【期待値調整のヒント】社長依存の組織から脱却するために

今回のテーマは、「期待値の調整」です。今読んでいる本の一節に「社員は社長の30%」ということが書かれていて、なるほどなかなか厳しいことを言うなと思ったのですが、この言葉について、正しいか正しくないかよりも社員に対する期待値という観点から考えてみようと思います。

ある本で見つけた「社員は社長の30%」というフレーズ

私も社長です。営業ハックという会社の代表を務めていて、いろいろなメンバーにいろいろな業務をお願いしながら業務を進めています。今まさに進めていることが、私が少しずつ、いや結構大胆に現場から離れていこうという取り組みなのですが、その最中に本を読んでいてたまたま「社員は社長の30%」という言葉に出会ったのです。

「社長がやっていた業務を社員に任せると必ずクレームが出る」とか、「求めていたことよりも全然納品物としてアウトプットの質が低い」とか、なかなか厳しいことが書いてあります。その点、うちのメンバーは有難いことに優秀なので、30%どころか私以上に取り組んでくれているという実感を持っています。けれども、だからといってこの状況に依存してしまうと組織が伸びないし、組織としてではなく個人に依存する形にもなってしまう。そこで、改めて期待値というものをきちんと調整する意識を持っておかないと、コミュニケーションに不具合が生じるのではないかと考えました。

期待「する側」がなすべきこと

期待の「期」は期間の「期」です。つまり、一定期間「待つ」のが期待です。「待つ」ということは、将来、未来の話になります。ポジティブかどうかに関係なく、期待とはそもそも「一定期間待つ時間を作る」という意味だと考えれば、未来に対しての予測値、精度がずれてしまうことが「期待値から外れる」だと考えられます。

人は、「期待してたのに」とか「期待したほどでもなかった」といった不満を持つことがあります。スタートした段階、一定期間待とうと心に決めた時点で、「待つ」という覚悟と合わせて「この人だったらこんなことをしてくれる」「一定期間待ったらいいものが出てくるはずだ」と思ったら出てこなかった。だから期待外れだったという気持ちになるわけです。

一定期間の関わり方の中で「待つ時間」の過ごし方の認識合わせをしていたかどうか。放置していいこともありますが、部下やメンバーとの関わりの中で放置して良くなることなどほとんどありません。したがって、「期待する」と言ったときに一定期間、いつからいつまで待つことを約束するのか、その間の関わりの中で何をするのかをきちんと考えておかないと、求めていた成果や成長に繋がらないまま終わってしまう可能性があります。

「期待してるよ」と言ったとき、相手が自然と成果・結果を出してくれると思いがちです。特に社員育成、メンバー育成においては、この「待つ」期間の中でどのような関わりをするのか考えておく必要があります。何もしなくて上手くいかなかいことがあれば、逆に手を入れすぎて上手くいかないケースもあります。

植物は、水や肥料をあげすぎると枯れてしまいます。ですから適量がどれくらいなのか知らなければなりません。同様に、適切なコミュニケーションはどのようなものか意識しておかないと、「手をかけたのに枯れて」しまいかねません。「適量を意識する」は、「期待」という言葉と合わせて意識しておくべき最初のポイントです。

期待した世界は実現可能だったのか

待った先にどんな成果を求めるのか、これが世界です。では、相手は本当にそれを実現できる能力を持っているのかどうか、そこは前提として把握しておかなければなりません。たとえば、小学校6年生のテストを1年生にやらせても解けなくて当り前です。なぜなら6年生のテスト問題は1年生から5年生までの積み重ねの上にできています。5年間勉強することによって6年生のテストが解けるようになる。つまり、5年間「待つ」時間が必要だということです。

前提として今の状態・状況を正しく理解しておかないと、期待していたものが出てきません。それはスタート段階から分かっているはずです。理想の未来と現実との差分を埋めていくために今何をするべきなのか、どんな関わりをするべきなのか。このような視点から考えないと最初から期待値外れ、あるいは過度なプレッシャーをかけて結局全てが上手くいかないことも起こり得る。これが、意識するべき2つ目のポイントです。

社長という存在の「特異性」

では、「社員は社長の30%」が本当なのか否かを考えてみましょう。最初にお話しした通り、弊社のメンバーは優秀なので、個人的にはそんなことは全くないと思っています。一方で、この捉え方にも一理あると思うポイントがあるんですが、私を含めて、基本的に社長は社会不適合者なんです。

今の日本の働き方は、会社に雇用されて仕事をするという形がほとんどです。良い大学に行って、良い会社に入って、マイホームを買って、子供が2人生まれて、といった世界観が日本の当り前として組み込まれ、そういった教育を受けてきたのが私たちです。そのレールの上を走ったら皆に幸せな未来が待っているという世界から、多様性、ダイバーシティがうたわれるようになり、働き方も時間の使い方も多様化してきた。人が満足するポイントや理由も多様化してきました。そう考えると、やはり生き辛さもあるでしょう。

それでも今なお働き方の基本は「会社に雇用されて働く」だと見たときに、社長は雇用されていないわけです。世の中の働いている人の割合の中で圧倒的に少ないのは、当然ながら社長です。組織のピラミッドの中に社長は基本的に一人しかいません。

会社を興すなどという、やらなくてもいいことを勝手にやっているくらいですから、社長にはネジが1本や2本外れている人も多いわけです。そんな社長が、自分がやりたいことをやれるように、もしくは自分のミッション、ビジョンの実現のために、会社という手段を講じて仕事をしているのです。たとえば営業ハックという会社は、私にとって一番居心地が良いようになっているわけです。ここをプラットフォームとして、戦うフィールドとして、一番戦いやすいのは誰あろう社長なんです。

スポーツで一番強いのは誰かと言えば、ルールを作った人です。会社のルールを作ったのは社長なので、後から入ってきた人たちはそのルールに準じて働き方や動き方を変えなければなりません。ルールを変えることが出来る社長とルールを守ることがベースになる社員を比較して、どちらが100%のパフォーマンスを発揮しやすいかと言えば断然社長でしょう。社員が社長の30%になるというのは当り前といえば当り前なんです。

社長依存から脱却する組織づくり

社長がメンバーや社員に仕事をお願いして、今まで自分が求めていたこと、ルールにしていたものを社員にやってもらおうと思ったら、当然社員には至らないこともあります。零細企業では社長の知人・友人と取り引きしているケースが多々ありますが、顧客が「社長だから」「あなただから」とお願いしていた仕事をその会社の社員が引き継げば、「今までよりサービスの質が全然良くない」とか「全然上手くいっていない」などと言われるのは必然です。これまで当り前であった「いつも社長と話せる」がなくなれば、期待していた成果が出て来る可能性は下がるでしょう。

だからこそ、次に一歩踏み込んでいかなければいけないのは、社長依存の状態から組織、仕組みとしてルールや制度を整備してメンバーがパフォーマンスしやすい環境を作ることです。そうなると、ルールを守れる人、ルールにきちんと適応出来る人を採用することが前提になります。

今回、期待値をテーマにお話ししましたが、期待値を考えるにあたっては、前提がどこにあるのかを考えることが重要です。会社という箱は基本的に小さいほど社長が仕事をしやすいように仕組みやルール、制度が作られているのですから、新しく入った人はパフォーマンスが出し辛くても不思議はありません。それを前提に、ではどんな支援をすればいいのかと考えていく必要があります。

今、弊社もルールや制度を変えている途中なので、こういった点も頭に入れて、より良い会社に、よりメンバーが活躍できる会社にしていきたいと考えています。

今回は、社長依存の組織から脱却するための「期待値の調整のヒント」でした。

 

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