今運営している営業4.0実践ゼミ、通称「営業ゼミ」に参加してくれているメンバーから、こんな質問をもらいました。
売上ノルマの決定方法についてお尋ねします。現状としましては過去の実績に基づいた情報により、ノルマが決められています(前年実績10%UP)担当地域によっては実績格差も顕著に表れていますこの10%UPはよく聞く数字ですが何か根拠があるのでしょうか?
実は他にも営業ノルマや目標に苦しんでいる人は多いんですよね。。。
キツい営業ノルマに苦しむ営業マン20人にインタビューしてわかった営業のノルマの実態
また、別件で営業の個別相談で、営業目標の立て方やPDCAの回し方をアドバイスしました。今回はその時のことをお伝えしたいと思います。
目次
【大前提】営業目標で営業の動きは良くも悪くも決まってしまう
営業目標やノルマを設定すると、人はその数字を達成するために動きます。現場の営業職は特に、一度決められた目標を与えられると、一定期間は(自分が頑張ろうと思える期間)そこに向かって頑張ってしまうのです。
頑張って成果が出るのであれば良いのですが、頑張っても成果につながらない目標・ノルマを課せられてしまっていることも少なくありません。
例えば、私が昔いた会社では、1週間の目標が
- テレアポ目標:20件
- 訪問目標:15件
という目標が課せられていました。この数字は1000人を超える営業職の中で新規営業だけに特化した新規開拓チームのメンバー20人に共通した目標でした。しかし、クロージングが得意なメンバーもいれば、既存顧客との関係をすでに持っているメンバー、チームに異動したばかり見込み客が0のメンバーも全員が同じ目標で動いていました。
結果、とりあえず20件のアポをもらうこと、15件訪問することが目的になっているメンバーがちらほらおり、目標は達成しているけど、成果は出ていないというメンバーがいました。
営業目標・ノルマのあるべき姿は、プロセス目標を達成したら、受注件数や受注金額などの最終目標が自然と達成されているというものです。
逆にこうなっていない目標・ノルマを課されてしまえば、上述のメンバーのように頑張っているのに成果が出ないで苦しむという悲劇に陥ってしまうのです。
▼営業目標の立て方はこちらもチェック
頑張っているのに成果が出ない。そんな営業から脱する正しい目標を持つために必要な下準備と懐疑心
無駄打ちしない・疲弊しない・成果につながる正しいKPI設定に必要なこと
営業目標の設定はリサーチor過去実績ありき
営業目標・ノルマは最初からできないとわかっている数値を並べても何の意味もありません。
「目標は高ければ高いほど良い」という考えが、日本には昔からありますが、高すぎる目標は何をしたら良いのかもイメージがつかない場合も多いのです。例えば、「日本一のサービスを作る」と言われても、具体的にイメージできる人は、そういった経験を積んでいたり、それに近いポジションにいた人です。
これまで数十人の会社で、営業成績が真ん中ぐらいの人が、いきなり「日本一の営業マンになれ」と言われてもどうしたら良いかわからない人が圧倒的に多いでしょう。それであれば、「社内でトップになる」とか「上司の○○さんよりも成果を出す」という目標の方が、具体的に動き出せるはずです。
つまり、正しい目標・ノルマが設定できれば、自然と良い行動・アクションアイテムが出てくるということです。
そこでのポイントは、目標・ノルマ設定は過去の結果orリサーチの結果に基づいて決めるべしということです。
過去にすでに実施したことがある分野や営業であれば、過去の実績をもとに、営業目標・ノルマを設定させましょう。私が目標を立てる時は、前年比・前月比の伸び率をベースに目標を立てます。初めてチャレンジするものは、1ヶ月程度試験・試用期間を設けて、そこでの結果・数値をもとに目標・ノルマを設定します。
もちろん、会社・部署として必要な営業数字、すなわち売上目標はあると思います。ただ、「売上がいくら必要だからこれだけ売る」という視点だけでは、正しい目標は立てられず、結果間違った行動を引き起こしてしまうので、要注意です。
営業目標が決まったら、現状の差分を把握する
「営業目標・ノルマが決まったら、あとは頑張るだけ」では、当然ながらうまくいきません。まずやるべきことは、目標と現状の差分を把握することです。
放っておいたら=今のまま営業を続けたら、どれぐらいで着地するのかを把握することが最初のアクションです。放っておいても目標達成の見込みが立っているのであれば、そのままコツコツ頑張りましょう。放っておいたら達成できない場合は、次の施策を考える必要があります。
目標達成が今のままでできる時
目標:売上100万円
現状の見込み:120万円
この場合は、今の動きを継続すればOKです。ただ目標ギリギリの場合は、目標1.1倍〜1.2倍の達成見込みにしておくことをお勧めします。それでも余裕がある時は、次の仕込みを始めましょう。翌月、翌期、翌年に向けた種まき=見込み客作りをしておきましょう。
目標達成が今のままだと難しい時
目標:売上100万円
現状の見込み:70万円
目標との乖離:-30万円
この場合、今と同じことをやっていては、-30万円で目標未達成になってしまいます。つまり、これまでと違う動き、もしくはアクションの追加が必要になってくるのです。営業においては、まず自分の現在地を知ることは非常に大事なことです。現在地がわかったら、次はどうやってその差を埋めるかを考えるだけです。
営業目標を未達成にしているボトルネックを見つけ出す
営業目標・ノルマを未達成にしているのは、営業全般が悪いと考えるのではなく、どこかが足を引っ張っていると考えてみます。そして、一番足を引っ張っているのがどこかを洗い出すことが大切です。
営業改善でもなんでもそうなんですが、人間はそんなに器用じゃありません。1日〜1ヶ月の期間の中で改善できるKPIは多くて3つです。なので、一番の問題点=ボトルネックを見つけ、そこを徹底して改善に動くことが大切です。
ボトルネックの見つけ方
このような推移で営業活動をしていたとしましょう。
架電数 | アポ率 | 商談数 | 見積り提出率 | 見積り提出数 | 受注率 | 受注数 | 顧客単価 | 受注金額 |
1000件 | 3% | 30件 | 50% | 15件 | 20% | 3件 | 10万円 | 30万円 |
この数字が目標や先輩・上司との比較、自分の感覚の中で、どこが悪いかを把握することが大切です。
例えば、先輩は受注単価が「30万円」だったとします。そうすると、先輩は1件の受注で私と同じ受注額を稼いでいることになります。そう考えると、この営業プロセスのボトルネックは「顧客単価」となり、顧客単価をあげる施策を考えることがポイントになります。
自分の営業が正しく推移しているかどうかを判断するためには、比較材料が必要です。ベースにすべきは、すでに営業を行なっている先輩や上司の数字をチェックし、自分と比較することです。そういったサンプルになりうる人がいない際は業界の平均や他商材等での実績をまずはベースに組み立ててみましょう。(相談相手やサンプルがなければ、私はこれまで50以上の商材で営業をしているので聞いてください)
営業目標と現状の差分をどう埋めるか、施策を徹底的に洗い出す
ボトルネックがわかったら、その問題を解決するために、これまでと違った行動をすることが求められます。そこでやるべきことは、目標達成に向けた施策を洗い出していきます。
まずは思いつくままに施策を出す
営業で成果を出すために施策をとにかく出します。ここでのポイントは、最初から効果的な、抜本的な、改革的な施策を1つ出そうとするのではなく、とにかく数を出すことが大事ということです。量が大切です。
施策の量を担保するときに私が使っているのが、オープンウインドウ64です。
メジャーリーグで活躍を続ける大谷翔平選手もやっていると言われているツールです。施策を思いつきだけでやってしまうと、自分の意識が向いているところだけにいきがちです。極端な話、昨日上司に怒られたことにばかり頭が行ってしまうということです。
ただ営業は特定の一部だけを改善しようとして、全体最適に繋がっていなければ意味がありません。なので、一旦は全体を俯瞰して、施策を出すことが重要になります。
他にも施策出しの時は、マインドマップなども効果的なツールの1つです。
施策を決める時は、改善項目と改善幅を意識する
施策を洗い出したら、その施策が「何を」「どれだけ」改善するのかを把握しましょう。
施策 | 改善項目 | 改善幅 |
トークスクリプトの見直し | アポ率 | 0.3% |
営業ツールの修正 | 見積り提出率 | 1% |
見積書書式の変更 | 受注率 | 0.5% |
お礼メールの徹底 | 受注率 | 0.1% |
このように、自分が考えた施策が営業のどこのポイントを改善に繋がっているのか、しっかりと理解することが大切です。
さらに、大事なことは自分が考えた施策が、どれだけの数字貢献をするのかも理解しましょう。やってみなければわからないというのはもちろんです。しかし、見込みでも概算で施策のインパクトを把握しておくことは、「施策の優先順位」と「施策の充足度」を把握するために必要不可欠なのです。
上記の表で、受注率の改善は「見積書の書式変更」と「お礼メールの徹底」で0.6%の改善見込みです。しかし、現状目標との乖離は1%だった場合、0.4%分改善が足りません。そればわかれば、施策が充足していないことがわかり、施策を追加しなければいけないことがわかるわけです。
施策出しは目標数値に達するまで施策を出し続ける
施策が足りているのか否か、がわかれば、やることは単純です。施策が足りるまでとにかく数多くの施策を出すことです。施策を多く出すポイントは、前にもお伝えしましたが、いきなり大きな改善ができることばかり考えないことです。
- 営業資料のフォントや文字のサイズ、写真を変える
→いきなり全てを作り変える必要はないです - トークスクリプトの話し方を変える
→トークスクリプトを作り替えなくても、できることはあります - リスト数を1000件増やす
→過去接触企業にメールを送るだけでも、これまでやっていなければ反応が違います
何が言いたいかというと、小さいことでも積み重ねれば成果に繋がるということです。
営業目標・ノルマ達成のために、施策に優先順位を決めてやりきる
施策の洗い出しが完了したら、あとは実行あるのみです。しかし、いきなり全部を実行するのは当然ながら難しいと思います。そこで優先順位を決めて、実行に移っていくわけです。
優先順位を決めるポイントは
- 目標達成までの納期
- 施策実施のしやすさ(取り掛かりから完了までの期間)
- 改善幅の大きさ
この3つをベースに考えて動きます。
改善幅が大きくても、施策の完了に10年かかるというものであれば、施策をもう少し分解して実行していくことが求められます。施策を実施するのはやることが目的ではなく、目標・ノルマを達成させることが目的なので、そこから逆算して考えるようにしましょう。
営業目標と現在の進捗の差分から達成見込みを把握する
実践したらあとはチェックし、改善するだけです。PDCAサイクルでいう、C:CheckとA:Actionの部分です。
▼PDCAについて詳しくはこちら
本当に成果を出したい人がやるべきPDCAサイクルの正しい使い方
やってみて放置してしまうのが一番NGパターンです。こういう人は大抵目標達成できません。実施して、施策の改善幅をチェックし、足りていれば継続する。改善幅が予想よりも小さい場合は、施策を追加したり、今行なっているものを辞めるという選択も必要になります。
営業目標・ノルマはやり方さえ間違えなければ達成できる
ステップをまとめるとこうなります。
- 営業目標をリサーチor過去実績ベースで設定する
- 現状の目標と差分を把握する
- ボトルネックを見つけ出す
- 施策を徹底的に洗い出す
- 施策に優先順位を決めてやりきる
- 営業目標と現在の進捗の差分から達成見込みを把握し、改善する
これは私のこれまでの経験からですが、正しい目標設定ができ、そこに向けて施策を洗い出し、やりきれば達成できない営業目標・ノルマはありません。達成できない場合は、この3つの何かが足りないのです。
自分が今営業目標やノルマで苦しんでいるのであれば、どこに問題があるのか、是非振り返ってください。そして、1つ1つ施策を出し、コツコツ頑張っていくのみです。私も頑張ります。頑張りましょう。
短期営業目標の達成で悩んでいる方はこちらをチェック
▼YouTubeでも発信しています。
他にも有益な情報発信を続けておりますので、見てくださいね。
(5) 正しい営業目標とアクションプランの立て方 – YouTube
この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。