「今は間に合っています」
「忙しいので」
「予算がなくて」
「他社にお願いしてます」
「必要な時にご連絡します」
営業を行っていると、こんな回答をいただいて、言葉に詰まってしまったという経験をされたことがある方は多いのではないでしょうか?
実際にTwitterでアンケートをとってみました。
言われて一番困る商談中のお客様の反応はどれですか?
— 笹田裕嗣@営業の知恵袋 (@sasada_36) November 13, 2020
などなど、色々言われて、お断りをされるか、回答を曖昧にされてごまかされる。営業をしていれば誰もが経験されたことがあると思います。こういう時どう返せばよいのでしょうか?会話を続けるコツはあるのでしょうか?
このブログを読むと、
- 切り返しトークの基本の考え方
- すぐに実践できる切り返しトーク
が身に付きます。切り返し・反論処理のスキルを上げて、自信を持って営業ができる自分を目指しましょう。
目次
切り返しトークの基本の考え方と7つのステップ
お断りをされた時、回答を曖昧にされた時、営業がやってはいけないことが1つあります。それは”反論”です。
切り返しトークや反論処理という言葉から「いかに反論するか」「いかに言い負かすか」を考えがちですが、討論になった時点で営業は負けです。お客様は敵ですか?違いますよね。お客様はこれから一緒に課題や悩みを解決するパートナーになりうる存在です。ましてやお客様の立場からすれば、わざわざお金を払ってお願いをする、手伝ってもらう相手か否かの見極めをしている段階です。そんな見極め段階で言葉で圧倒されたら、また会いたいとは思えません。結果、当然ですが失注・他社決定になってしまうわけですね。
知らない人から否定されれば誰だってイラッとしますし、そう思われてしまえばこちらの声はお客様に届きません。大事なポイントは「共感+提案+自信」の3要素をしっかりと押さえることです。
- 共感:相手の言葉や考えを最後までしっかりと聞き、理解や同じ気持ちであることを示す
- 提案:相手の言葉を受け入れた上で違った内容や切り口を伝える
- 自信:ダメと言われても自信があることを念押しする
この基本を押さえた上で、反論処理・切り返しトークには7つの基本ステップがあります。
- 理解:相手のお断りに対して理解を示す
- 感謝:感想・意見を伝えてくれたことに対して感謝を伝える
- 質問:今相手が何を考えているか、理解・整理するための質問をする
- 共感:相手の質問回答に対して共感を示す
- 確認:認識にズレがないを確認する
- 解決策:相手が考えているできない理由を解決する提案を行う
- 再クロージング:最後の一押しのメッセージを伝える
ではこの基本を踏まえた上で、トークごとの対策を考えていきましょう。
▼反論処理・切り返しトークの基本はこちら
反論処理・切り返しトークを成功させる基本7ステップと鉄板2大トーク
「今は間に合ってます」と言われた時の切り返しトーク
「今は間に合っています」というトークの切り返しを考える前にまずは言葉の整理をします。
「今は間に合っています」を分解すると
・今は
・間に合っている
この2つですよね、当たり前ですが。
「今は」の意味を整理する
「今は」→過去・未来は間に合っていなかった
と考えることができます。これが大事なポイントです。
自分の提案においても、「今すぐでなくても今後・これからのための話」と伝えることができる可能性があります。
「間に合っている」の意味を整理する
- 解決できていて困っていない
- 解決に向けて取り組んでいる途中
- 忙しいからやっていない
- そもそも興味がない
と、様々な解釈ができるのが、「間に合っています」という言葉の怖さです。
- 解決できていて困っていない→「おめでとう」
- 解決に向けて取り組んでいる途中→「状況どうですか?」
- 忙しいからやっていない→「じゃあ私が代わりにやっておきます」
- そもそも興味がない→「本当にそれで大丈夫ですか?」
相手の言葉の”意味”によって伝えるべきメッセージは変わってきます。
「今は間に合っています」の実践切り返しトーク
切り返しトークの3つの基本「共感+提案+自信」を具体的にどう伝えていくか、整理したいと思います。
まず「間に合っている」という言葉への正しい共感は「良かったです」です!
「間に合っている」の意味は最初からは教えてもらえません。なぜなら、お断りの言葉に最初からそこまで意味を相手は考えていないからです。お断りしているのは「提案内容」や「営業をしているあなた」ではなく、「営業自体」をお断りをしているケースも多いです。「間に合っています」のようなお断りであれば、下記全ての可能性があります。
- 提案行為を断っている
- 会社との取引を断っている
- 営業個人との付き合いを断っている
- 提案内容を断っている
- 解決すべき内容の選択を断っている
- そもそも営業活動自体を断っている
このどれに当たるかをしっかりと確認しなければなりません。ただ「間に合っている」という状態だけ考えると、相手にとっておめでたい話のはずです。なので、まずは「おめでとう」「良かった」という思いを伝えるのが最初です。
そして提案に続きます。
しかし、「おめでとう」と伝えていきなり提案をされても相手は困ります。では何を提案すべきなのか?次なる課題や問題点です。
「間に合ってます」と言われたら
良かったですね!おめでとうございます!ちなみにそういった企業様ですと次に~~のような課題もお持ち伺いますが御社はいかがですか?
と聞かれると、相手もお礼を言われた手前、むげにできない状況になります。テレアポでも営業でも大事なことは断れない状況や環境を作ることです。
他にもいくつか質問のパターンがあるとなお良いです。一例ですが、下記のようなトークです。
- ちなみに今の理想の状態にするのは大変だったと思うのですが、○○さんお一人で取り組まれたんですか?
- ここまで作り上げるのは大変だったんじゃないですか?
- 逆に「今は」ということは、将来的にちょっと不安なことや違った課題も出てきていらっしゃるんですか?
そして、自信で畳みかけます!笑
私、その問題解決得意なので一度詳しいお話をさせてください!
全部が全部、こんなにうまくはいきませんがエッセンスはこんな感じです。
「忙しいので」と言われた時の切り返しトーク
まず現代人の大前提をお伝えします。
全員忙しい
これがポイントです。
これはセイコー時間白書2020の調査結果です。「時間に追われていると感じますか?」という問いに、ここ4年間毎年6割以上の人が「追われている」と感じています。情報が溢れている昨今、人は追われている感覚を持っていると言うことです。
そして、この特徴は特に法人営業をされている方はより強く意識すべきです。
テレアポの電話、飛び込み営業を待ち望んでいた人はいません。何かしらやることがありますし、時間が空いていればスマホですぐに時間を潰せてしまうのが現代です。つまり「暇な人」「時間が空いている人」は誰1人いないという意識で営業をして欲しいということです。
ではどんな意識を持つべきなのか?
優先順位を上げてもらう
これを意識したコミュニケーションが必要になります。もっと単純にいいましょう。「忙しい」と言う相手の反応は「面倒臭い」か「必要ない」かどちらかです。なので、相手にとっての緊急度と重要度を上げる提案が必要になります。
どんなに良い話であっても「スマホでゲームをしている方が大事」という相手であればアポイントはもらえません。
どんなにすごい人であっても相手の立場でみたときに畑違いの人であれば会う価値はありません。
「忙しい」という相手に対して
「そんなこと言わずに」
「そんなことないですよ」
「とりあえず会ってください」
は逆効果です。
「忙しい」と言われたら「そうですよね。お忙しいタイミングで申し訳ありません」とお詫びと労いが大切です。
その上で
「お忙しいのは重々わかっていたのですが
それでも○○様にお伝えしたいことがあったので
ご連絡させていただきました」
と伝えることがポイントです。
さらに伝えるべきことは簡易提案です。
「会ってください」ではダメです。
「~~のお話をさせていただきたく」
「~~の件で御社のお役に立てると思いまして」
と相手が自分に会うべき理由を伝えてください。
この理由もなく「会ってください」「アポください」は完全NGです。
・相手の忙しいに共感しお詫びを伝える
・私に会うべき理由を伝える
この2つを意識してみてください。
トークをまとめるとこうなります。
お忙しいタイミングで申し訳ないです。
◯◯さんがお忙しいことは重々わかっていたつもりです。
ただそれでもお伝えしたいことがあり、今日はご連絡させていただきました。
〜〜の件で私に3分チャンスを下さい
人は理由がなければ動けません。この理由を提案できるか否か営業の成否の分かれ目です。
「予算がない」と言われた時の切り返しトーク
これも営業がよく言われる、かつ言われたくないセリフトップ5に入る言葉ですね。苦笑
ただこの言葉に限らずですが、営業は常に相手の言葉を疑ってかかる必要があります。多くの営業は「予算がない」と言われると「そうですか」と諦めてしまいがちです。
しかし、予算がないには3つの意味があります。
- 本当に使えるお金がない
- 使えるお金がないと思っている
- 提案されている内容に使えるお金がない
「本当に使えるお金がない」のであれば仕方がありません。
しかし、「使えるお金がないと思っている」「提案されている内容に使えるお金がない」のであれば、これはもったいないです。
使えるお金がないと思っているパターンの対処法
要するに思い込みや決めつけです。
例えば4000万円のマンションの営業をするとします。4000万円と聞いたらどうですか?誰でも高いと感じると思います。
ただこれを月々に分割して「毎月7万円でマンションが手に入るんです」と言われたら、今払っている家賃との比較になり、急に無理な金額じゃないように感じる人も増えるのではないかと思います。つまり、いきなり大きな金額を見てしまったり、高いと思い込んでしまったりしているものは、日常の生活や普段の金銭感覚に戻すことがまず必要になります。
その上で現実的か否かどうかを確認すると同時に「払えそう」となったら、他にネックがないかを確認してみることが大切です。
提案されている内容に使えるお金がないパターンの対処法
他で使っているお金を回してもらえれば、自分の提案を受け入れてくれる可能性は当然残っていますよね。
またお金が本当にない場合でも”今”ないだけかもしれません。入金のタイミングや予算立て等、お金が使えるようになるタイミングをしっかりと確認することが必要です。
予算やお金がない問題に対しては「相手のお金の使い方」と「タイミング」この2つをしっかりと確認する習慣があるだけで、大きく改善されます。
「予算がない」の実践切り返しトーク
そして、その上で切り返しの対応を考えていきます。
繰り返しですが、切り返しトークの基本は「共感+提案+自信」です。
「予算がない」と言われた時の共感を伝えるためには「そうなんですね」でOKです。
そこから切り返しを始める時私が多用する言葉が「ちなみに」です。
- ちなみに、今どこにお金を多く使っていますか?
- ちなみに、ご予算が決まるタイミングっていつですか?
- ちなみに、今私の提案は予算を考えなかったらどうですか?
- ちなみに、予算の問題がなければ、こちらの内容はいかがですか?
と「ちなみに」を使ってヒアリングをしていきます。
ヒアリングのポイントは
- 予算やお金の状況確認
- 制約条件の撤廃した際の認識確認
を行うことをベースに考えています。
そうするとお金の意識や提案への反応がわかり次へのアプローチが見えてくるからです。相手のことを理解できなければ、良い切り返しはできません。まずは「ちなみに」で相手の認識を探ってください。
▼「予算がない」の対策はこちらもどうぞ!
「高い」と言われた時の5つの切り返し対処法と考え方
「他社にお願いしています」と言われた時の切り返しトーク
現代の営業における大前提ですが、基本的に「すでに他社が入っている」もしくは「代替手段でなんとかなっている」という意識を持っていきましょう。つまり”リプレイス営業”切り替えを軸にした営業を展開すべきということです。
例えばカメラを初めて買う人が営業の相手だとしても、スマートフォンでカメラが使えるのが現代です。無料や安価で使えるものはインターネット上にたくさん転がっています。つまり、なんとかなっている状態で買い物をしにきている人が多いと言うことです。ましてや新規開拓であればなおさらです。日本には2000年まで468万人の「営業職」がいて、2015年時点では約150万人減ったとはいえ336万人の営業職がいるとされています。
商材も昔と比べ、圧倒的に増えました。なので、前提意識として「基本的に顧客はすでに何か使っている」という意識を持つべきなのです。そう考えれば「他社にお願いしています」と言われるのは必然ということです。
なので、最初に伝えるべき言葉は「そんなこと言わず」ではありません。「そうですよね」と理解を示すべきです。
そして大事なことはここからです。
わかっているにも関わらず連絡をしたということを、理由付きで伝えられるかどうかです。
御社ほどの企業様であれば、すでに手を打たれていると思っていました。しかし、~~を見てお役に立てると思ったんです。
御社ほどの企業様であれば、すでに他社さんとお付き合いされていると思っていました。ただ、どうしても~~がもったいないと思ったので、今回ご連絡させていただきました。
これらのように、わかっていることを前提に、なぜ連絡をしたのか相手のメリットがわかる理由を提示できるか否かが勝負です。
さらにもう1つ大事なことをお伝えしておきます。
他社を使っている=満足している
とはまだ一言も言っていないということです。つまり「他社を使っているし、今何とかなっているから考えるのが面倒臭い」が本音です。比べるのが面倒だから、営業をお断りしていると言うことです。なので、上記の言葉を伝えても響かない時は
わかりました。今◯◯さんが本当に満足いただいているのであれば、こちらから現時点でお手伝いできることはないと思うので大丈夫です。ただ商品やサービスもどんどん増えてきていますが、最近のトレンドや情報なども踏まえて、よく調べていただいた上でのご決断ということですよね?
このようにたまに突き放すような言葉を私は伝えることもあります。それだけ自信があって伝えたいことがあるということをアピールするトークです。
- 他社や代替手段で基本的には困りごとは現時点で解決はできている
- 他社使用=現状満足とは限らない
この2つを意識して営業をしてみてください。
「必要あればご連絡します」と言われた時の切り返しトーク
こちらも前提から考えていきます。
それは「誰も新規営業を求めていない」ということです。これはちょっと語弊があるのですがより正しく表現すると「誰も新規の営業を待ち望んではいない」ということです。
- 困ったら自分から簡単に連絡が取れる
- 営業に相談できる
- Webで資料請求も簡単にできる
そんな時代が今です。
なので「必要あればご連絡します」は”おっしゃる通り”というのが営業が持つべき正しい認識です。ただ残念なことに必要なタイミングは訪れることはほぼありません。
なのでできることは「必要なタイミングを作り出す意識」です。
- どんな時に自分のことを思い出してほしいか
- どんな言葉を考えた時に思い出してほしいか
まずこれを伝えることが大切です。
さらに人が思い出すために最適な方法があります。接触回数を増やすということです。
漢字の暗記でも繰り返しノートに書きませんでしたか?
私はひたすらノートに書いていたので、実家に帰った時、ノートが出てきて「笹田裕嗣」という漢字で埋め尽くされたページのある漢字練習帳が出てきました笑
接触回数、目にする回数が多ければ当然ながら思い出しやすくもなります。
なので、ポイントは
- 思い出してほしいタイミングと
- 定期的に連絡が取れる環境
この2つを作る意識をもってみてください!
▼「必要あればご連絡します」と言われた時の切り返しのヒントはこちら
アポイント獲得手段を一覧化して見えてきた”断られないアプローチ
【まとめ】切り返しトーク・反論処理のコツ
共感+提案+自信
これが切り返しトーク・反論処理では大事とお伝えしてきました。また相手の反応ごとの対応も整理しましたが、最後にもう1つだけ大事なポイントをお伝えします。それは何を言うかも大事ですが、どう伝えるかもそれ以上に大事と言うことです。
どんなにキレキレの切り返しができたとしても、自信なく映ってしまえば、声に覇気がなければ相手には伝わりません。何を言うかを考えると同時に、自分の話し方は相手にどんな印象を与えているのか、ぜひ考えてみてください。自信を持った営業で相手をどんどん動かしていきましょう。
▼YouTubeでも発信しています。
他にも有益な情報発信を続けておりますので、見てくださいね。
【営業トーク】9つのお断りワードを切り返すトーク – YouTube
この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。