていく戦略が必要です。これは1人であろうが組織であろうが同じです。
接触数を1to1依存から脱却
1人のお客様の接点を増やすためには、1 to 1依存からの脱却が必須です。1 to 1のアクションとは、電話、商談です。オフラインの商談も同じです。メールマーケティングは、個別にメールを送らなくても同じテンプレートの文章をメルマガで一斉送信できます。もし一部分だけ変えていくことができればベターです。相手にとって大事なことは、個別の文章を作ることではなく、自分のために送ってくれたと思えるメールが届くことです。
これは全てのコミュニケーションに共通です。X(Twitter)で投稿すると、誰か個人に対して発信したのではない内容であったとしても「私のことだ」と思ってくれたら、それは個別コンテンツです。個別のコンテンツか否かを決めるのは、自分ではなく相手です。メール、SNS、ウェビナー、そしてセミナーなど、一度に複数人の接点を作ることができるツールが今この便利な時代にはあります。ぜひこれらを活用して、顧客の接点を増やしていきましょう。
人間は忘れる生き物
なぜ接点を増やす必要があるのか?人間は忘れるからです。これは忘却曲線ですが、人間はどんどん忘れていくので、忘れられないようにするためにも定期的な接触が不可欠です。
接触回数を最大化していくには、ツールの使い分けが効果的です。昔のように、とにかく対面、とにかく電話というコミュニケーションをしていると、当然ながらどんどん忙しくなり、そのうちに限界が来ます。この点にはご注意ください。
営業戦略と取るべきアクション
戦略次第で営業アクションは変わる
戦略次第で営業アクションは変わります。新規受注主義を取るならば、テレアポに時間や労力を傾注するのは戦術上仕方がありません。ただし今月の受注を今日作る、あるいは今月の受注を今月中に今回のリストから作るといった形になれば、取れるところを常に取り切っている状態なので、辛くなります。見込みがない状態から月初をスタートして、頑張って営業して回収していく。そんな形になれば営業がどんどん辛くなっていきます。それならば、リピート数を増やす、単価を上げる、購買数を増やす等々、やれることはあります。
提案切り口を増やし、提案回数を増やす
接点を持つためにお客様に話す理由がなくなっていく、これにどう対処すればいいのか。そのときは、提案の切り口を増やせば良いのです。たとえば、「状況をヒアリングする」でも構いません。「最近、ご状況がどうか伺いたくてお電話しました。お打ち合わせの機会をいただけませんか」というのも切り口の一つです。「新商材、新サービス、プロダクトをリリースしましたので」という新しい別軸の提案も一つです。ただ、新しい商品やサービスのリリース情報が常にあるわけではないので、同じ商品でも切り口を少し変えてみてください。「ここに特化した商品に切り替えたので」「ここに特化した形で、商品をちょっと変えました」「キャッチコピーが変わりまして」「こういったところアップデートありましたので」と、訴求するポイントを変えるのです。
プロダクトにおいては、営業系の管理ツールや営業ツールで、「今までリストアップツールを提案していましたが、顧客管理ツールのような形に変えました」といった提案・連絡も来ます。
そのほかは事例紹介などがあります。事例紹介はおすすめです。なぜなら、常に事例は増えているからです。ですから、売れる営業ほど事例の感度が高い傾向があります。事例はお客様が求めている情報であり、伝えたら喜んでくれる確率が高いからです。ぜひこのような形で切り口を増やし、接触・提案回数を増やしてください。
提案の重要性と「言い続けること」
接触回数を増やすのは大事ですが、接触するだけではダメです。提案する回数も増やしてください。理由は、会社のイメージが固定化するからです。私は派遣会社に勤めていましたが、実際には派遣以外に様々なプロダクトを提供していました。評価ツールがある、直接雇用の紹介もする、求人媒体もある、様々なことをしているのですが、前任から引き継いだ時に「弊社は派遣会社です」と伝えてしまっているので、派遣以外の相談が来ないのです。ある時、担当者と話をすると「先月人材紹介でスタッフが入社した」と言うではなですか。「どうしてうちに相談してくれないんですか」「えっ、おたく派遣会社でしょ?」「人材だったら何でも言ってくださいよ」といったやりとりがありました。こちらから言わないと、相手はイメージをアップデートしてくれません。
だからと言って、「いろんなことができますから何でも相談してください」では、相手の課題やニーズにフィットしません。「何でも」では相談しようがないのです。ですから、これができます、これができます、これができますと言いましょう。同じことを何回も何回も何回も言い続けることが大事です。
問い合わせ発生のメカニズム
問い合わせはニーズだけでは発生しないというのも重要なポイントです。理由は、問い合わせの発生プロセスにあります。困っているだけでは、問い合わせは発生しません。
問い合わせというのは、まずニーズ、解決したい問題があります。そして、解決策、問題があって、この人だったらきっと解決策を持っているだろうと期待されて問い合わせが来ます。ただ、忙しいと来ないこともあります。「時間がなかったから、直近で来てくれた会社にお願いしちゃったよ」といったことが起こります。
時間がないと相手は連絡をくれません。ですから、定期接触を重ねて、覚えておいてもらうのです。メールが来たタイミングで、とりあえず返信しようという形で、相手が行動するきっかけを提供することも大事です。
ツールを使ってフィードバックを得る
さあ、提案数を増やしていこう、接触回数を増やしていこう。と思っても、何もないところから提案回数を増やすことは難しいと思います。そこで利用するべきものはツールです。何もかも訪問で話し、打ち合わせをする。そこにこだわりすぎる必要はありません。提案をする目的は、買ってもらう前にお客様からその内容に対してフィードバックをもらうことです。ここにぜひ意識を向けてください。
まとめ~営業を営業企画が作る時代~
接触回数、提案回数、そして誰に営業すべきなのか。ここをしっかり定めていくことが、頑張りを無駄にしないためのポイントです。今営業において大事なことは、誰が営業するか、どう営業するかというよりも、誰に営業するか。つまり、営業をどう企画するかという時代になったと痛感しています。
営業企画というポジション・役割がここ最近出てきました。営業を企画する、リストをもとに誰に営業するのか、どの商品・サービス、プロダクトでアプローチをするのか、どのツールでコミュニケーションをとるのか。これらを決めることは難しいです。リスト?とりあえずもらっているリストで。アプローチ?とりあえず当社は訪問主義だから訪問で。ツール?電話でしょ。こんな感じで、大事なことを何となく決めていませんか?
様々な手段があります。営業の方法やターゲットを分析し、研究する。そういった専門家が必要な時代になったと思います。一人で、もしくは少人数で営業している方は、営業を企画するという捉え方や意識を持つことが重要です。ある程度、組織規模が大きいのであれば、営業企画という専門のポジション・役割を設置することも検討するべきでしょう。
最後に重要なキーワードを出します。営業を企画する。営業企画。皆さんの会社にそういった発想を持って営業を管理し、次のアクション考え、戦略を立てている方はいますか?この問いかけをもって、今回の記事を締めくくりたいと思います。
▼代表笹田が人材業界に就職した新人時代を振り返って思うこと
【9ルールズ】新人営業時代に知っておきたかったこと
▼若手が辞める原因は新人にあるのか、企業にあるのか
新入社員がすぐ辞めるのはなぜ?原因と人材を育成するコツ
【営業ノウハウ集】たった1週間で 常に3ヶ月先の売上を確保する営業方法
営業マンとして成長する最も効果的な方法は 「できる営業マンの真似をする」ことです。
しかし、自分の周りを見たときに 素晴らしい営業マンがいなかったり他社の営業マンの良いところを 学んだりできないので営業マンとしての成長が遅れてしまうのです。
あなたが営業としてもっと成果を出したければ
自分だけでやろうとすれば 成果を出すのに、時間が掛かります。
だからこそ、先人の営業を真似ることで 2倍も3倍も成果を早く出すことができます。
成長することもできるのです。
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