今回は初回商談の具体的な内容についてのお話です。
ここまで、初回商談に向けての流れを解説してきました。準備の仕方や、何を意識すべきかといったことについては以下の記事を参照していただければと思います。
▼初回商談前の準備の仕方のコツ
▼商談をする前におさえておきたいストーリー設計
初回商談は営業にとってかなり重要度の高いものです。「人は第一印象で決まる」なんて言葉もありますが、初回商談はいわゆる第一印象の部分になります。実際、多くの営業が何をすべきか分からないでいるのも事実です。
今回はその初回商談のうち、「ラポール・ヒアリング」について解説していきます。現代の営業においては、このラポールとヒアリングで商談の8~9割を占めると言っても過言ではありません。是非最後までお付き合いください!
目次
- 1 初回商談の基本ステップ
- 2 初回商談が上手くいかない9つの理由
- 3 意識すべき7つのポイント
- 4 ラポールはどう進めていくべきか
- 5 いいヒアリングを実現させるには
- 6 ヒアリングのフレームワーク
- 7 ヒアリングは質問ではなく一緒に考えるもの
初回商談の基本ステップ
初回商談は繰り返しですが「第一印象」の場になります。私はこの第一印象と、「第0印象」と2つ合わせて重要性を研修でお伝えしています。第0印象とは会う前のコミュニケーションのことです。商談前に、皆さんはどのようなコミュニケーションをとっているでしょうか。情報提供や広告なども手法の1つでしょう。ただここで忘れてはいけないのは、相手は営業に対し、「会社や組織のイメージを持っている」という点です。自分がどんなに素晴らしい人間であったとしても、相手はそのイメージを最初は持ってくれていないのです。相手が会社に対してネガティブイメージを持っているならば、まずはそのイメージを払しょくするコミュニケーションが重要だと言えます。
一方で、知名度がある大企業など、ある程度良いイメージが相手に既に浸透している場合はアドバンテージになるでしょう。このような形で接点があると、少ない情報であったとしても相手は好印象を持ってくれます。これが第0印象です。
営業とお客様感の第0印象は何で決まるのか。これは事前のコミュニケーションの頻度が大きく関わってきます。このタイミングである程度相手は、「この人期待できそうだな」「この人何だかレスが遅いな」といった印象を相手は持つことが多いです。この第0印象を確定させていくのが第一印象です。この確定した結果がポジティブなイメージかそうでないかによって、次があるかどうかが決まっていきます。
初回商談の全体の流れを意識しよう
初回商談の全体の流れを意識することがまずは重要です。商談は大きく4つのステップに分けられます。
- ラポール
- ヒアリング
- プレゼン
- クロージング
初回商談の流れ①ラポール
ラポールは「関係構築活動」と言い換えることが可能です。初回商談で相手は何かしらの印象を持っているということを先述しました。しかしながら、深くまで理解しているかという点においては疑問符がつきます。インターネットで既にお客様が比較検討しているケースがあるのも事実ですが、社内実情や商材にまで完璧に理解している人はいないでしょう。完璧に理解していれば、そもそも営業に会う必要がないからです。
こういったことを踏まえて、まず自分が何者であるかを相手に理解してもらうことがラポールにおいて大事なポイントになります。相手が「もう少し仲良くしてもいいかも」と思わなければ関係構築はそもそも不可能です。話をするスタートラインに立つためには、まず自分のことを相手に知ってもらうことが必須である点をおさえておきましょう。
初回商談の流れ②ヒアリング
ヒアリングでは、次の3つを意識すると効果的です。
- 理想
- 現実
- 差分
ヒアリングでは、質問を通して、お客様自身が課題に気付き、学びを得るのが目的の1つとなります。営業とお客様が同じ認識をしている状態が作られて初めてヒアリングは成功です。ここがないと、提案や提示する解決策がズレたものになってしまいます。この状態では次のアクションに繋がりません。
初回商談の流れ③プレゼン
上記の流れを踏まえて、自分に何が出来るのか提示するのがプレゼンになります。このプレゼンでポジティブなイメージを持ってもらうことで初めて、最後のステップが効果的になります。
初回商談の流れ④クロージング
単価が安かったりして、即断即決が出来る商材については初回商談で契約書にサインをしていただく。これも1つのクロージングです。一方で、検討を重ねる必要のある商材だと、2回目のアポイントをいただくことが必要になってきます。
クロージングというのは、契約書の回収活動ではなく、「次のアクションをどうするか確定させる」ものです。次の行動を決める点では、商談も会議も同じであるということが出来ます。
時には、プレゼンでの相手の反応が悪ければヒアリングに戻るのも手です。相手の反応に合わせて、時にはプロセスを後ろに戻す勇気も持つようにしましょう。
初回商談が上手くいかない9つの理由
上記のステップを理解していたとしても、初回商談が上手く行かないことはあります。その理由は大きく分けて9つです。
初回商談が上手くいかない理由①準備不足
初回商談が上手く行かない場合、大半はこの理由であることが多いです。「しっかり準備しているのに」そう思う方もいらっしゃるかもしれません。ただ、準備には1つ大切な要素があります。
「仮説を立てる」ことです。
事実を事実とただ捉えたところでそこから発展はしません。この情報から、何を考えるのかということが重要になります。情報を知っているだけではなく、得た情報を駆使して何を提案していくのか考えることの積み重ねが信頼につながります。
よくセミナーや研修で、「提案数」を意識することをお伝えさせていただきます。なぜ提案数が重要なのか。それは、「これが出来ます」という提案をしなければ、「YES」「NO」をもらうことが出来ないからです。
この提案をするためには、
- 自分がどう役に立てるか予測を立て
- コミュニケーションを図り
- フィードバックをもらう
こうして一緒により良い提案を作っていく意識が必要になります。「初回だからまずは丁寧なヒアリングをしたい」だけに終始してしまうのは避けるべきです。なぜなら、相手は「ヒアリングをして私のことを丁寧に知って欲しい」なんて考えていないからです。ヒアリングなしでドンピシャの提案がもらえるのなら、それに越したことはありません。多少極論ではありますが、「この人に会ったらすぐに成果がでました」となった方が、相手は感謝したり信頼を持つようになるわけです。
だからこそ、「仮説を立てること」を必ず行うようにしましょう。調べたうえで、予測をたてることが仮説になります。仮説無くして商談をすると、ラポールやヒアリングにも影響が出て、次の行動に繋がらなくなってしまうということをおさえておきましょう。
初回商談が上手く行かない理由②相手に合わせたコミュニケーションでない
「この営業っていつも同じ話をしているんだろうな」
こう感じさせてしまうのはNGです。お客様のことを大事にしていないというふうに受け取られてしまうからです。
機械的なコミュニケーションは相手を遠ざけます。意識しましょう。
初回商談がうまく行かない理由③自分が何者か理解されていない
自分が何屋であるか。ここを理解してもらえていないと、次のステップに進みづらくなってしまいます。肉の相談は肉屋に、野菜の相談は八百屋にしますよね。当然のことですが、「自分は何の専門家なのか」ここをはっきり伝えておく必要があります。これがないと、お客様が相談出来なくなってしまうのです。自分が何を相談すれば良いのか分からない。この状態であると、どう足掻いても商談は上手く行きません。
「困ったら何でも言ってください」この言葉ほど困る言葉って実はないわけです。「何食べたい?」「何でもいいよ」これって困る人多いのではないでしょうか。それと一緒です。何でもいいというのは、相手に丸投げしている言葉になってしまいます。
自分は何者で、どんな相談をしてほしいのか。ここをしっかり伝えるようにしましょう。
初回商談が上手く行かない理由④相手の話を聞いていない
とにかく受注をもらいたいがために、プレゼン大会・アピール合戦になってしまうことは避けるべきです。商談は相手との貴重な会話の機会です。それをプレゼンにしてしまっては、その機会を自ら放棄していると言わざるを得ません。
初回商談が上手く行かない理由⑤目的・認識合わせが出来ていない
「この商談ってなんでやっているんでしたっけ…?」
これをお客様に感じさせてはアウトです。今日は何のためにここに伺っているのか、どんな話がしたいのか。ここの認識をはっきり合わせてから商談をスタートするようにしましょう。
初回商談が上手く行かない理由⑥反応が悪い・興味がない
これは相手ではなく、営業側の話です。相手の話を適当に、機械的な反応しか示さなかったりすると、相手は「この人来てるのにやる気ないんだな…」となってしまい、心が離れてしまいます。
相手に興味を持ってほしいなら、まず自分が興味を示すべきです。
初回商談が上手く行かない理由⑦商談を楽しんでいない
返報性の原理という人間の心理があります。これは、自分が示した反応と相手は同じ反応を示しやすくなるものです。
つまり、相手に商談を楽しんでもらうためには、自分が商談を楽しんでもらうことが必要だと言えます。
初回商談が上手く行かない理由⑧次のステップが曖昧
「話は盛り上がったけど、次に繋がらない」
これはこの理由が原因であることが多いです。具体的に
- いつまでに
- 誰が
- 何をする
これを約束しておかないと、なあなあになって終わってしまいます。
初回商談が上手く行かない理由⑨商談後のコミュニケーションが疎か
商談後の話にはなりますが、この部分が疎かだとせっかくの商談が意味を成しません。
- 議事録を送る
- 御礼を伝える
- 次何をするかを明確にしておく
商談が盛り上がったからといって、相手から自動発注が来るシステムは存在しないのです。商談が上手く行った後、こちらからしっかりと連絡をとることが重要になります。
人間は忘れる生き物です。商談の内容も、時間がたつほど忘れていきます。そのため、商談後すぐにお礼メールや議事録を送ることで、相手に良い印象を与えることが可能です。相手に覚えておいて欲しいポイントを明確にして、しっかり伝えるようにしましょう。
意識すべき7つのポイント
ここまでまとめた、初回商談が上手く行かない理由を踏まえて、何を意識すれば良いのか。ポイントは7つです。
①会うべき相手かどうか見極める
まず商談の前にそもそも会うべき相手かどうかを見極めるのは必須です。1人の人間として限られた時間で成果を出していく必要があるからです。
会うべき相手かどうか見極めるポイントはこの2つ。
- 自分が役に立てる相手かどうか
- 相手からお金をもらうことが出来るかどうか
営業はボランティアではなく、仕事です。利益をあげていくことをミッションと定義した時に、「役に立って、その分のお金をもらう」この一連の流れが出来なければいけません。
この2つが実現できるかどうかのタイミングは会社の指針によっても変わってきます。今すぐ受注が必要なのであれば、お金をもらうタイミングが早くなければいけません。一方で高額な商材の場合、半年や1年以上かかることもあるでしょう。
ただどちらにおいても重要なポイントは上記の2つです。おさえておきましょう。
②良好な関係づくり
相手から今度は「会いたい」と思ってもらえるようにコミュニケーションを図っていく必要があります。これには商談のコミュニケーションだけでなく、商談前の準備やコミュニケーションが大きく関わってくる部分です。相手と定期的にコミュニケーションをとることが何よりもここでは重要になります。
③会うべき理由作り
「コロナ明けたら飲みに行きましょう」「今度飲みに行きましょう」
この会話ってほとんど成立しないですよね。なぜなら、明確な理由がないからです。「会えたらいいね」「出来たらいいね」と、なんとなくの言葉になってしまっているからです。
「出来たらいいね」これは基本的に物事を停滞させる言葉になります。そうならないように、会うべき理由を明確にしておくようにしましょう。
④忘れられないようにする
上述した良好な関係づくりの点と重なる部分もあります。定期的にコミュニケーションをとること。商談後のコミュニケーションをおろそかにしないこと。人はどうしても忘れてしまう生き物なので、忘れられないように、こまめに相手の意識内にいるようにしておくことが必要です。
⑤味方だと思われるコミュニケーション
「お金をとりに来た人」「押し売りに来た人」
こういった印象を与えてしまうと、敵対されます。この状態で、お客様が本音で話してくれないとは必然であると言えるでしょう。お金をむさぼり取るのではなく、あくまで「私はあなたの困っていることを解決するお手伝いをしたくて来た味方である」というスタンスを持つことが重要です。
⑥その他大勢に成り下がらない
現代はインターネットで気軽に情報を入手できる時代です。このご時世である以上、他の営業とは違うと相手に思ってもらわなければ相手の記憶には残りません。かといって、何か一芸を極めるのは大変難しいですし、極める必要もないです。
今目の前の人に「特別感」を与えることが出来ているかどうか、常に意識しておくことがここでは重要になります。例えば、相手が興味を持っている情報を欠かさずに伝える。「時間が無くて調べられてないんだよね」といったことを代わりに調べて、次回お伝えする。ヒアリングがとても丁寧。こういったことも他の営業とは違う点だと言えるのです。
他と同じことをするのではなく、他を上回るコミュニケーションをとっていくことが重要です。
⑦低いコミュニケーションコスト
「話していて面倒くさい」こう感じてしまう相手と長いお付き合いをしたいとは思わないはずです。そのため、相手にストレスを与えないコミュニケーションを常に意識する必要があります。
一番コミュニケーションコストが低い状態。いわゆる「ツーカーの仲」というものです。こういう人が身近にいたら理想なのではないでしょうか。そこまで行くのは難しいことだとしても、なるべくこの状態にしていけるように意識すべきです。人の「面倒くさい」という感情はかなり強い効果を発揮します。この面倒くささを払しょくするために、事前のコミュニケーションが必要になってくるのです。
ラポールはどう進めていくべきか
繰り返しですが、ラポール=関係構築のことを指します。
関係構築と信頼関係構築の違い
勘違いしている方も多いですが、関係構築と信頼関係構築は異なります。
関係構築=関係を今後も続けていきましょう
このように言うことができ、つまりは繋がりを作り出す活動のことを指します。
しかし一方で、営業がやるべきことはお客様から信頼を得ることです。信頼を得ることが出来なければ、この人にお金を預けたいとは思ってもらうことは到底不可能だからです。つまり、「お金を払ってでもこの人にお願いしたい」という状況を作り出すことが必要であると言い換えることが出来ます。
信頼を得るための情報提供
信頼を得たいがために、ひたすら愛想よく、ごまをすっていれば良いのかというとそんなことはありません。「なぜ私を信じるべきなのか」という根拠をしっかりと提示することが必要です。例えば、
- 会社として上場している
- 規模・売上・従業員数
- 実績・事例
こういったものも情報の1つです。個人としても、これまでの経験や知識、経歴は1つの材料になります。
なぜ情報提供が必要なのか。なぜなら「信頼する」という感情には、主観と客観2つの要素があるからです。感覚的に合う合わないというのが主観の要素。好き嫌い等は主観の要素ですね。一方で、周りが納得できる関係かどうかというのが客観的な要素です。例えば、自分が好きな人がいることを親友に伝えた際、「えーやめなよあんな人」と言われると躊躇してしまう人も多いはずです。つまり、周りが背中を押せる状況になって初めて、全幅の信頼をすることができるということです。
この主観と客観両方を満たせる情報提供を提供していく意識を持つことを忘れないようにしましょう。
ラポール8つのステップ
そしてこのラポールにおいて、私がよく紹介させていただくステップは全部で8つです。
ラポールのステップ①挨拶・名刺交換
挨拶は全てに通ずる基本の行動です。特に日本は挨拶を重視する文化にあります。剣道などのスポーツにおいても、挨拶に始まり挨拶に終わるもの。挨拶の重要性を教育で伝えている以上、しっかりと挨拶を行うようにしましょう。
ラポールのステップ②目的の提示
「私がなぜこの場所に来たのか」この目的をしっかり伝えるようにしましょう。この初回商談は何のためにあるのか。この認識合わせをしていくことが重要です。
ラポールのステップ③期待値の確認
この初回商談の場における「安心感」を作るために必要なポイントです。相手がどの程度の思いを持っているのかを確認することで、会話をスムーズに進めることが可能になります。
ラポールのステップ④自分から自己紹介
相手はまだ自分が何の専門家なのかを把握していない可能性があります。そのため、自分に出来ることが何で、どのような分野で役に立つことが出来るのかを伝えるようにしましょう。先に自己紹介を行うことで、アイスブレイクがしやすくなります。
アイスブレイクが上手く行かない原因の大半は、「何を話していいか分からない」という事態が発生してしまうことにあります。心理学で「心理的安全性」という言葉で表されますが、人が自然体で、本音で話せるようになるためには「相手の開示」が必要になります。どんな人か分からない相手に本音で話すのは人の本能が「警戒せよ」と働くのです。
つまり、自然体で話せるようになるためには、まず営業側から自己開示することが大事だと言えます。
ラポールのステップ⑤意図を持ったアイスブレイク
「今日暑いですね」「天気いいですね」
こういった話題が悪いとは言いませんが、本題に入るためには話題を変える必要があります。それであれば、最初に自分の会社の話をしてからアイスブレイクに入った方がビジネスの話で盛り上がりやすくなるはずです。そういったアイスブレイクの中にも、次回の提案や今後の関係性に活かすことが出来る話題は存在します。その言葉を掴むことが出来るようなアイスブレイクを意識していただきたいと思います。
ラポールのステップ⑥商談の流れの説明
「今日はこんな話をさせていただきたいと思っています」
という、これからの流れを先に説明しておくことが重要です。これには相手が心の準備をしやすくなるという効果があります。「質問されるんだな」これが分かっているだけでも相手は回答がしやすくなるものです。
ラポールのステップ⑦会社や商品の簡単な説明
ここまでのステップを踏んだうえで、自分の会社がどういうものなのか、改めて説明することが出来ます。
ラポールのステップ⑧ヒアリングの合意
説明をしたうえで、ヒアリングをすることの合意をとり、ここでヒアリングに入ることが出来ます。裏を返せばヒアリングまでにはこれだけのステップが必要だと言えるのです。
ラポールの本来の目的
ラポールの目的をはき違えてしまっている方が実は一定数います。ラポールは「仲良くなること」を目的としているのではありません。正しくは以下の目的です。
- 相手が自分の話を真剣に聞いてくれる状態
- 相手が自分に対して本音で話してくれる状態
最初から完璧を求める必要はありませんが、ある程度真剣に会話をしてくれる状態を作る必要があります。この状態があって初めて、ヒアリング・プレゼン・クロージングが機能していくことを念頭に置きましょう。
ラポールで意識すべき4つのアクション
ラポールの流れを上述しましたが、それを遂行するにあたって何を意識すべきなのかまとめていきます。
①自己開示
まずは自分から話すことが重要です。返報性の原理という心理学用語があります。これは、自分が示した行動を相手も同様に返しやすくなるという人の性質を表すものです。つまり、相手にやって欲しいことはまず自分から行うことが重要だと言えます。相手に本音で話してもらうためには、まず自分が率先して話すことが必要なのです。
また、この段階では客観的な事実だけではなく、自分の感情を伝えることが非常に有効です。感情や思いのある話は、自然と会話を深掘りしたり、進めやすくなります。
②似ているポイントを作り出す
類似性の法則という言葉で表される人の性質があります。これは、自分と共通点のある人に対して親近感を抱きやすくなる傾向のことです。例えば、「出身が同じ県」このポイントだけでもどの市なのか、高校はどこなのか、などと会話は進みますよね。こういった似ているポイントを作り出すことが何よりも大事になります。
ただ共通点を見つけるために、いきなり「ご出身はどちらですか?」などと聞くのは逆効果です。初対面の人にいきなり突っ込んだ質問されたら嫌ですよね。この共通点は、事実だけではなく雰囲気の要素が多分に含まれます。つまり、話し方や相槌、価値観が似ていることでも会話は弾むということです。
このことを考えると、相手が話している内容にはしっかりと耳を傾けることが重要だと言えます。その中で、「確かにそうですね!私もそう思います」と言えるポイントが出てくれば理想だと言えるでしょう。
③共感を示す
先程の共通点を示す部分とも連なるところです。価値観が似ていることを伝えるためには、「共感を示す」ことが重要です。相手の話に対して、「確かにそうですよね、それ分かります。私も同じことがあったんです」と言えるなら、会話は弾んていくでしょう。
④称賛をする
共感とも関わりますが、褒めることで「今のあなたの取り組みに賛成します」という思いを伝えることが出来ます。例えば相手がドラえもんのネクタイをつけていたなら、「そのネクタイ素敵ですね」と言われて悪い気がする人はあまりいないはずです。それで相手が「ありがとう、息子がドラえもん好きでね」なんて言ってくれたら、会話は自然と盛り上がっていきます。
ただ、褒め方には気を付けないと逆に嫌われてしまいます。
- 上から目線
- 過剰に褒め過ぎる
- 他と比較して褒める
- 自分のアピールに繋げる
例えばこの4つ。これは褒めていても、皮肉にとられたり、媚を売っているように思われがちです。
反対に、相手に好まれやすい褒め方も存在します。
- 第三者の意見を交えて褒める(例:最近流行ってますもんね・○○さんも良いって言ってましたよ)
- 事象ではなくそれを選んだ相手のセンスを褒める
- 感謝の気持ちを伝える
- 真剣に褒める
- 相手の目を見ながら褒める
- 数字や差分に着目して褒める
事象だけ褒めていると、テストの採点をしているのと一緒になってしまいます。感情を交えた方が効果的です。
繰り返しですが、ラポールはお互いが「本気・本音で」会話できる状態を作ることが目的になります。
ラポールの注意点
ラポールには終わりがありません。常に続くことを念頭におくべきです。ヒアリングやプレゼン・クロージング。そして2回目以降の商談でも、「この人突然売りモードに入ったな」と思われてしまったが最後、相手の心は離れていきます。
ラポールは1回出来たから完成、とはなりません。常に行って、積み重ねていくことを意識しましょう。
いいヒアリングを実現させるには
ヒアリングは滅茶苦茶難しいです。これは前提としてそもそもそうなので、1回のコミュニケーションでヒアリングをしたからといって全て解決できるわけではありません。更に言えばこの変化が激しいご時世において、昨日聞いたことが今日変わっていることも大いにあり得ます。このことを踏まえてヒアリングを組み立てていきましょう。
ヒアリングは質問だけではない
ヒアリング=質問
こう考えてしまうと、ヒアリングは上手く行きません。相手から全てを教えてもらうスタンスになってしまっているからです。
ヒアリングにおいて大事なことは「提供」&「回収」です。相手に考える材料を提供したうえで、相手からのリアクションを回収する意識を持ちましょう。良い質問をしたから良い回答が得られるわけではなく、良い考える材料を提供し、考えるきっかけを提供できたから良いヒアリングになるのです。
良いヒアリングとは
ヒアリングとしてまず意識いただきたいゴール。それは、「顧客理解」です。顧客理解には2つの側面があります。
- 営業が顧客を理解する
- 顧客が顧客を理解する
自分自身について理解してもらうことも、ヒアリングにおいて大事なポイントです。
このことを踏まえると、「ヒアリングの成功=売れる理由が回収できたとき」と考えるのは非常に危険だと言えます。売れた売れないというのは勝手に営業がゴールに設定しているだけであり、お客様がその商品を買っただけではまだスタートラインにたっただけだと言えるからです。
本当の営業ヒアリングとは、お客様がやりたいことをやるための材料をいただけた状態のことを指します。つまりヒアリングの成功をあえて定義づけするなら、「正しい現状把握」であると言うことが出来ます。正しい現状把握が出来ていなければ打ち手を考えることが出来ないからです。
そしてもう1つ。「優先順位の確定」も大きな点です。今、1ヶ月後、3ヶ月後、半年後にいったい何をしていくべきなのか。この優先順位を決めていく必要があります。全てを実行できるだけの人手やお金がある相手は非常に少ないです。そのため、打ち手を明確に、かつ優先順位が決まっている状態が良いヒアリングであると言えます。
ヒアリングの在り方
ヒアリングの在り方として意識いただきたい点が、「思考の提供」です。
いきなり問いを出されたところで、相手は分かりませんと答えるしかありません。「深く・広く」考えるきっかけを与えることが出来る立場が営業なのです。このことを踏まえて、営業はスタンスとして「一緒に考える」視点を持つべきだと言えます。一緒に向き合い考えることで、相手に自分が敵ではないことを伝えられる点を念頭におきましょう。
質問ばかりするのではなく、会話をしながら現状について認識あわせをすることが出来た状態がヒアリングの成功だと言えます。
ヒアリングで意識すべき8つのポイント
ここからはヒアリングで意識すべきポイントをまとめていきます。
ヒアリングポイント①ラポールが構築できているか
本音で話合いできる状態が作れているかどうか。いわゆるラポールが構築できているかという点になります。嘘やごまかされた情報を聞いたところで、その情報は何の意味も持ちません。
営業がコンサルティングと一緒だというように言われることがあります。それは、相手のことを正しく把握できる関係性があって初めて成立する職種であるからです。質問や会話の前に、どんな関係性であるかを正しく把握しておくことが1つ目のポイントになります。
ヒアリングポイント②相手の話す内容が事実とは限らない
他人の腹の底を見ることは出来ないので、本音で話しているように見えるだけということもありえます。
お客様自身は不安感を抱えています。「変なものを強く売り込まれるんじゃないか」こういった気持ちがデフォルトであることを忘れてはいけません。
ヒアリングポイント③話がつまらないと回答の質は落ちる
話している間の満足感が減ってきてしまうと、回答の質は自然と落ちるものです。話していて楽しくないと、興味が無くなります。興味がないものに真摯に答える人は多くありません。営業は話し上手ではなく、聞き上手であるべきというのはこれが理由です。相手に気持ちよく話させるスキルを持てているから聞き上手である。このことを意識するようにしましょう。
ヒアリングポイント④相手は回答できない場合がある
相手が回答したくなくて質問に答えてくれない。このパターンはそこまで多くありません。むしろ答えられない場合の方が多いです。
例えば、「あなたにとって幸せとは?」この質問を突然されたら即答できる人は多くありません。どう答えるか考える時間が必要なはずです。個人に向けての質問でも悩むのに、「会社の理想の未来は?」と突然質問をされても答えるのが難しいのは必然です。
また、相手はこの商談に関する業務以外にも数多くの業務を抱えていることの方が多いです。常日頃このことだけを考えているわけではないことをおさえておきましょう。
ヒアリングポイント⑤相手は全てを把握しているわけではない
例え社長であったとしても、業務の全てを把握している人の方が少ないです。それにも関わらず、目の前の担当者が全容を把握しているを勘違いしている営業が非常に多くいます。この前提を忘れてはいけないと言えます。
ヒアリングポイント⑥相手はバイアスがかかっている
バイアス=心の偏りです。もっとシンプルに言うと、「人は自分の色眼鏡で物事を見ている」ということが出来ます。
つまり、自分が見ている世界は必ずしも全てが事実ではなく、自分の思い込みや主観が含まれているのです。その主観をもとに相手は質問に対して回答をくれているという点を念頭におくことが必要です。
ヒアリングポイント⑦営業にもバイアスがかかっている
厄介なことに、聞き手である営業自身にもバイアスは自然とかかっています。
基本的に、会話の内容はお互いの主観に基づいており、事実は必ずしも関係しない場合があるのです。例えば、
「身長が170㎝」
この人をあなたは身長が高いと思うでしょうか、低いと思うでしょうか。身長が180㎝の人からすると「低い」と感じるでしょう。一方私は身長が167㎝なので、170cmは高いと感じます。また、この身長の人の性別によっても高い低いは変わってくるはずです。
つまり、相手の主観や状況によってとらえ方は変わってくる点を意識しておくべきだと言えます。
ヒアリングポイント⑧テクニックに頼りすぎると相手に気付かれる
小手先でどうにかしようと思う程、相手はそれに気付きます。このインターネット社会、ヒアリングのテクニックはいとも簡単に調べることが可能です。つまり、そのテクニックは相手も知っている可能性があると言えます。テクニックに溺れないように気を付けることが必要です。
テクニックではなく、一緒に考えるスタンスを持つことが重要です。
営業が話しすぎないために
よくあるパターンの1つに「営業が話過ぎてしまい、ヒアリングが上手く行かない」というものがあります。
これを避けるためには、先にヒアリング項目をシンプルに伝えることも1つの手法です。ストレートに聞くのもOKです。質問が長くなってしまうのであれば、質問を分解して伝えるようにしましょう。また質問にこだわりすぎるのではなく、会話の中から情報を拾う意識も重要です。
また、相手の話に対して共感をしっかり示すことが出来ているか自問する意識もポイントです。繰り返しですが、共感を示すことは相手に対して「その内容が正しい」と理解したメッセージになります。
話をする側にとって、相手のリアクションが無い状態は非常に辛いものです。例えば同じ漫才のネタを同じ芸人がやったとしても、笑い声の有無は大きくそのネタの完成度に関わってくるのではないでしょうか。
あくまで商談は会話の機会です。しっかりリアクションをとって、相手が話しやすい場を作っていくことが重要です。
ヒアリングのステップ
ヒアリングはラポールと違い、会話であるため相手の反応によってやることが変わっていきます。一律でこの話をしていればOK、というものはありません。
これを踏まえて、ヒアリングの中で意識して使って欲しい言葉を4つご紹介します。
ヒアリングで使うべき言葉①枕詞
聞きたい内容の前に、自分が考えていること・この質問の意図を伝えるのが1つ目のポイントです。「御社のお役に立ちたいと思っている」この言葉があるだけでも、不躾感は減るはずです。「いきなり予想以上に高額なご提案をするのも申し訳ないので、ご予算の幅を伺ってもいいですか」というのも一例として挙げられます。
こういった前置きの言葉があるだけでも雰囲気は変わります。このことをおさえておきましょう。
ヒアリングで使うべき言葉②深掘りの質問
「なぜですか」という、背景や文脈、理由を更に深く聞いていく質問になります。
ヒアリングで使うべき言葉③広げる質問
「今頂いたお話は、上長の方も同じようにお考えですか」「部署全体でそういった形ということでしょうか」
こういった、視点を変え、視野を広げる質問です。視点が変われば、考える材料が増えていきます。
ヒアリングで使うべき言葉④まとめる質問
最終的にもらった情報をまとめる質問を行うことが必須です。
「合意形成」「認識合わせ」がヒアリングでは重要になります。情報が散らかったままプレゼン・クロージングに移ってしまうと、せっかくの情報が無駄になる危険性が高いです。内容整理をして、確認をする意識を持つようにしましょう。
質問の切り口
ヒアリングの質問にも複数切り口があります。
質問の切り口①相手の体験談を聞く
いきなりストレートに質問するのではなく、「このようなお考えに至った経緯はどのようなものがあるのでしょうか」といった形で聞くのが1つ目です。これを行うことで、全てを聞かずともある程度相手の傾向を掴むのに役立ちます。
質問の切り口②事実の回収
主観や思い込みを聞いただけでは、課題解決につながる提案からズレてしまう危険性があります。客観的事実を掴んでおくための質問も切り口として効果的です。
質問の切り口③意見の深掘り
ただ、営業において大事なことは相手の行動を引き出すことでもあります。合理的な提案をしたからといって相手が受け入れない可能性があることも忘れてはなりません。あくまで人は感情で動く生き物だからです。
そこで、事実とは別に相手がどう感じているのか意見を聞いておくことも重要になります。
質問の切り口④相手が興味のあることを聞く
相手が答えやすい質問を選ぶのも効果的です。興味を持っていない、考えたことがないことに関する質問をすぐにしたところで相手は答えられません。そのため、先に興味のありそうな質問をして、段々と聞かなければいけない質問に移っていく。この順番も意識していただきたいポイントになります。質問は内容だけでなく、順番やタイミングも重要であることをおさえておきましょう。
質問の切り口⑤相手が楽しかったこと・自信があることを聞く
相手が答えやすい質問には、楽しかったことや自信を持っていることも含まれます。そこから会話を始めるきっかけとして活用するのも1つの手法です。
ヒアリングのフレームワーク
ヒアリングにはいくつかのフレームワークがあります。
SPIN話法
1つとして有名なのが「SPIN話法」です。
- Situation(状況整理)
- Problem(問題質問)
- Implication(示唆質問)
- Need-Play off(解決質問)
この4つの段階に分けたものです。まずは相手の現状を整理し、相手の潜在ニーズを引き出す。そして相手の問題の重要性に気付いてもらい、解決した先のメリットを認識してもらう。この手順は大型契約に向けて効果的であると言われています。ただ、金額感を問わず重要なポイントであると言えるでしょう。
▼SPIN話法についてはこちらのサイトが参考になります!
SPIN話法とは?営業にヒアリング力が必要な理由とSPIN営業の5つのコツを徹底解説
BANT情報
また、BANT情報というフレームワークも存在します。
- budget(予算)
- Authority(権限)
- Needs(ニーズ)
- Timeline(注文時期)
ここを確認するものです。これを知ることで営業先の見込み度合いを確認することが可能になります。
▼BANT情報についてはこちらのサイトが参考になります!
オープンクエスチョン・クローズドクエスチョン
オープンクエスチョン=自由に答えてもらう質問
クローズドクエスチョン=「はい」「いいえ」で答えられる質問
クローズドクエスチョンの方が回答は得やすくなりますが、理由や意見は聞きづらくなります。一方でオープンクエスチョンは回答へのハードルが高いものの、詳しい理由や意見を聞くことが可能です。
どちらを使った方が効果的か、使い分けていくようにしましょう。
ヒアリングは質問ではなく一緒に考えるもの
ここまで様々な要素を解説してきましたが、根幹部分は「ヒアリングは一緒に考えるものである」というスタンスです。このスタンスに基づいて、考えるきっかけや材料を提供していくことが重要になります。そして最終的にはお客様と認識合わせをし、合意形成をすることがポイントです。
合意形成とは、客観的事実に対して、営業と相手とで同じ認識を持ち、優先順位を決めることになります。このポイントが良いプレゼン・クロージングに繋がっていくということを、是非意識いただきたいと思います。
この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。