概要
現在はインターネットやSNS、生成AIなどを通じて顧客自身が多くの情報を得られるようになり、一度の商談で決断してもらうことが難しくなっています。そのため営業には、提案後の検討期間をただ待つのではなく、顧客の検討と関係性を前に進める「フォローアップ」が求められます。
フォローアップでは、単に接触回数を増やしたり、検討状況を確認したりするのではなく、「何を伝えるか」というコンテンツと、「なぜ今、この方法で伝えるのか」というコンテキストを意識することが重要です。顧客の状況や関係性、タイミングに合わせて必要な情報やコミュニケーションを提供することで、顧客が抱える迷いや選択肢を整理し、意思決定を支援していきます。
また、見込み客ジャーニーマップを活用して受注までの流れを整理し、商談と商談の間にも意味のある接触を積み重ねることで、より継続的な関係を築くことができます。受注だけをゴールとせず、顧客が実現したいことを理解し、その実現に向けて支援し続けることが、フォローアップセールスの重要な考え方を解説しています。
内容
1.「即断即決」から「検討期間をともに過ごす」営業へ
以前は、営業担当者が持っている情報そのものに大きな価値がありました。お客様が得られる情報が限られていたため、目の前の営業担当者から話を聞き、その場で判断することも珍しくありませんでした。
しかし現在は、インターネットやSNS、Webサイト、生成AIなどを使って、お客様自身が簡単に情報を集められます。
その結果、営業担当者から提案を受けた後に、自分で情報を調べたり、他社と比較したりしながら、時間をかけて検討するケースが増えています。
つまり、営業に求められるのは「その場で決断してもらうこと」だけではありません。
お客様が決断するまでの検討期間を、どのように一緒に過ごすかが重要になっています。
2.フォローアップで重要なのは「接触回数」ではなく「価値」
従来の営業では、検討中のお客様に対して、訪問回数を増やしたり、ゴルフや飲み会などを通して関係を深めたり、ノベルティを持って訪問したりする方法も行われてきました。
こうしたコミュニケーションがすべて悪いわけではありません。人には「何かをしてもらったら、お返しをしたくなる」という返報性の心理があるため、関係構築において一定の効果があると考えられます。
一方で、現在は多くの人が忙しく、時間を非常に大切にしています。
そのため、「とりあえず会いに行く」「とりあえず連絡する」という単純接触を繰り返すだけでは、お客様にとって負担になってしまう可能性があります。
営業担当者が10分の時間をもらうのであれば、その10分を使って「話を聞いてよかった」「時間を割いてよかった」と思ってもらえる理由や価値を用意することが重要です。
3.お客様に提供する「価値」は2つある
お客様にとっての価値は、必ずしも論理的なメリットだけではありません。
一つは、感情的な価値です。
「この人と話すと楽しい」「会えてよかった」「話をすると前向きな気持ちになれる」といったポジティブな感情も、お客様が時間を使う理由になります。
もう一つは、論理的な価値です。
たとえば、仕事や事業の成功につながる情報、自社の成長につながる情報、他社との差別化につながる情報などです。
特に法人営業では、お客様が仕事の時間を使って営業担当者と話している以上、その時間が仕事上の成果や成長につながることが重要になります。
そのため、フォローアップでは、
- 話していて楽しい
- 新しい気づきが得られる
- 仕事に役立つ
- 成長につながる
- 意思決定の参考になる
といった価値を意識することが大切です。
4.営業は「インプット」ではなく「アウトプット」で評価される
営業担当者は、知識を増やすために勉強したり、話すネタを増やしたりすることがあります。
しかし、どれだけ知識を持っていても、それをお客様に届けられなければ営業活動にはつながりません。
重要なのは、学んだことをアウトプットすることです。
そこで活用できるのが「コンテンツ」です。
コンテンツには、SNSの投稿、ショート動画、YouTube、ブログ、営業資料、提案書、メールなど、さまざまな形があります。
自分が毎回直接説明しなくても、コンテンツを通じてお客様が情報を得られる状態をつくることで、継続的なコミュニケーションが可能になります。
5.コンテンツは「作って終わり」ではない
コンテンツを作れば、それだけで相手に価値が伝わるわけではありません。
重要なのは、相手が受け取りやすい形で届けることです。
たとえば、動画で見ることを好む人もいれば、文章のほうが読みやすい人もいます。文章でも、長い文章より箇条書きのほうが短時間で内容を把握しやすい場合があります。
つまり、
「相手が欲しい情報」を「相手が受け取りやすい形式」に変えて届ける
ことが重要です。
また、自分で新しいコンテンツをすべて作る必要があるわけではありません。
すでに存在している記事やSNSの投稿などを見つけ、「参考になると思ったので送ります」「この内容が役立つと思ったので共有します」と届けることも、フォローアップの一つになります。
6.「コンテンツ」と「コンテキスト」をセットで考える
フォローアップにおいて、コンテンツと同じくらい重要なのが「コンテキスト」です。
コンテキストとは、日本語では「文脈」と表現できます。
同じ内容でも、誰が、いつ、どのような関係性で、どのような目的で伝えるかによって、相手が受け取る印象は大きく変わります。
たとえば、「勉強しなさい」という同じ言葉でも、相手との関係性によって受け止め方は変わります。
営業でも同じです。
商談直後、まだ関係性が十分に築けていない段階で、いきなり「今すぐ決断してください」と伝えれば、「契約が欲しいだけなのでは」と受け取られる可能性があります。
一方で、お客様との関係性や検討状況を把握したうえで、必要な情報を適切なタイミングで届ければ、検討を前に進めるきっかけになります。
つまり、フォローアップでは、
「何を伝えるか(What)」だけではなく、「どのように伝えるか(How)」、そして「どのような関係性・状態で伝えるか」
まで考えることが重要です。
7.コンテキストを把握するために必要なのが「ヒアリング」
では、お客様がどのような状態なのかを、どう把握すればよいのでしょうか。
そのために必要なのがヒアリングです。
お客様が現在何を考えているのか、どのような判断をしようとしているのかは、聞かなければ分かりません。
さらに現在は情報量が非常に多いため、お客様の意思決定や判断状況が短期間で変わる可能性もあります。
「先週まではこの条件でよかったけれど、今週は判断軸が変わった」ということも起こり得ます。
そのため、以前聞いた内容をずっと同じものとして扱うのではなく、フォローアップの中でも状況を確認し続けることが重要です。
8.「なぜ、この情報を届けたのか」を伝える
フォローアップでコンテンツを送る際には、「なぜあなたにこの情報を届けたのか」という理由を伝えることも大切です。
たとえば、
「先日お話しされていた○○に関係する記事を見つけたので、参考になると思いお送りしました」
といったように、相手とのこれまでの会話や状況と関連付けて伝えます。
単に情報を送るだけではなく、「あなたのためにこの情報を選んだ」という文脈をつくることで、コンテンツがより意味のあるコミュニケーションになります。
また、メール、SNS、電話、オンライン、対面など、伝える手段によっても受け取る印象は変わります。
何を伝えるのか、どのように伝えるのか、誰が伝えるのか。
これらを考えることも、フォローアップにおける重要な要素です。
9.フォローアップの目的は「検討」と「関係」を前に進めること
フォローアップの目的は、単純に連絡回数を増やすことではありません。
お客様が「これは必要なものだ」と判断し、検討を前に進められる状態をつくること。そして、「この人にお願いしたい」「この会社に依頼したい」と思ってもらえる関係性を築いていくこと。この2つを同時に前進させることが、フォローアップの役割です。
そのため、闇雲に電話やメールを繰り返しても、必ずしも関係が良くなるわけではありません。相手にとって価値のない連絡は、時間を奪われているという印象につながり、むしろネガティブな印象を与える可能性があります。
10.「コンテンツ」と「コンテキスト」を意識する
現代の営業では、電話やメールだけでなく、SNS、動画、ブログ、営業資料など、さまざまな形で情報を届けることができます。
ただし、良いコンテンツを作るだけでは十分ではありません。重要なのが「コンテキスト」、つまり文脈や背景です。
例えば、同じ内容を伝える場合でも、電話なのかメールなのか、対面なのかオンラインなのかによって、相手の受け取り方は変わります。また、同じ言葉であっても、それまでにどのようなやり取りをしてきたかによって印象は大きく変わります。
そのため、
- 何を伝えるのか
- どの手段で伝えるのか
- いつ伝えるのか
- どのような関係性で伝えるのか
- なぜ今この情報を伝えるのか
を考える必要があります。
特に重要なのが「なぜ今、この情報を届けるのか」という理由です。
「定期的にメルマガを送っているから」「リストに入っているから」という理由だけでは、受け取る側にとって価値のあるコミュニケーションにはなりません。
一方で、「前回のお話から、この情報がお役に立つと思ったので送ります」のように理由が明確であれば、同じ情報でも意味のあるコミュニケーションになります。
11.「ご検討状況はいかがですか?」だけでは検討は前に進まない
フォローアップでよく使われる「ご検討状況はいかがですか?」という言葉も、使い方には注意が必要です。
この言葉だけでは、営業側が自分の安心や営業目標のために状況を確認しているように受け取られる可能性があります。
大切なのは、お客様の検討を支援するために連絡することです。
例えば、
「ご検討いただくにあたって、何か弊社でお役立ちできることがないか知りたいので、今のご状況を教えていただけますか」
というように、同じ「検討状況の確認」でも、お客様を支援する目的を明確にすることで、コミュニケーションの意味が変わります。
フォローアップの主役は営業ではなく、お客様です。
12.お客様が「検討中」になっている理由を考える
お客様が検討しているとき、選択肢は一つではありません。
例えば、
- そもそも実施しない
- 自社で対応する(内製化)
- 他社へ依頼する
- 自社と外部を組み合わせて対応する
- 規模を縮小する
など、さまざまな可能性があります。
つまり「検討中」とは、まだ複数の選択肢から一つを選びきれていない状態とも考えられます。
営業に求められるのは、自社を選んでもらうための情報提供だけではありません。
「この選択肢は今回の目的には合わない」「この方法よりもこちらの方法が適している」といった判断材料を提供し、お客様と一緒に選択肢を整理していくことも、営業ができる支援の一つです。
選択肢が多すぎることで、かえって決められなくなることもあります。だからこそ、必要な選択肢を残しながら、現時点で関係のない選択肢を整理していくことが、意思決定を支援することにつながります。
13.見込み客ジャーニーマップで「発注までの道筋」を考える
初回商談から発注までの道筋を、営業側があらかじめ考えておくことも重要です。
例えば、
初回商談
↓
提案書・見積書の提出
↓
追加のヒアリング
↓
次回商談
↓
契約・発注
というように、最終的なゴールまでに必要なステップを整理します。
営業担当者は、「自分の場合、何回程度の商談が必要なのか」「どの資料が必要なのか」「次のステップまでにどのくらい時間がかかるのか」を把握しておく必要があります。
さらに重要なのが、各ステップの間にある時間です。
例えば、提案書を送ってから次回商談まで1週間空くのであれば、その1週間をただ待つのではなく、必要な情報を確認したり、資料の不明点を補足したり、状況をヒアリングしたりすることができます。
こうした意味のあるコミュニケーションを挟むことで、単純な商談と資料提出だけよりも、お客様との接点を増やすことができます。
14.「接触回数」ではなく「意味のある接触」を増やす
フォローアップで大切なのは、何度も連絡することそのものではありません。
例えば、
「提案書を送ったので、不明点がないか確認する」
「見積書だけでは分かりにくい部分を補足する」
「次回商談に必要な情報がないか確認する」
「社内で検討するために必要な資料を提供する」
「お客様の状況に変化がないか確認する」
など、それぞれの連絡に明確な理由があることが重要です。
商談と商談の間に電話やメール、SNSなどを活用することで、1回の商談だけに依存せず、継続的なコミュニケーションをつくることができます。
「ご検討状況はいかがですか?」と毎日のように確認するのではなく、検討や関係を前に進めるために必要なやり取りを積み重ねることが、フォローアップです。
15.「しつこい営業」と「熱心な営業」の違い
しつこい営業と熱心な営業の違いは、誰のためにコミュニケーションを取っているかにあります。
営業側の数字や目標のためだけに「そろそろ決まりそうですか」「ご検討状況はいかがですか」と確認し続ければ、お客様から見れば自分のための連絡ではないと感じる可能性があります。
一方、熱心な営業は、お客様にとって本当に必要な提案なのかを考えたうえで、予算、決裁権、ニーズ、導入時期などを踏まえ、必要なタイミングから逆算してコミュニケーションを行います。
「今このタイミングで、この情報を提供する必要がある」という理由が明確であれば、営業側の都合ではなく、お客様の目的を実現するためのフォローアップになります。
16.受注をゴールにせず「お客様が実現したいこと」をフォローする
営業において、契約書へのサインや発注は一つの大きなステップです。
しかし、お客様が本当に実現したいのは「契約すること」ではありません。
困っていることを解決したい、課題を解消したい、実現したいことがある。そのための手段として、契約や発注という行動があります。
だからこそ、営業がフォローすべきなのは「契約まで」だけではなく、その先にある「お客様がやりたいことの実現」です。
受注をゴールにするのではなく、
「お客様は何を実現したいのか」
「そのために今、何が必要なのか」
「自分たちはどのような支援ができるのか」
を考えながらコミュニケーションを重ねていくことが重要です。
営業、インサイドセールス、カスタマーサクセスなど、担当する役割が分かれていたとしても、最終的に目指すべき「お客様がやりたいことの実現」という考え方は変わりません。
まとめ
フォローアップセールスで重要なのは、顧客に何度も連絡して契約を急かすことではなく、顧客の「検討」と「関係」を前に進めることです。情報があふれ、顧客自身がさまざまな選択肢を比較できる現在では、一度の商談で決断を促すのではなく、検討期間に合わせた継続的なコミュニケーションが求められます。
そのためには、「何を伝えるか」というコンテンツだけでなく、「なぜ今伝えるのか」「どの方法で伝えるのか」「どのような関係性で伝えるのか」といったコンテキストを意識することが大切です。顧客の状況を確認しながら、必要な情報や判断材料を適切なタイミングで届けることで、意味のある接触を積み重ねることができます。
また、見込み客ジャーニーマップを活用し、商談から提案、見積もり、次回の打ち合わせ、受注までの流れを整理することで、商談の間にどのような情報提供やコミュニケーションが必要なのかを考えられます。接触回数そのものを増やすのではなく、一つひとつの接触に顧客にとっての価値を持たせることが重要です。
営業のゴールは契約を獲得することだけではありません。顧客が抱えている迷いや選択肢を整理し、本当に実現したいことに近づけるよう支援することが、フォローアップセールスの本質です。顧客視点で必要なコミュニケーションを積み重ね、検討と関係性を前に進めていくことが、これからの営業に求められるフォローアップの考え方です。
この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。
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