今回のテーマは、「社長の辞めどきはいつなのか」です。組織における経営者の役割と、会社を推進するものは何なのかを考えます。
目次
「志半ば」で社長を辞めるということ
私の知り合いが共同代表でスタートアップを経営していたのですが、突然代表取締役社長を辞めました。解任という形での退職でした。スタートアップというのは上場するか事業を売却した利益で稼ぐモデルです。それを前提にベンチャーキャピタルや株主に投資してもらっているので、その関係の中で何かあったのかもしれません。詳しいところは分かりませんが、今回の辞め方というのは「志半ばで」辞めざるを得なかったのではないかと想像しています。
営業ハックは、上場したり売却したりするよりも私がやりたいこと、ビジョン、ミッションを実現するために仲間に集まってもらい、人を採用して、事業を作って、仕組みを作っています。「所有と経営の分離」とく言われますが、営業ハックは所有者も経営者も私です。会社の持ち主が経営をしているということは、言い方は悪いですが独裁政権にしようと思えばできます。そうしないのは、今50~60人に関わってもらっている中で、自分一人で全部好きなようにやると間違った方向に行くという実感があるからです。自分には独裁政権を運営するだけの能力やキャパはありません。いろいろな人の助けや協力を得ながら進めていったほうが良いと思っているので、いろいろな形で権限を渡していっているところです。
社長に熱量がなくなれば会社は存続できない
会社を存続させていくには財務や経理など、お金の部分が大切です。株式会社は利益を出すことが仕事なので、売上を立ててコストを減らして利益を作る。売上とコストの差分が利益なので、この利益を増やしていく。会社は利益を出すから違ったことにもチャレンジできるし、投資もできます。
世の中には売上が何十億とあるのに利益は何百万しかない会社もあります。モノづくりをしている会社などはそうですが、製造にはコストがかかります。原価率が高ければそのようなことも当然あり得ます。たまたまテレビを見ていたら、車を買って納車されるのが1年半後というニュースをやっていました。半導体不足だそうで、原材料費が上がって利益を圧迫しているというケースも出てきています。
しかし、会社はキャッシュが尽きたとしても何とかする方法はたくさんあります。融資を受けるとかお金を借りるとか、コストを削ってお金を作るのでもいいし、いくらでもやりようはあります。しかし、社長が、経営陣がそういったことをしようと思わなくなったとき、会社は立ち行かなくなります。
「志半ば」と前述しましたが、結局、社長に熱量がなくなったときが会社の潰れどきです。特に中小企業であればそうでしょう。上場している会社ならば所有者と経営者が違うので、所有者が「経営者交代」と言えば社長は代わります。ですが、所有と経営が分離していない、社長がその会社の株主であり株主が社長であるといった状態ならば、キャッシュが尽きたときよりも志が尽きたときが会社の潰れるときであり、社長が辞めるときではないかと思っています。
実際に会社を潰した苦い思い出
実際、私も会社を一つ潰しています。社長がいて、エンジニアがいて、私が営業をやって、後は事務やパートのメンバーが何人かいて回していました。当時の社長に熱量がなくなってきたとき、私は社長以上にやる気を持ってやろうという気にはなりきれませんでした。そうして結果的に、「徐々に撤退だな」という雰囲気に流れていき、3ヵ月たって「もうやめようか」となってやめました。
やっていた事業はコンテンツSEOのマッチングプラットフォームでした。ライターさんは「1文字いくら」で仕事を受けている人が多いのですが、このプラットフォームは「コンテンツSEOは集客が目的なので、集客できたらライターはもっとお金を払ってもらうべきだ」という考えに基づいたサービスです。プロダクト自体も大好きでしたし、これは伸びるはずだと思っていろいろとやっていたのですが、3年、4年たって、ちょっと時間がかかりすぎるからやめようということになりました。
長く続く会社はミッションに熱い思いを持っている
リーダーとマネジャーの違いを言うとき、リーダーは推進者、マネジャーは管理者という考え方があります。どちらも今あるリソースを使って効率的に目標達成、事業推進をしていくのですが、両者は役割が違うとよく言われます。リーダーは「何かを変えたい」とか「世の中をこうしたい」という「思い」がある人がやるべきですし、マネジャーは目指している方向に対して今ある自分たちのやるべきことを実現する、そのために動いていく、管理をしていく。そのようにリーダーとマネジャーは違います。
では、社長はマネジャーなのかということでいけば、「マネジメント業務」という括りで見れば当然社長にもマネジメント業務はあるわけです。改めて社長の一番の仕事は何かと考えると、「旗を立てること」です。会社はどこを目指しているのか、何をやっていくのか、そういうことを提示できなくなったときはまさに社長の辞めどきです。そのとき、もしも会社のビジョンやミッションを進化させてもっと良くしていこうという人が現れたら、その人に社長を譲るべきだと思います。
あくまで、推進していくという気持ちがなくなっていないかどうか、ミッションに対して熱量を持つことができているのかどうか。熱量がないなら人を集めてはダメなんです。だからこそ、ミッションとかビジョンとか、最近はパーパス経営などと言われていますが、「気持ち」を持って会社を作る必要があります。
「稼ぎたいから、お金になるからやっています」で長持ちする会社はありません。長続きしている会社は、「世の中にこうしていきたい」とか、自分が作ったものに対してこれだけの思い入れや愛着があるとか、「この技術は生かし続けなければいけない、残さないといけない」といった使命感をもっているからこそ長く続いています。長く続くことだけが正義とは言いませんが、長く続けるためには思いを持って推進する人がいなければダメだということは間違いありません。
社長の息子に「後を継がせる」ことの是非
二代目社長、三代目社長として社長の子息が会社を引き継ぐケースが一定数あります。親の姿を見ていて、一番影響を受けるのは子供です。「社長の世襲はダメ」といった記事をたまに見かけますが、最終的に会社を推進していく、目指しているものを一番継承してくれるのは子供だという見方はあるし、間違っていないと思います。
別にうちの息子に営業ハックを継いでくれという気持ちはありません。継ぎたいと言えばそのときに考えると思いますが、無理やり継がせようとは思わない。ただ、一番自分の影響を受けているのは子供だろうと思えば、子供に継がせるという選択肢も出てくるだろうというところです。
しかし、それまでに、営業ハックが「営業の悩みをゼロにする」「営業で悩みをゼロにする」ために「もっと社長より推進できます」という人が現れたらその人に社長を代わるべきだし、そのほうが世の中のためにもなります。あくまで社長は役割の中の一つで、一番やらなければならないことは、組織を「目指したい」世界やビジョンに向けて推進することです。
マネジャーは、推進していくにあたっての実務や具体を作っていきます。「具体と抽象」という言い方がありますが、リーダーは抽象的です。マネジメントするにあたっては具体に落としていきますが、リーダーシップとマネジメントのバランスもしっかり作っていかないと、夢や希望だけで終わってしまう。かと言ってマネジメントだけだと夢や希望のないつまらない働き場所になってしまう。このバランスはすごく難しいと思いながらも、社長の辞めどきは熱量がなくなったときというのが、今回の結論です。
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この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。