最近、海外のTikTokでも流行っているキーワードに「静かな退職(quiet quitting)」があります。
私はだいぶ揉めてやめた経験もあるので(笑)、静かな退職ってどうやって会社を辞めるんだろうと思ってみたら実態は違いました。しかし、今時の考え方・働き方だなと思う点と、「あ、これ昔の私じゃん」と思ったので、会社員・フリーランス・経営者の立場を経験した自分なりの意見をしたためたいと思います。
目次
静かな退職とは?
静かな退職とは、実際の退職とは違い、会社は辞めないけど自分の重点・最優先を仕事には置かないという考え方を指します。つまり、自分の仕事に真剣に本気になりすぎない、考えすぎない態度や気持ちということですね。
ここで注目したいなと思うのは「辞めない」と「仕事をしないわけではない」という2点です。
静かな退職の特徴①辞めない
やめるほど不安があるわけではない。もしくは辞めることの方が転職先があるか、転職できたとしても自分に合う会社があるかどうか不安。という場合、今の会社に残るという選択肢を、個人のキャリアや生活を考えた時に選ぶというのは必然と言えば必然ですね。
静かな退職の特徴②仕事をしないわけではない
当然、このような考え方から「サボる」人も当然生まれると思いますが、一方で色々な投稿を見てみると仕事をサボったり、しないわけではなく、ちゃんと自分の責任範囲をこなしているという点です。やるべきことをやらないわけでも、一生懸命頑張らないわけでもなく、やるべきことを一生懸命やり切るけどそれ以上はやらないという選択肢の人が多い(多そう)ということです。
定められた時間や給与分は一生懸命働く。けどそれ以上は頑張らない
というスタンスが静かな退職の特徴です。
静かな退職の前にあった静かなリストラ
窓際族という言葉がありますよね。これって見方を変えれば、静かなリストラで、クビにするわけではないけど仕事も与えないということですよね。窓際族、検索してみたら、元は窓際おじさんが由来らしいです。
出世ラインからはずれて閑職につく中高年サラリーマンを揶揄することば。実質的な仕事を与えられず,窓ぎわの席で日々新聞を読んだり外をぼんやり眺めている光景を「窓際おじさん」と呼んだ,1977年の北海道新聞のコラムが由来とされる。
引用:窓際族 | コトバンク
静かな退職は時間意識の高まり
時間は有限
誰もがわかっているけど、意識しきれていない部分でもあると思っています。一方でここ最近は「時間搾取の回避」や「消耗したくない」という気持ちの高まりを世の中的に感じます。
リモートワークや在宅勤務、またソーシャルディスタンスで自分と向き合う、もしくは自分1人ないし家族と過ごす時間が増えた結果、仕事の向き合い方や考え方に変化が生まれた1つの事象と考えることもできますが、元々広がっていた考え方を加速したというのが事実かなと思います。
また「終身雇用の崩壊」「年功序列制度の未実施企業の増加」は前々から言われていることでもあります。さらに最近は「2000万円問題」などもあり、老後に向けた副業をしたり、自身で将来のことを考えなければいけない時代でもあります。こういった不安が、自分がどこに時間を費やすべきか、を今まで以上に真剣に考えるようになったとも言えます。今までのように「大企業に入ったら一生安泰」「長く働ければ自然と給与が増える」という時代ではなく、自分の時間をどこに費やすかという視点は改めて求められている、考えなければいけない大事な問いということです。
静かな退職のリスク
今、この時間をどこに費やすか
この問いに対して、短期的な視点だけで考えるのは危険です。昨今のキーワード「サステナビティ」があります。直訳すれば「持続可能性」で、「環境・社会・経済」の観点から持続・継続できることを目指す姿勢です。会社には「ゴーイングコンサーン」という継続企業の前提があります。つまり企業は継続・永続させるという考え方がベースにあり、これは財務諸表の作り方でもその前提で作られています。
企業は会社や事業を継続・永続させていくために、様々な投資をしていきます。「搾取されたくない」という気持ちはどちらかと言えば現実回避であり、短期的な視点です。一方で企業・組織としては中長期的に育成や教育的な側面で難易度の高い仕事や依頼が生まれている可能性もあります(そんな会社ばかりでは無いのも事実ですが…)。
会社や事業を任せていくにあたって、言われたことをちゃんと任せられるということは重要であり、一定の役割や役職までは上がることはできるはずです。しかし、一定の役割・役職を超えると、言われたこと以上のことを作り出す、考え出すことが求められるようになります。
当然と言えば当然で、「言われたことをこなす」という前提は言われたこと=タスクを作り出せる役割の人が必要だからです。つまり、自分で仕事を作り出せる人が必要になってくるわけです。そして、仕事を作り出せることと合わせて、その作り出した仕事・タスクを他の人にお願いできる人が上司であり、マネジャーです。
「ジョブ型雇用」というキーワードも注目度も上がっています。これはリモートワークの普及やダイバーシティ、また副業や転職の一般化による離職リスクの高まりなどから、必要な職務内容に対して、適したスキルや経験を持った人を採用する雇用方法が広がっています。
しかし、繰り返しですが、「必要な職務を設定し、その職務に適したスキルや経験」を定義できる人材は管理職です。
将来的にその会社で出世や上のポジションを目指したいと考えるのであれば、言われたことしかやらないという働き方はマイナスに働くリスクがあるということです。一方で組織として、大事なことは時間の投下量で判断しないことも改めて求められています。
静かな退職経験者として感じること
最後に今日初めて「静かな退職」という言葉に触れたのですが、私は静かな退職経験者でした。
新卒で入った会社で内定者の頃から「私はこの会社で営業トップになります」と宣言し、実際1年目からトップになれました。社会人1年目から3年目の途中までは「人生=会社」でした。毎日終電か泊まり込みで働き、朝は6時台には出社。全社員の中でダントツの活動量で、今自分を振り返ってもトップになって当たり前というぐらい動いていました。とにかくその会社でトップになること、出世することが全てだったので、成果を出すことだけじゃなく、上司や先輩に認められるために働いていました。正直、仕事はほぼ終わっても、頑張っているアピールで残業していたこともあります(残業代は出ませんが)。
結果的にこの行動は実って、自分がやりたかった新規事業の立ち上げや事業部長への最速出世もできました。つまり、時間を費やす=時間投資をして、しっかりとリターン=出世・昇給ができたということです。
ただ出世して事業部長になって、そこでこの会社の伸び代や上限を感じてしまったのが当時でした。「もうこの会社でやれることはないな」と思い、ブログや副業を始めたのが当時です。このブログサイトも実は会社員時代から、仕事をサボって書いていたものが原点なんです。ただ仕事は最低限やっていました。けど、最低限なので、会社からの期待値もどんどん低くなっていきました。最初は「笹田、最近どうした?」「お前、そんなもんじゃないだろ?」と声をかけてもらっていました。しかし、3ヶ月半年と変わらない私に、上司や先輩も見切りをつけるようになっていき、どんどん会社での居場所がなくなっていったことを覚えています。
結果、私は転職し、その後独立をするのですが、今でもこの判断は間違っていたとは思いません。ただ、当時の会社に残っていたら、今では多分年収1000万円を超えていたとも思います。先日、その会社の元上司と飲みに行った時に「当時は考えられなかったけど、今では1本(人差し指1つ=1000万円)もらってるからね」と話していました。年収1000万円が自分の目標であり、ゴールなのであれば、達成する選択肢の1つになっていたということです。
ここで改めて感じることは、自分が時間という自分の貴重な資源を投資する先はどこか、真剣に向き合う必要性が今まで以上に上がっているということです。
投資には必ずリスクがある
現代は非常に不確実性の高い、不確実な時代です。「絶対大丈夫」がないこのご時世で、自分でどこに、何に時間を使うか、お金を使うかをちゃんと判断しなければいけない時代であるということです。
これはつまり投資の考え方です。必ず投資にはリターンもあれば、リスクもあります。転職しても「上司ガチャ」「配属ガチャ」と言われるようにリスクがあります。独立しても「本当にうまくいくかどうか」はやってみなければわかりません。
だからこそ、自分の将来に向けて、自分の時間とお金をどこに投資するのか、したいのかを考えることが、今まで以上に重要ということを改めて考えさせる「静かな退職」という言葉でした。
▼退職の仕方についてはこちらでも解説しています。ご参考ください。
転職者に必須の知識!円満退職するための6つのポイント
▼退職ついてはこちらでも解説しています!
優秀な社員が仕事を辞めていく9つの理由と対策
▼YouTubeでも発信しています。
他にも有益な情報発信を続けておりますので、見てくださいね。
静かな退職って、一体何? – YouTube
この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。