この時代、営業もビジネスも非常に難しい時代です。
なぜか、現代は豊かだからです。知らないことがあればなんでもスマホが教えてくれる時代です。ちょっとしたライフハックや生活や仕事を豊かにするコツはネットに転がっていて、「ミニマリスト」と呼ばれる持ち物をできるだけ減らし、必要最小限の物だけで暮らす人もいる時代です。
それだけ買い物をすることの必要性が大きく減った現代で、営業は苦難を極めていると思います。しかし、実際問題売れる人が存在するのも事実です。そんな現代でも売れる、売れ続ける営業が持っているスキルが「課題発見力」です。
ちょっとした問題・課題であれば人は自分で調べて、必要なものがあればネットで購入する。全てがネットで完結できる時代において、営業が介在する価値は課題解決から課題発見・課題提示に移りました。問題・課題が生まれる前に予測し、予防線を張れる営業が求められる営業です。これまでは処方箋だった営業への期待が予防に変わっているので。
この課題発見型営業について、今日は解説していきたいと思います。
目次
そもそも課題発見力とは何か?
経済産業省が出している社会人基礎力の1つにこの課題発見力があります。
その中で課題発見力とは下記のように定義されています。
現状を分析し目的や課題を明らかにする力
問題と課題は別物である
まず前提として課題を発見するためには問題を認知しなければいけないということがあります。もっと言えば問題と課題は別物である、ということです。問題集とは言うけど、課題集とは言わないですよね。つまり別物なんです。
結構経験がある方もいるんじゃないかと思うんですが、私も昔上司のこのような言葉に悩まされたことがあります(特にWebマーケの営業をしていた時)。
課題と問題が混在しているね
課題と施策が混ざってるよ
課題が課題になってないよ
いや、もう問題とか課題とか施策とかなんだよとなりましたが、改めてこの違いを理解することは大事なので整理していきたいと思います。
問題の辞書的な意味はこれです。
1 解答を求める問い。試験などの問い。「数学の―を解く」「入試―」
2 批判・論争・研究などの対象となる事柄。解決すべき事柄。課題。「そんな提案は―にならない」「経済―」「食糧―」
3 困った事柄。厄介な事件。「新たな―が起きる」
4 世間が関心をよせているもの。話題。「―の議員」
引用:goo辞書
課題の辞書的な意味はこれです。
1 与える、または、与えられる題目や主題。「論文の―」「―図書」
2 解決しなければならない問題。果たすべき仕事。「公害対策は今日の大きな―である」「緊急―」
引用:goo辞書
2つ並べてもちょっとわかりづらいですね。問題と課題と施策の関係をまとめるとこのような図になります。
つまり、問題・課題・施策を整理すると
- 問題:理想と現実のギャップ(乖離)がある状態であり、困っているネガティブな状態
- 課題:問題が発生している(理想と現実のギャップを生んでいる)原因を解決するためにやるべきこと
- 施策:課題を解決するためにやるべき具体的なアクション
となります。
具体例で考えてみると、「売上を1,000万円増やしたい」という経営者がいたとしましょう。売上を1,000万円増やしたいと言うことは、見方を変えると現在は1,000万円が不足しているというネガティブな状態です。現在月の売り上げが3,000万円としたら下記のように整理できます。
理想:売上4,000万円/月
現状:売上3,000万円/月
問題:売上1,000万円/月の不足
ではなぜ売上が1,000万円不足しているのか、をここで考えます。
- 新規の売上が伸び悩んでいる
- リピート受注が少ない
- 顧客単価が低い
- 解約が増えている
などなど、会社やプロダクトによって問題は色々かと思いますが、過去との比較や競合分析、事業計画との照らし合わせをしてみると、「新規の売上が想定よりも伸びていない」ことが最大の原因となっているとしたら
理想:売上4,000万円/月
現状:売上3,000万円/月
問題:売上1,000万円/月の不足
原因:新規の売上未達
課題:新規売上UP
となります。そして、新規の売上を伸ばすために
- DMの送付数を増やす
- テレアポの架電数を増やす
- 今までやっていなかったWeb広告を行う
などなど、課題を解決するための具体的なアクションを設定していきます。今回は「DMの送付数を増やす」というアクションを行うことが決定したとしたら
理想:売上4,000万円/月
現状:売上3,000万円/月
問題:売上1,000万円/月の不足
原因:新規の売上未達
課題:新規売上UP
施策:DM送付数増
と言う形で整理ができます。
ここまで見てもらって分かる通り
課題なくして施策なし
問題なくして課題なし
理想なくして問題なし
これはしっかりと理解しなければいけないことです。
また現状をネガティブに捉える、もしくはもっとよくできると現状に満足していないという問題意識がなければ、問題が生まれないということもぜひ覚えておいてください。どんなに正しい意見・提言をしても、相手にその意識がなければ問題は絶対に生まれないのです。それが事実起こっていてもです。
そもそも問題ってどう生まれるのか?
問題は理想と現実のギャップというお話をさせていただきました。では問題にはどんな種類があるのか、ここで整理をしておきましょう。
「理想像、ありたい姿が明確になっているか」「現状把握ができているか否か」で問題が生まれてくる背景が変わってきます。営業をするにあたって、今相手はどういった認識から問題意識を持っているのかをしっかりと把握することが大切です。
なぜ人は問題・課題に気づけないのか?
傍から見れば絶対に間違っているとわかるのに、なぜか当事者は絶対に正しいと思い込んでしまっているということってありますよね?なぜ人は問題・課題に気づけないのでしょうか。その原因は2つあります。
- 人は見えている範囲、知っている範囲でしか考えられない
- 人は不都合な真実には目を瞑ることがある
これは人間がロボットではないからこそ起きる問題です。これは「バイアス」と呼ばれる作用が働いています。
人間は脳で考えますよね。ただ日々膨大な情報・データを処理し、そして決断を下す必要があります。江戸時代と比べて365倍の情報量を現代人は日々受け取っているというデータがあるように、現代人は膨大な情報処理を日々行なっています。ただそれを全て意識的に判断・決断していたら、疲弊してしまうので、勝手に決めつけてしまう傾向があるんです。これがバイアスです。
そのうちの1つに確証バイアスがあります。
「確証バイアス」とは、認知バイアスの一種で、自分にとって都合のいい情報ばかりを無意識的に集めてしまい、反証する情報を無視したり集めようとしなかったりする傾向のこと
引用:日本の人事部
つまり意識しないと見えない問題・課題があるということです。◯○シンキングがここ最近非常に増えましたが、考え方の前にまず大事なことは意識して理想や現状、問題に向き合う姿勢が大切ということです。
ここでこの意識してみる時にやって欲しいことはこれです。
- 理想と現状を再度確認する
- もっと良くできると改善意識で見る
- あえて点数をつけて、100点との差分は何かを考える
- 自分の思い込み・決めつけが何かを一度向き合ってみる
- 「もし〜だったら」という前置きをつけて、ネックになっているものを外してみる
- 外部の人の意見を一度聞いてみる
- 外部の人の意見を一旦忘れて考えてみる
- 自分の中で仮説を設定し、検証してみる
自分の見方・アプローチの仕方を変えるだけで見えてくるものがあるはずです。
課題を発見するステップ
ここまで整理してきましたが、課題発見という今日のテーマに戻って、課題解決のためのステップを整理しておきたいと思います。
- 理想像・あるべき姿設定・再把握
- 現状把握・進捗確認
- 理想と現実のギャップ発生原因分析
- 問題原因解決のための課題設定
- 課題解決施策の立案・実行
このステップで考えていくことが大切です。そしてもう一度大事なことなので言いますが、問題意識(現状に対してネガティブな意識)がなければ絶対に問題は生まれません。
課題を発見するための思考を変える取り組み方
一方でそうは言っても課題が見つけられない、自分なりにやっているけど答えが出ないという方も多いと思います。そこでやって欲しいことがこちらです。
課題発見思考①ポジショニングを変える
まずみる景色を変えることです。「社長だったらどう考えるだろう」「部長だったらどう考えるか」「競合の〜〜の営業だったらどう考えるか」「自分がお客さまだったら」と自分ではなく、誰かに憑依して考えてみることです。
ゼロベース思考という言葉がありますが、意外と0から考えるって難しいんです。思い込みを外して考えると言っても、思い込みを認識してしまっている時点でそれを意識しているので、一旦前提からアプローチを変えることがおすすめです。
視野・視座・視点の違いを使い分ける
次に意識して欲しいことは「視野・視座・視点」を変えることです。
見る範囲を変える(広げる・狭める)、見ている高さを変える(上げる・下げる)、見ているポイントをズラすことによって、違った問いが生まれてくるはずです。良質な問い・疑問が問題を見つけ出し、成果に繋がる課題の発見につながります。
考える材料の仕入れ先を変える
確証バイアスでもお伝えしたように、人間は自分に都合の良い情報を集めがちです。そこで自分の情報仕入れ先を変えることも1つのアプローチです。普段見ない雑誌やメディアを見る、海外ニュースをチェックしてみる、普段話さない人と話してみる、など、持っている情報が変われば答えが変わることは多々あります。
一度考えたものを疑う
これはクリティカルシンキング(批判的思考)と呼ばれるアプローチです。簡単に言えば、今考えているもの、思っていることを一度批判する立場をとって考えてみることです。
人は考える時、1つの結論が出るとそれに固執してしまいがちです。しかし、正しい意思決定(成功・正解確率を上げる意思決定)をするためには、複数の選択肢・回答を一度全部出し切り、比較検討することがおすすめです。
思考法一覧
問題解決、課題発見のアプローチしてはこのような思考法があると言われています。参考までに。
- 論点思考(イシュー思考):そもそも今何を考えるべきかを考える
- 論理的思考(ロジカルシンキング):体系的に情報を整理し、筋道立てて考える
- 仮説思考:現在所有している情報の中で一旦解を出す
- デザイン思考(デザインシンキング):観察を前提にアイデアを出し検証改善を重ねて答えを出す
- 批判的思考(クリティカルシンキング):現状や現在の答えを疑う
- 抽象化思考:具体的な結果や状況を抽象化して考える(共通項や転用性を考える)
- コンテキスト思考:その事実の背景(コンテキスト)を読み解いた上で考える
- アナロジー思考:これまでの経験や体験を法則化し、置き換えて考える
- 水平思考(ラテラルシンキング):前提を疑って考える
【まとめ】課題発見力の高め方
課題発見力について色々とお話をさせていただきました。ポイントをまとめると
- 課題発見にはそもそも問題意識とモチベーションが不可欠
- 問題があるから課題が生まれる
- 課題発見をするためには様々なアプローチをすることが大切
- 課題が発見できたと思っても、そこで終わらせず、他にもないかの視点でアプローチを変えてみる
この意識と視点を持つことが大切です。冒頭にお伝えしましたが、「課題発見力」は現在営業において求められる必須スキルです。課題発見力を高めて、お客様の期待を超える営業を目指しましょう。営業はプレゼンや解決策の提示ではなかなか差はつきません。
課題発見力、ヒアリング力が現在の営業における差が大きくつく部分です。ぜひこの力磨いてください。
▼テレアポの突破方法についてはこちらでも解説しています。ご参考ください。
他にも有益な情報発信を続けておりますので、見てくださいね。
この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。