誰にでも売らない営業戦略
概要
営業で成果を上げるためには、ただ商品やサービスを提案するだけではなく、「誰に売るのか」「なぜその相手なのか」を見極めたうえで、相手の状況や考え方に合わせたコミュニケーションを取ることが重要です。
本研修では、LTVやコストを踏まえたターゲット選定から、顧客との関係構築、情報提供のタイミング、言葉や伝え方まで、相手に「話してよかった」と思ってもらえる営業の考え方について解説しています。
内容
1.「売れる」とは、ただ受注を取ることではない
営業における「売れる」という状態は、単純に商品やサービスを購入してもらうことではありません。
まず相手に興味を持ってもらい、「欲しい」という欲求を生み出し、その上で営業担当者や会社への信頼を得る必要があります。さらに、商品やサービスによって課題を解決できると理解してもらい、金額や納期などの条件にも納得してもらうことで、初めて受注につながります。
特に高額な商材になるほど、「なぜこの商品が必要なのか」「導入することで何が変わるのか」を相手に理解してもらうための説明や論理性が重要になります。
営業担当者が一方的に商品の魅力を伝えるのではなく、相手が納得し、行動するまでのプロセス全体を考えることが「売れる営業」につながります。
2. 営業では「4つのなぜ」を明確にする
営業活動を行う際には、常に以下の「なぜ」に答えられる状態をつくることが重要です。
- なぜこの商品なのか
- なぜこのお客様なのか
- なぜ自社・自分なのか
- なぜ今なのか
この理由が明確になっていれば、相手の行動を引き出しやすくなります。
また、お願いをするときには「理由」を添えることもポイントです。研修では、理由を付けて依頼することで承諾率が高まった心理学の実験を紹介し、新規開拓営業においても「なぜお願いするのか」を伝えることの重要性を説明しています。
3. 無理なクロージングは後工程の負担になる
営業活動では、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスなど、それぞれの段階で相手から行動や合意を得る「クロージング」があります。
しかし、手前の工程で無理に成果を取ろうとすると、その負担は後工程へ移ってしまいます。
例えば、実際には存在しない大幅な値引きなどを提示してアポイントを獲得すると、商談担当者やカスタマーサクセスがその条件を引き受けなければならなくなります。
目の前のアポイント数や受注数だけを追うのではなく、その後の商談や契約、導入後まで含めて考えることが重要です。営業プロセス全体で無理のない約束を積み重ねることが、結果的に顧客満足度や長期的な成果にもつながります。
4. 営業すべき相手は「LTV」と「コスト」で考える
営業先を選ぶ際に重要になるのが、LTV(顧客生涯価値)です。
LTVとは、一人のお客様が取引開始から終了までの期間に、どれだけの利益をもたらしてくれるのかを見る指標です。
一度きりの受注だけを見るのではなく、
- 取引期間を伸ばす
- リピート・再発注につなげる
- 顧客単価を高める
といった視点で、一人のお客様から得られる価値を考えることが重要です。
一方で、売上が大きければ必ず良い顧客とは限りません。契約後のトラブルや説明、対応にかかる時間や労力もコストとして考える必要があります。
「どれだけ売れるか」だけではなく、「どれだけのコストをかけて、そのお客様を成功に導くのか」まで考えることで、本当に営業すべき顧客が見えてきます。
5.「会社の規模」だけで営業先を判断しない
営業リストを作る際、売上規模や従業員数、店舗数などを基準にするケースがあります。
しかし、会社の規模が大きいからといって、自社の商品・サービスに大きな予算を使ってくれるとは限りません。
重要なのは、その企業が抱えている課題に対して、どれだけ問題意識を持っているのか、そしてその解決の優先順位が高いのかという点です。
「お金を持っている会社」ではなく、「その課題を解決するためにお金を使う会社」を見極めることが営業戦略につながります。
企業規模だけで営業先を決めるのではなく、課題の大きさや緊急性、解決に対する意欲などを見ながら、より成果につながりやすい相手を選ぶことが大切です。
6. リードナーチャリングは「連絡すること」が目的ではない
見込み顧客との関係を深めるリードナーチャリングについても解説されています。
メールを送ったり電話をかけたりするだけで、自然に関係性が深まるわけではありません。
重要なのは、
関係性をつくる → 課題感を持ってもらう → 優先順位を高める
という流れです。
例えば、まだ課題を認識していない相手に、いきなり商品の説明をしても行動にはつながりにくいでしょう。
まずは相手との関係をつくり、必要な情報を提供しながら「この課題を解決したほうがいい」と認識してもらう。そのうえで、解決の優先順位を高めていくことが重要です。
情報提供やコミュニケーションを行う際にも、「何のためにこの連絡をするのか」という目的を明確にすることが求められます。
情報提供やコミュニケーションを行う際にも、「課題への危機感を持ってもらう」「優先順位を高める」「関係性を強化する」など、明確な目的を持つことが求められます。
7. 相手が動かない理由によってアプローチを変える
相手が行動しない理由には、いくつかの「壁」があります。
研修では、
- 知識の壁
- 行動の壁
- 気づきの壁
- 技術の壁
- 思考の壁
- 関係性の壁
という6つの壁を紹介しています。
例えば、知識が不足している相手には、商品を売り込むのではなく、まず「どのような方法や未来があるのか」を知ってもらうことが必要です。
また、行動できていない相手に対しては、いきなり大きな提案をするのではなく、小さな一歩を踏み出してもらうことが重要です。
このように、相手がどの段階で止まっているのかによって、必要なコミュニケーションは変わります。
「なぜこの人は動かないのか」を考えずに同じ営業を繰り返すのではなく、相手が抱えている壁を見極め、それに合わせてアプローチを変えることが成果につながります。
8.「嫌われない営業」を意識する
営業では、成果を出すための努力だけでなく、相手に余計なストレスを与えないことも重要です。
相手の状況を考えずに話を進めたり、必要以上に売り込んだりすると、コミュニケーションを重ねるほど距離が広がってしまうことがあります。
だからこそ、まずは「自分の営業によって相手に負担をかけていないか」を考えることが必要です。
相手が話しやすい状態をつくり、無理に結論を急がず、相手の状況や気持ちを考えながら会話を進める。こうした「嫌われない準備」が、営業活動を続けていくうえでの土台になります。
9. 情報を伝えるだけではなく、「だから何?」まで考える
現在は、必要な情報の多くをインターネットで調べられる時代です。
そのため、営業担当者が単純に情報を渡すだけでは、それだけで価値を感じてもらうことは難しくなっています。
重要なのは、集めた情報を整理し、相手にとって「だから何が重要なのか」「自分はどうすればいいのか」まで考えることです。
相手が必要としている情報を、必要なタイミングで届ける。そして、その情報によって新しい気づきや判断材料を提供することで、営業担当者と話す意味が生まれます。
10. 相手のリテラシーを理解して会話する
相手がどの程度の知識を持ち、情報をどのように理解・解釈しているのかを把握することが、営業コミュニケーションのスタートです。
大切なのは、自分の基準で「正しい・間違っている」と判断するのではなく、まず相手が現在どのような状態なのかを理解すること。その上で、相手がなぜその考えに至ったのか、どのような経験や情報をもとに判断しているのかをヒアリングしていくことが重要です。
営業側にとって当たり前の知識でも、相手にとっては初めて聞く内容かもしれません。相手の理解度を確認せずに話を進めると、伝えたいことが正しく届かないだけでなく、会話そのものが負担になってしまいます。
11. コミュニケーションは「コスト」である
営業との会話には、相手の時間や気持ちが必要です。たとえ無料のサービスや成果報酬型の提案であっても、相手の時間を使っていることに変わりはありません。
研修では、コミュニケーションにかかるコストとして、相手の言葉を認識する「認知コスト」、情報を受け取る「取得コスト」、内容を理解する「理解コスト」、そして理解したことを実際の行動につなげる「行動対応コスト」という考え方が紹介されています。
営業では最終的に、相手に契約や利用などの行動をしてもらう必要があります。そのため、営業担当者が「良い話をした」と感じるだけでは不十分です。
「お金はかからないから」「損はしないから」といった営業側の都合だけで行動を促すのではなく、相手がどれだけ時間や労力を使うのかまで考えることが、相手に配慮した営業につながります。
12. 情報提供ではなく「新しい視点」を届ける
現在は、インターネットを使えば多くの情報を自分で調べられる時代です。そのため、営業が単に情報を提供するだけでは十分とはいえません。
営業に求められるのは、情報を集めて整理し、相手が考えるための材料を提供することです。
例えば、単に「こういうサービスがあります」と伝えるのではなく、「なぜ今このサービスが必要なのか」「この方法を選ぶことで何が変わるのか」「ほかにどのような選択肢があるのか」といった視点を提供することで、営業との会話に価値が生まれます。
相手がすでに知っている情報を繰り返すのではなく、「今まで考えていなかったことに気づけた」と思ってもらえる情報を提供することが重要です。
13. 相手のタイミングに合わせて情報を変える
相手がまだ商品を知らない段階では、まず商品やサービスの存在を知ってもらうことが重要です。その後、事例やビフォーアフター、役立つ情報などを提供し、検討段階に入ったら、より具体的な情報を伝えていきます。
重要なのは、誰にでも同じ情報を送るのではなく、「今、相手はどの段階にいるのか」を考えて情報を届けることです。
まだ課題を認識していない相手に、いきなり契約の話をしても響きません。逆に、すでに課題を認識し具体的な解決策を探している相手には、一般的な情報だけでは物足りなく感じられます。
相手の状況や検討段階に合わせて、必要な情報を必要なタイミングで届けることが、リードナーチャリングや継続的な営業活動にもつながります。
14. 会話には「目的」を持たせる
営業で相手と会話をするときは、「とりあえず連絡する」という状態を避けることも大切です。
目的が見えない会話は、相手にとって「何のためにこの話を聞いているのだろう」と感じる負担になってしまいます。
一方で、相手が興味を持っているテーマや、現在抱えている課題に関連した話であれば、会話を続ける意味を感じてもらいやすくなります。
理想的なのは、相手がある程度「この話はこういう方向に進むだろう」と予測できる中に、新しい気づきや視点を少し加えることです。
「知っている話だけ」でも、「全く予想できない話だけ」でもなく、相手が理解しやすい内容の中に新しい発見を入れることが、良い会話につながります。
15. 伝える言葉・順番・タイミングを意識する
営業の会話では、何を伝えるかだけでなく、どのように、どの順番で、いつ伝えるかも重要です。
基本的な話し方として「結論→理由→事例→結論」というPREP法がありますが、いきなり結論だけを伝えても相手には伝わりません。まず会話の前提や認識を合わせた上で結論を伝えることが大切です。
また、正しい情報や論理だけで人が動くとは限りません。感情や納得感、具体的な根拠などを組み合わせることも必要です。
言葉の選び方を間違えれば「嫌な感じ」と受け取られ、順番を間違えれば違和感につながり、タイミングを間違えれば「なぜ今?」と思われてしまいます。
だからこそ、相手の状態を見ながら、適切な言葉・順番・タイミングを選ぶことが重要になります。
16.「見る・聞く」ことから相手を理解する
相手に合わせた営業をするためには、相手を知ることが欠かせません。
営業側と顧客側では、同じ言葉を使っていても、その意味や前提が異なる場合があります。「予算」「導入時期」「決裁者」などを営業側の都合で早い段階から確認するのではなく、まず相手が何を課題として感じているのかを理解することが大切です。
そのためには、相手の話を「見る・聞く」ことが重要です。
さらに、会話の中で相手が発する言葉だけではなく、普段どのような情報を見ているのか、どのような考え方や基準を持っているのかを知ることも役立ちます。
研修では、通常のPDCAに入る前に「R=Research(リサーチ)」を加える考え方も紹介されています。相手を知るための準備を行い、その情報をもとにコミュニケーションを改善していくことが重要です。
17. 提案とは「商品を売り込むこと」ではない
営業における提案は、単純に商品の機能やサービスの特徴を説明することではありません。
相手にとって必要な情報を整理し、どのような課題を解決できるのか、導入することでどのような変化が期待できるのかを伝えることが提案につながります。
そのためには、商品そのものの説明だけでなく、導入事例やビフォーアフター、具体的な成果などを事前に準備しておくことも重要です。
また、最初からすべてを説明しようとするのではなく、「この話をもう少し聞いてみたい」と思ってもらえる会話のきっかけをつくることも営業の役割です。
18.「話してよかった」と思ってもらえる営業へ
営業に対して苦手意識を持つ人が多い背景には、「営業されて嫌だった」という経験がある一方で、「営業と話してよかった」と感じる経験が少ないことも考えられます。
だからこそ、営業担当者が目指すべきなのは、単に商品を売ることではなく、相手にとって心地よく、有益なコミュニケーションを提供することです。
「話してよかった」「相談してよかった」「この人と出会えてよかった」と思ってもらえる時間をつくることが、結果として信頼や成果につながります。
誰に営業するのかを見極め、相手の状況を理解し、必要な情報を適切なタイミングで届ける。そして、一方的に売り込むのではなく、相手との会話を通じて新しい気づきや選択肢を提供する。
こうした積み重ねが、長期的な関係を築き、成果につながる営業コミュニケーションを生み出していきます。
まとめ
営業で成果を上げるためには、商品やサービスを売ることだけを考えるのではなく、まず「誰に提案するのか」を見極めることが重要です。そのうえで、相手の知識や状況、課題に合わせて情報を提供し、適切な言葉・順番・タイミングでコミュニケーションを取ることが求められます。
「売る」ことを目的にするのではなく、相手にとって価値のある情報や気づきを提供し、「話してよかった」「相談してよかった」と思ってもらえる関係をつくること。それが、長期的な信頼や成果につながる営業につながります。
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この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。
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