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【商談の流れ完全攻略】営業が必ず踏むべき4つのステップ

更新日
2024/10/22
公開日
2024/10/22

営業は人と会話をする仕事です。法人営業であれ個人営業であれ、打ち合わせや商談を行い、コミュニケーションをとりながら受注に向けて動いていきます。

  • ラポール
  • ヒアリング
  • プレゼン
  • クロージング

こういった営業のステップを聞いたことはあるでしょうか。

お客様との関係を深めていくに当たって、この基本プロセスを1つずつ進めていくことが営業においては重要になります。営業のテクニックを使うためにも、コミュニケーションステップを理解しておくことは必須です。

そこで今回は、商談における流れ、ステップについて解説させていただきます。最後までお付き合いいただけると嬉しいです!

目次

営業はコミュニケーションである

営業パーソンには色んなタイプの人がいます。

  • 説明タイプ(商品やサービス中心のコミュニケーション)
  • 御用聞きタイプ(相手の要望やオーダーを聞き、対応するコミュニケーション)
  • 奉仕タイプ(相手のお役立ちやお手伝いを中心に距離を近づけていく)
  • 親密タイプ(相手との関係づくりを重視する)
  • キャラタイプ(自身のキャラクターや面白さで勝負するタイプ)
  • 行動量タイプ(量で稼ぐ)
  • 分析タイプ(相手の課題や自身の状況を分析し、作戦を練ってから営業する)
  • 情熱タイプ(熱量で相手を動かそうとする)
  • 提案タイプ(相手の課題を整理し、提案内容で勝負する)
  • 先生タイプ(相手へのアドバイスを中心に関係を強化する)
  • 共創タイプ(お客様と一緒に企画から運用まで作り出す)

商材や環境によってもタイプは変わりますし、正解不正解はありません。最近は「御用聞き営業はだめ」なんて言葉も聞きますが、御用を聞くこと自体が悪いわけではないです。ただ、ここで重要になるのが、「お客様はどのタイプの営業を求めているのか」ということです。これが本質的な顧客思考になります。

良い営業をするためには相手の存在が不可欠です。営業も商談も相手がいて初めてコミュニケーションが存在します。営業における成果とは、「営業パーソン・お客様・環境(商品やお客様周りの状況)」この3つが揃う必要があるのです。

経済学者のピーター・ドラッカーは、「コミュニケーションを成立させるのは受け手である」と語りました。聞き手も全ての情報を聞いているとは限らないからです。人は興味を持っていたり、アンテナをはっている、知覚できるものしか知覚しません。また、人は期待しているものだけを知覚します。営業の成立はコミュニケーションの成立の先にある点をおさえておく必要があります。

利益の定義

事業はボランティアではありません。利益を生み出していく必要があります。

利益=売上-コスト

この式で考えると、利益を生む方法は売上を上げるか、コストを削るかのどちらかです。ちなみにコストを上げることでそれ以上に売上が上がることもあるため、コストが上がること自体は悪ではありません。コストを削ることによって売上が下がるなら、それは単なる事業規模の縮小になります。一時的なものであればともかく、事業規模の縮小が続いてしまうなら、その事業はどんどん先細っていってしまうという意識は常にもつ必要があると言えるでしょう。

事業規模に関する数字は人が企業を信頼するかどうかの分かりやすい指標になります。従業員数や資本金の額から判断されることも往々にしてあることもあわせておさえておくべきです。

売上UPは選択肢とリスクの増加である

売上が上がればできること、つまり選択肢が増えるのはメリットです。ただ一方で、1社のお客様からより多くの金額をいただくようになるでしょう。金額が上がればお客様からの期待値も高いものになるという点を忘れてはいけません。今まで許されていたミスが許されなくなることも増えます。また、多くのお客様から受注をいただいたということは、多くのお客様と「契約=約束」をしたということ。自身が対応する工数も増えます。

売上を伸ばしたいと思った時に、顧客単価を上げたいのか、受注数を上げたいのかといった方向性を明確にしておくことは重要です。

売上=販売数×単価×リピート数

この売上の算出式を考えると、売上を伸ばす方向性はこの3つのどれかしかないということができます。この方向性によって、新規開拓営業に注力するのか、それとも既存顧客に注力するのかも変わってくるのです。

営業で利益を安定させるためには、売上を伸ばし、かつ労力(コスト)を最小にしていく動きが必要になります。この視点で見ると、売上の創出と「成長」を確保していく動き、両方がセットであるべきです。

営業の基本ステップ:ラポール

ラポールは営業活動において一番最初に行うステップです。ラポールには以下の2つのステップが含まれます。

  • 営業理解=自分自身のことをお客様に知ってもらう
  • 関係構築=もっと自分と関わりたいという気持ちを持ってもらう

この2つはもう少し細かく分配することが可能です。

 

ラポールの目的はお互いが「本音で話せる」ようになることです。仲良くなることはラポールの本来の目的ではありません。お客様が本音を営業に対して話し、営業の話をお客様が真剣に聞いてくれるようにすることができれば、理想のラポールができたと言えるでしょう。

逆に言えば、このラポールが上手くいかなければ、このあとのヒアリングは機能しません。なぜなら、「この人怪しいな」と不信感を抱いている相手に対して、人は本音や実情をはなさないからです。事実を隠されている状態で、相手の役に立つことはほぼ不可能だと言えます。こちらがどんなに熱心に考えてきたプレゼンであっても、相手がこちらのことを信じていないなら何を話しても信じてもらえないでしょう。

つまり、営業は全て「関係構築」ありきであると言うことができます。更に近年、関係構築の重要性はあがっています。これは、一部の人によって「営業=怪しい」という印象が根付いてしまったことが理由です。押し売りであったり、はたまた詐欺であったりと、被害者になってしまうコミュニケーションが横行しているため、お客様は誰であれまず警戒心を持つようになってしまったのです。実際自分の携帯電話に知らない番号から電話がかかってくれば、警戒するのが当たり前なはず。電話にでずに、その番号をインターネットで検索してどこからの電話か確認する人も多いのではないでしょうか。

だからこそ、まずお客様との関係性を強固なものにしていくことが必要になります。そこで行うべきなのが、上記の図の流れです。

ここでのポイントは、合意の数を増やすこと。こまめに相手からOKをいただくことで、お互いの認識のすれ違いをなくすことができます。

ラポールのよくある勘違い

ラポールはお客様と関係を築くことですが、その中でいくつか勘違いポイントが存在します。

  1. 雑談をしなければならない
  2. アイスブレイクをしなければならない
  3. 仲良くならなければならない

関係を築く=雑談をすることである、と考えてしまう営業は一定数います。ただこれはそうではありません。お客様は初対面の人と雑談をしたり、打ち解けたり、仲良くなりたいと思っているわけではないからです。お客様は自分の課題や困りごとを解決したいがために営業にわざわざ会っています。

新型コロナウィルスの影響により、人に会う事自体への抵抗感が強くなった時代です。つまり、会うことによる価値が高くなっていると言えます。「わざわざ」会ってるんだから、この時間で「価値がある会話だったな」とならなければ、お客様は営業に興味を抱かなくなってしまいます。意味のある情報を持ち帰れなければ、「貴重な時間使って何やってたんだ」と上司からお客様が怒られてしまう。そんな時代になっているのです。

正しいラポールの捉え方

以上のことを踏まえて、現代ではラポールはこのように捉えておくべきです。

    1. 営業活動全てがラポールである
    2. 第0印象を前提としたコミュニケーション
    3. ビジネスパートナーであれ

    現代ではインターネット上に広告や口コミが数多く存在します。つまり、出会う前からその商品や企業にある程度の印象、つまり第0印象を抱いている場合がほとんどです。これによって、合う前から営業に対して先入観を自然と持つようになります。この前提を忘れてはいけません。

    また、仲良くなる居心地の良さを求めるのではなく、ビジネスパートナーであるべきです。ラポールを意識しすぎて、お客様にとって耳の痛い話をできない人がいます。ただその耳の痛い部分を解決していくのが営業です。ビジネスパートナーとして、関係を前進させていく意識を持つことが重要になります。

    ラポールは「不安を払拭していく」ことだと言いかえることができます。初対面の営業と話すとき、人は3つの不安を抱えていることがほとんどです。

    これらを順番に払拭していくのがラポールです。この点を意識していただきたいと思います。

    商談の入り口を間違えないコツ

    ラポールは商談の最初におこなうものですが、この入り口を間違えてしまうとお客様の心は離れていきます。

    この入り口とは何か。

    • お客様との関係性を明示する
    • 相手のアクションを言語化する
    • 相手の期待を予測する
    • 相手の期待を確認する
    • 自分に何ができるか、どんな話をしたいか明示する
    • よい時間にしたい気持ちを言葉と態度でしっかり示す

    「ウェビナーに参加してもらった」「何度か会ったことがある」どのような接点がこれまで会ったのか、それをまずは伝えるようにしましょう。なぜなら、相手が接点をおぼえていない場合も数多くあるからです。「すみません、今日何の話でしたっけ」となることもよくある話です。また、「資料をダウンロードしてくれた」「メールを返信してくれた」相手が何かしらアクションをとってくれているがために商談につながったはず。そのことにお礼を伝えることも、お客様との関係構築に役立ちます。

    それらを踏まえて、相手は自分に何を求めているのか、期待を予測・確認するようにしましょう。何を求められているのかすり合わせることで、その後のコミュニケーションが円滑になります。そして自分にできることを明らかにした上で、よい時間にしたいという気持ちを相手に伝えましょう。

    これらを行うことで、相手は不快感やストレスを感じずにコミュニケーションをとることが可能です。

    ラポールにおける自己紹介

    自己紹介と言っても、自身の趣味や人となりを伝えるわけではありません。営業における自己紹介とは、「自己開示」を含めたものを指します。

    自分の考えや、相手に対する感想や熱量を伝えていくことがポイントです。この段階では何ができるかという点も伝えるべきですが、それよりも自分はこの相手に何をしたいと思っているのか、ということを伝えるほうが優先度が高いといえます。自分のことをただ知ってもらえば良いというのではなく、相手にとって自分は必要な存在だと認知してもらう必要があるからです。そのためには課題解決に向けて何をできるかということ以上に、「どれくらい熱心に取り組んでくれるのか」という点が必須になります。

    心理学的な背景として、「ザイオンス効果」というものがあります。これはぜひ自己紹介で活用していただきたい効果です。

    ザイオンス効果は大きく3つ。

    1. 知らない人には攻撃的、冷淡な対応をする
    2. 会えば会うほど好意を持つようになる
    3. 相手の人間的な側面を知ると好意が増す

    これは自己紹介にうってつけの性質です。つまり、「知ってもらう」アプローチをしていくことが重要になるのです。まず自分を知ってもらい、繰り返し会って、そこから人間的な側面を伝えていく意識が必要になります。人間的な側面とは何か。プライベートな話も含まれますが、ここでは「自ら考えていること・思っていること」という意思の部分になります。

    また、返報性の原理という人間の性質も活用することが可能です。返報性の原理とは、

    1. 好意の返報性=相手から何かしらの好意を受けた時にはお返しをしたくなる原理
    2. 譲渡の返報性=相手が何かを譲ってくれたとき、次は自分が譲ろうと思う原理
    3. 自己開示の返報性=相手が本心を開示すると、自分も本心で語りやすくなる原理

    これらの性質のことです。基本的に営業パーソンが持つべきなのは、「自分がしてほしいことはまず自分が相手に行う」という点だと言えるでしょう。自己紹介をおろそかにしてしまえば、相手も自分のことを話してくれることはないのです。

    営業の基本ステップ:ヒアリング

    続いてはヒアリング。

    ヒアリングにおいて重要な点は、相手の言葉の背景を掴むことです。

    ヒアリングのよくある勘違い

    ヒアリングとはお客様の状況や考えについて聞くこと。それ自体は間違いではありませんが、ヒアリングについて勘違いをしてしまっている人は一定数います。

    1. とにかく質問をする時間である
    2. 相手から答えを教えてもらう
    3. 売るための情報収集タイム

    こういった捉え方をしてしまっていると、残念ながら売ることは難しいです。質問意識が強すぎると、相手との会話が0になり、まるで詰問しているかのような印象を相手は抱いてしまいます。また、売るための切り口を探すことに集中してしまうと、結果的に相手の取り組みを批判することになり、相手はネガティブな感情を持ってしまうでしょう。

    正しいヒアリングのあり方

    本来ヒアリングとは以下の点を意識すべきものです。

    1. 営業活動全てがヒアリングである
    2. ヒアリングは質問ではなく「会話」
    3. ヒアリングのゴールは課題の合意

    ラポールでも同様のことをお伝えしましたが、相手が話してくれたこと=ヒアリングです。その情報を逃さず、会話の中で相手の課題を一緒に見つけていくことが重要になります。そしてヒアリングのゴールは自分と相手の課題への認識を合わせることです。「今解決したい課題はこれ」と、双方が同じことを言えるようにしていくことがヒアリングの最終目標になります。

    戦略的に「きく」を使い分ける

    ヒアリングにおいて活用できる話の聞き方は4つ。これらを使い分けていくことが重要です。

    • 聞く=意識・無意識関係なく音が入ってくる
    • 聴く=意識的に聞く姿勢を持って相手の話に耳を傾ける
    • 訊く=相手に尋ね、回答をもらう
    • 効く=会話や質問に関係なく効果がでる

    特に営業において使わなければならないのは「聴く」「訊く」「効く」の3つ。おさえておきたいポイントです。

    繰り返しですが、ヒアリングは聞き出すのではなく、会話の中で相手と合意をとり、共通認識を生み出す時間です。この点を忘れないようにしましょう。

    「きく」力を高める6つのコツ

    この前提を踏まえて、具体的なヒアリングのテクニックを6つご紹介します。

    1. 前置きの言葉を活用し、気持ちを動かす
    2. 自己開示を行い、相手との距離感を縮め、ハードルを下げる
    3. 深掘・拡散・収束で根拠のある情報を提供する
    4. 考える材料を提示し、意見をもらう
    5. オープン・クローズドクエスチョンを活用する
    6. タイミング・時間の使い方を意識する

    御用聞きを求めているお客様であれば、しっかり相手が求めている成果のみを納品するスキルは重要です。ただ、今後さらに関係性を発展させていきたい、顧客単価をあげたいと考えたとき、御用聞きだけでは通用しません。自社の商材に関する知識や成功事例を集め、まるでコンサルタントのように相手に課題を「気づかせる」ことが求められるのです。商品の提案だけでなく、課題を提案し、「確かにこのままだと良くないね」という気づきを与えられるようにすることが必要になります。

    課題を提案する疑似コンサルティングを行うために必要なのは事例です。数多くの事例を知っておくことによって、「こうなったら成功」「こうしたら失敗」というパターンを掴んでおくことが、コンサルティングの実現確率をあげる最も近道な方法です。

    前置きの言葉を活用&自己開示を行う

    前置きの言葉を活用と述べましたが、実際なんと言われたら相談がしやすくなるのでしょうか。例えば、

    「ちょっと相談乗ってくれる?」

    この言葉を言われたらどう感じますか?相手との関係性によって変わってくるのではないでしょうか。彼氏や彼女、夫や妻などの親密な関係性であれば心配になって話を聞くと思います。苦手な人から言われたら「面倒くさい」と感じてしまうでしょうし、上司から言われたなら「怒られるのかな」と身構えてしまう人も多いはずです。

    ただこれは裏を返せば、相手への印象によって同じ言葉でも受け取り方が変わってくるということ。印象をよくするために効果的なのが前置きの言葉です。

     

    ポイントは、「ハードルを下げ、相手にメリットを感じさせる」ということ。上の図のような言葉を使うのはそのために有効な手段です。

    また、依頼をするときは感情と理由をセットにして行うようにしましょう。この効果は2つ。1つは人は感情で動く生き物であるからです。もう1つは、理由づけすることにより「カチッサー効果」が期待できるからです。

    カチッサー効果とは、心理学の性質を指します。たとえ理由がどんなものであっても、理由がないお願いと理由があるお願いでは1.5倍理由があるお願いのほうが承諾率が高いという実験結果が出ていることからも分かるように、人は理由があるとお願いを承諾しやすいのです。さらに、理由を話すことで自己開示にも繋がります。返報性の原理を活用して、こちらが理由を話せば相手も理由を返してくれやすくなるという点をぜひ意識しましょう。

    深掘・拡散・収束で根拠のある情報を取得する

    質問の使い分けについてです。

    • 深掘る質問=背景や理由を確認する質問。相手がなぜそう考えているのか要因を聞いてみる
    • 広げる質問=違う視点で考えてみる。他の要因がないか聞いてみる
    • 整理する質問=聞いた内容をまとめ、その内容で間違いないか整理する質問。課題や悩みの優先順位を整理する

    これらを使い分け、繰り返していくことが精度の高いヒアリングをするためには重要になります。

    相手に考える材料を提示する

    相手が質問に答えやすい状況を作るために必要な部分です。相手に0ベースの回答を求めても、回答の品質が落ちたり、そもそも回答ができないケースが起こります。

    例えば、いきなり「幸せって何ですか?」と聞かれるのと、「こないだ私の友達が甘いものを食べるときが一番幸せって言ってたんですよね。ちなみに〇〇さんにとって幸せって何ですか?」と聞かれるのとでは、後者の方が答えやすいのではないでしょうか。なぜなら、先に回答例を伝えることによって回答の方向性を定めているからです。ふわっとした質問より、具体的な質問の方が答えやすいですよね。

    つまり答えてもらいやすい質問というのは、質問というより「回答例に対するフィードバック」と定義できます。「自分だったらこうする」「自分だったらこうだね」という回答例にそった意見をもらうことが、考える材料を提示するということなのです。

    オープン・クローズドクエスチョンの使い分け

    • オープンクエスチョン=回答の範囲を制限しない質問(どう思いますか?いかがですか?)
    • クローズドクエスチョン=回答の範囲を制限する質問(AとBだったらどっちがいいですか?)

    意見を聞きたいときはオープンクエスチョン。相手に選んで欲しいときはクローズドクエスチョン。この使い分けがテクニックになります。例えば、最初にクローズドクエスチョンで相手に選んでもらい、その後オープンクエスチョンで選んだ理由を深掘りして聞いていく。こういった流れにすると、相手の考えていることを聞きやすくなります。

    この2つの質問の特性は以下の図にあらわしています。これを踏まえて、使い分けしていくようにしましょう。

    タイミング・時間の使い方を意識する

    回答には答えやすい順番が存在します。

    1. 現在の質問=今の考えや思っていること
    2. 過去の質問=既にあるものや過去の事象について
    3. 未来の質問=これからやりたいこと・起きるであろうこと

    面接などでもこの順番で質問している企業は多いです。この順番には、心理的安全性を作り出す効果があります。

    人は、

    • 無知
    • 無能
    • 邪魔
    • ネガティブ

    こう思われるかもしれないと警戒していると、本音で回答をしなくなる傾向があります。この不安をなくしていくことが、ヒアリングを行うために重要な点です。また、同じ質問であっても時期を変えたり、回答例や表現の仕方を変えると答えも変わります。相手が答えやすくなるような場を提供する意識が重要なのです。

    営業の基本ステップ:プレゼン

    続いてはプレゼン。プレゼンもいくつかの工程に分類することが可能です。

    意外とおざなりになりがちなのが再合意形成。この再合意形成とは、先程あげた「整理する質問」のことです。営業が持つ目的・理想・課題の認識に対して「YES」がもらえていないにも関わらずプレゼンをしてしまうと、商品の説明がお客様が求めているものとずれたものになってしまいます。

    プレゼンのよくある勘違い

    プレゼンにも勘違いポイントがあります。

    1. プレゼンは営業が話す番である
    2. プレゼン=商品説明の時間である
    3. プレゼン=デモンストレーションタイム

    プレゼンは、自分が持っている解決策と、相手が求めている解決策・成果の認識や優先順位を相談して合わせていく時間です。このことを忘れてはいけません

    正しいプレゼンのあり方

    1. ベネフィットの合意が最優先
    2. プレゼンの肝はフィードバック
    3. 納得感の醸成を最優先に

    この3つができると、双方に取ってメリットのある、良いプレゼンになります。「どんな結果を、いつまでに、どんな負担で」の認識がずれていれば、単なる商品説明でしかありませんし、仮に受注になったとしても後にクレームになる確率が高まります。また、自分が伝えた情報に対してどんな感想をいだくか、もっとどうなったら理想かというフィードバックをもらうことで、お客様がより満足する提案につなげることができます。そして、最終的に人は感情で判断をします。「それだったらいいか」などと、納得してもらうことが一番のポイントです。

    プレゼン前の認識合わせ

    再合意形成しておくべき具体的なポイントをご紹介します。

    これらのポイントに共通認識ができているかどうかは非常に重要です。さらに言えば、これらの共通認識がしっかりできている状態で、「弊社であれば実現できます、やらせてください」と言えば、商品の資料を見せずとも受注になるケースが多々あります。実際私も、2割くらいの確率でこのケースに当たります。それだけ、認識合わせに時間を割くことが必要だと言えるでしょう。

    この課題や理想に対する認識が共通のものになり、その上で営業が「できる」と言い切れているか。これが重要になります。

    プレゼンのコツ:主語を間違えない

    ここまでできてから初めてプレゼンが効果を発揮します。

    その上で、主語を間違えないようにすることはとても重要です。使うべき主語は「〇〇様(お客様)」であり、「弊社」「商品」にすべきではありません。お客様の立場から、何がメリットとして得られるのか。ここを伝える意識が必須になります。

    そして売れる営業はこの主語に付け加えて、「私は」という主語を出します。「私はあなたに関わって、一緒にこうしていきたい」という思いの丈を伝えることができれば、決意表明になり、相手も真摯に受け止めてくれるようになるのです。

    プレゼンのコツ:記憶に残る

    現代の営業においてプレゼンの際に求められるのは、「記憶に残る」ということです。なぜなら、現代はインターネットが普及しており、誰もが容易に比較検討をできるからです。

    「営業はチラシや広告を作るのではなく、ラブレターを作るべき」だと私は思っています。営業のプレゼンは必ず相手に伝わるように伝える必要があります。記憶に残るメッセージを作るためには4つのステップを踏んでいくことが重要です。

    1. ターゲットの明確化
    2. 理想ゴールの設定
    3. 感情シュミレーション
    4. ECRSライティング

    まず自分が誰にメッセージを届けたいか明確にし、その人が普段から触れている情報を整理します。そしてメッセージを受け取った相手にどうなって欲しいのか、何をして欲しいのかということを明確にします。このゴールから逆算をして、自分が伝えるメッセージを読んで相手はどんな感情を抱くかを考えます。最後に、そのまま文章を届けるのではなく、ときには削りながら無駄のない文章にブラッシュアップしていくことが重要です。

    ECRSライティングとは、ライティングの改善4原則のこと。

    • Eliminate(排除)
    • Combine(結合)
    • Rearrange(交換)
    • Simplify(簡素化)

    この記事は情報量が多い記事だと思います。これはブログという性質上、いつでも見返せるというメリットがあるからできることです。対面でのプレゼンの場合、あとで見返すことはできませんし、Zoomであっても録画を取らない場合が多いでしょう。一度で全て覚えてもらうことは不可能です。このことを考えた時に、どれだけ伝える内容をシンプルにわかりやすくできるかを基準にすることは重要です。

    訴求力の上げ方

    0ベースのメッセージは実は意外と記憶に残りづらいものです。無理して新しさにこだわる必要はありません。

    メッセージの訴求力を上げるために重要なのは、

    インパクト×回数

    この2つです。同じものであっても、定義は人によって変わります。りんごをただの果物という人もいれば、健康に良い食べ物という人もいるでしょう。つまり、言い換えを駆使して複数のメッセージで同じものを伝えることによって、相手に伝わりやすくなるのです。

    訴求力をあげる具体的なライティングテクニックもいくつかご紹介します。画像にまとめましたので、あわせてご覧ください。

     

    営業の基本プロセス:クロージング

    4つ目のステップはクロージングです。受注に向けて、お客様に決断してもらう。この行動を引き出すのがクロージングの目的になります。

    このクロージングの落とし穴。それは、「相手に決断できるだけの材料を提供できていない」ということです。シンプルに言い換えるなら、「コスパ」を伝えていないのです。

    この金額を支払うことによって、あなたはこのような成果が得られます。必要ですか?」

    これがクロージングのあるべき姿です。逆に言えば、コスパがわからない状態だと人は判断ができないのです。さらに言えば、決断には手間がかかります。人は1日に35,000回決断をしていると言われています。ただでさえ決断回数が多いのに、その決断を他人に促されるのは面倒でしかないのです。つまり、営業は督促するのではなく、相談役である必要があります。

    相談役であることで、相手が決断するストレスを軽減していくことができます。クロージングで最もやらなければいけないことは、「悩んでいる相手の背中を押す」ことです。相手が決断しやすいように背中を押す。これが受注前における営業の最後の役割です。

    クロージングのコツ14選

    最後に、クロージングのコツをお伝えさせてください。

    クロージングのコツ①自分がされて嫌なことをしない

    自分がされて嫌なことはしないこと。いらないと言っているのに押し売りするのは代表格だと思います。その他にも、

    • 「いかがですか?」と決断の督促だけをする
    • 不安や懸念点を放置したままにする
    • しっかりと言い切らず、曖昧にする

    こういった相手を突き放したコミュニケーションは行うべきではありません。

    クロージングのコツ②情に訴えない

    人は感情で動く生き物です。そのため、感情訴求は有効になります。ただ、感情だけになってはいけません。感情とともに、根拠のある理屈を伝えることが必須です。「この理由があって、この商材はあなたの役に立ちます」ここをはっきりと言い切れるようにしましょう。

    クロージングのコツ③お客様の声を鵜呑みにしない

    「予算がなくて」「今繁忙期で」

    こういった声はよく聞くと思います。ただ、わざわざ商談に参加してくれて、わざわざ時間をとって会話をしてくれているのにも関わらずクロージングのときになってこの声がでてしまうのは、単に「優先順位が低い」だけだと言うことができます。

    • なぜこの商材を
    • なぜあなたに
    • なぜ今のタイミングで

    ここをしっかり言い切れなければ、お客様の商材に対する優先順位は上がりません。言い切れないときは何かの理由が足りていない状態です。改めて商材とお客様に向き合う必要があります。

    クロージングのコツ④買う気があるかどうかを確認する

    ポイントは繰り返し確認すること。例えば、

    1. 打ち合わせ開始直後「今日は〇〇さんのお役に立てるネタを持ってきたので、必要だと思ったら契約してください!」
    2. ニーズが聞けた後「それは深刻ですね。ただ朗報なのは、その問題私が過去に担当させてもらった会社さんと状況が似ているので、お役に立てます!」
    3. 深掘りした後「お話を聞けば聞くほど、私にやらせて欲しいです!」
    4. 提案前「色々お話聞かせていただいたので、少し私の方からもご提案させてください。私の提案がいいと思ってもらえたら、ぜひ使ってください!」
    5. 提案後「ぜひよろしくお願いします!」

    まず「決断の場」であることを相手に自覚してもらうのが第1の目的です。人は決断をしたがらない性質を持ちます。まして大きな金額が動くほど、先送りにしたがるのです。ただそれではいつまでも誰も決断をしません。だからこそ、決断を先送りにしないようにメッセージを繰り返し伝えていくことが重要になります。

    クロージングのコツ⑤曖昧にしない

    先程の買う気があるかどうかを確認する部分と密接に関わってきます。曖昧にせず、ここははっきりと確認するようにしましょう。

    クロージングのコツ⑥最初は大枠、後半は順を追う

    繰り返しですが営業は合意獲得活動です。BANT情報をヒアリングした中で、何が足りないのか、何が懸念点なのかしっかり聞くことが重要です。最初に大枠をヒアリングした後に、足りない部分を後から聞いていくこと。「とりあえず検討します」「保留で」とお客様が決断から逃げてしまうことのないようにしていく意識を持つようにしましょう。

    保留にすることによってお客様が幸せになるのか。ここをしっかりと向き合っていく必要があります。

    クロージングのコツ⑦時系列を分ける

    「今は難しい」「今回は他社さんにお願いすることにしました」

    こういう場面はよくあると思います。時系列を分けるというのは、この「今は」という点に着目するということです。現時点では縁がなかったかもしれません。ただ、将来的な関わりが持てる可能性は多分にあります。失注自体は悪ではありません。失注したとしても、その相手は将来の見込み客です。また後々縁をいただく機会がでてくる可能性もあることをおさえておきましょう。

    クロージングのコツ⑧テストクロージングをかけてみる

    いきなりクロージングするのではなく、営業トークの途中で購入する意思がどの程度あるかどうか確認するアプローチ。これをテストクロージングといいます。

    テストクロージングで有効なのが「If話法」です。

    • Who=もし使うとしたら誰?
    • When=もし使うとしたらいつから?
    • Where=もし使うとしたらどの場面で?
    • What=もし使うとしたらどんな成果が欲しい?
    • Why=もし使うとしたら1番解決したい問題(使う理由)は何?
    • How=もし使うとしたらどうやって使う?

    この話法によって、考える視点を変えて会話をすることができます。相手の不安点や懸念点は1つとは限りません。その不安点を引き出し、整理するのがこの話法です。ぜひ活用することをおすすめします。

    クロージングのコツ⑨いきなり一択のクロージングをしない

    「やるorやらない」のみのクロージングにしてしまうと、「やらない」と言われる可能性は高くなります。相手の断りの言葉を営業が引き出してしまっているのです。

    「AパターンとBパターンとCパターンであれば、もし使うとしたらどれが一番ご要望に近いですか」

    先程のIf話法も活用しながら、やる前提で提案をしていくことで、「それだったらAかな」などと相手の意見を引き出すことが容易になります。

    クロージングのコツ⑩急かさない・督促をしない

    急かす・督促する=押し売りです。

    押し売りせず相手の決断を促すには、相手の必要時期を明確にすることがポイントになります。「3ヶ月後にこうしていたい」などと時期を明確にした状態で要望を聞くようにしましょう。この時期をもとに逆算した提案をすることが可能です。

    私が代表を務める営業ハックは営業支援の会社ですが、例えば「3ヶ月後に受注100件欲しい」などと言われることがあります。そうなると、希望の時期に成果を出すためには今すぐに動き出す必要があります。商材の理解や営業における勝ちパターンの創出に時間を要するからです。

    「3ヶ月後にこうなっていたい」「半年後にこうしていたい」ということを聞き出すことで、動き出し・決断の期限を定めることができます。

    「その時期に〇〇さんの理想に到達するには、今すぐに決断して動いていく必要があります」

    この言葉を根拠とともに言われたら、相手は先送りしようとはしないはずです。相手の決断を促すために、時期を確認しておくことを意識いただきたいと思います。

    クロージングのコツ⑪ネガティブな決めつけをしない

    • 難しいですよね
    • 厳しいですよね
    • 高いですよね

    お客様が言ってないにも関わらず、こちらでこの言葉を言わないようにしましょう。営業がそれを言ってしまったら、「確かに高いよね」と会話がネガティブな方に言ってしまうのは必然です。なぜなら、意見に同調したほうが人間はストレスを感じないからです。とりあえず同調しておけば会話は楽になるという人の心理を忘れてはいけません。

    自らお客様が断る理由を提示しないようにすること。この点も重要な部分です。

    クロージングのコツ⑫自信を持って話す

    自信を持って話すようにしましょう。

    • たぶん
    • できたら
    • よろしかったら
    • だと思います

    こういった自信のない話し方は相手に不信感を与えます。売る人が自信を持っておすすめできない商材を買いたいと思う人がどれだけいるでしょうか。はっきり言い切って、堂々と勧められるように話すことが必要です。

    クロージングのコツ⑬買ってもらえる前提で話す

    自信を持って話すことと関わる部分です。

    先に活用前提で相談をすることで、相手は具体的なイメージが湧きやすくなります。

    • ご契約いただいた場合、今後はこのような流れになります
    • もしご購入いただいた際、どのオプションをご希望されますか?
    • 決裁後はこのようなサポートが受けられます

    このような具体的にイメージできる話を、If話法も交えながら活用していきましょう。

    クロージングのコツ⑭今買うメリットを示す

    「なぜ今買うべきか」このメリットを相手に示すことは効果的です。

    • 今相手に必要な理由
    • キャンペーンなどの「限定」
    • 「あなただからこそ役に立ちたい」という感情訴求による刺激

    こういったことをはっきりと相手に伝えていくようにしていきましょう。

    営業の基本ステップ

    ここまで、ラポールからクロージングまでそれぞれのステップについてまとめてきました。これらのステップを細分化して考えることで、自分がどの部分を苦手としているのか、どこをもっと改善すれば成果が出るのかということが見えてきます。

    1つ注意点があります。プレゼンやクロージングの2つはその前のラポールとヒアリングがしっかりできてこそ効果を発揮するということ。現代は比較検討が容易にでき、選択肢が多い時代です。「この人が言うなら大丈夫」と言ってもらえるような関係性を築いていくことがポイントになります。

    長文にお付き合いいただきありがとうございます!今後の営業戦略にお役立ちできれば嬉しいです!

    ▼各ステップを更に詳細に解説した記事もあります!ぜひこちらもご覧ください!

    【初回商談解説】受注に導くラポールとヒアリングのコツ

    【初回商談攻略】受注に導くプレゼン・クロージングのコツ

    この記事の監修者

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    弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。

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