テレアポは時代遅れ
テレアポ=迷惑電話
こう言った風潮は根強くあります。とある会社の採用支援で入らせてもらったときも、学生さんから「まだテレアポってありますか?」という質問は、正直驚きましたが、こう思っている学生さんが多いのも事実かと思います。
コミュニケーション手段も多様化し、多くの人が携帯電話を所有し、インターネットも充実したこの時代に「テレアポをするなんて遅れている」という気持ちもよくわかります。またお客様の立場、電話を受ける側の立場からも「忙しい時に電話をしてこないで」「どこでこの番号を知ったの?」と不安やお怒りの気持ちも理解できます。
そこで今日は、営業代行や営業支援を行なっている我々の自ら首を絞めるテレアポのお断り方法を考えていきたいと思います。
目次
そもそもテレアポは迷惑な電話の可能性が高いことは事実
そもそも論ですが、テレアポはPUSH型営業と呼ばれる営業手法の1つです。お客様起点ではなく、営業起点で行うアプローチのことを指し、その上で電話というコミュニケーション手段を活用するのがテレアポです。
営業起点のアプローチとは、つまりお客様がニーズや課題感、期待値を持っていない段階で営業を行なっている可能性が非常に高いということです。もちろん、タイミングよく「ちょうど探していた」「ちょうど困っていた」「ちょうど検討していた」という方がいることもありますが、本当にそんなケースは稀です。
いきなり知らない人から掛かってきた電話に対して、いきなり本音を話してくれる人もいないですからね。
迷惑なテレアポでさらに迷惑な営業行為
テレアポをやっているとまず多くの営業が壁にぶつかるのが「受付突破」で躍起になっています。
受付の方のことを「ゲートキーパー」と表現したり、受付の方が電話に代わってくれないことを「受付ブロック」と言ったり、非常に営業の身勝手な表現ですね。
ただここの壁が高い、分厚いことは事実で、この受付の壁を乗り越えるべく、多くの営業が様々な小手先のテクニックを駆使してきます。
社名を名乗らない
これは保険会社や不動産会社が多いです。
理由としては「こんにちは。〜〜保険(社名)の◯◯と申します」と、社名を名乗った瞬間に、何の会社かバレてしまい、すぐに切られることが多いからです。
ただこれは違法行為です。特定商取引法第16条に該当する可能性が高いです。
会社としてアプローチ、営業をする際はちゃんと社名を名乗らないといけません。
一方でなぜこういったアプローチが増えてしまったのかでいくと、個人名だけだと「採用の応募者」「社長や社員の知人・知り合い」「お取引先」など、すでに会社の誰かと接点があり、無下に扱って相手を怒らせてしまい、結果として会社に不利益を与えてしまうかもというリスクがあるからです。
実際、昔テレアポ研修をさせてもらった会社で、以前のスクリプトを拝見したら衝撃でした。
あ、お世話になっております。◯◯です。いやー、いつもすいません。今日はもう社長戻ってますか?
これが最初のトークなんです。スクリプトのポイントは「いかに馴れ馴れしく話すか」「あたかも私は社長と面識がある感を出すか」と書かれていました。
お気づきですか?新規の架電で相手のことは全く知らない相手にもこうやったアプローチをせよと書かれているんです。さらに受付の方から「どちら様ですか?」と聞かれたら
え、○○です。私です、私。◯◯って言えばすぐ代わってくれると思いますよ
と書かれているんです。これはもうアウトです。あとおまけで録音を聞かせてもらったらベテランは
えー、忘れちゃったんですか?さびしいな〜。まぁ、とりあえず社長に代わってください。今社内にはいるんですか?
とさらに馴れ馴れしさが増してました笑
営業であることを言わない
またこういったテレアポをする営業パーソン等は過度に営業であることを隠します。けど、営業です。
「営業ですか?」と聞かれると
いえ、営業ではなく、今回ご挨拶をさせていただきたくお電話しました
営業というわけではなく、今回情報提供の件でのご連絡です。お役に立てる情報があるか、一度ヒアリングさせていただき
いや、もうこれ完全に営業じゃないか(怒)となるような電話にも関わらず、「営業ですか?」と聞かれると反射的に「いえ」「いや」と言ってしまっている営業パーソンは非常に多いです。
どこの会社に掛けているかわかっていない
とある会社はExcelにまとめられた100件以上の架電先(営業リストと言っている会社が多いですね)を上から下まで今日中にかけきれという指示を出しています。
とある会社は1日500コールをさせているところもあります(実際、私のところに相談のLINEが来たことがあります)。
こう言ったアプローチをさせていると何が起こるのか。
もう電話をかけるマシーンと化しないと、電話をかけ切ることができないんです。なので、とにかく黙って電話番号を押し続ける作業を繰り返すことになります。
相手のことがよくわからないまま、ひたすらに電話をかけ続けているんです。
見極めポイントは「なぜ弊社にご連絡いただいたんですか?」と聞いてみるのも1つです。またもっとストレートに「どこの会社にご連絡いただいていますか?」「弊社の社名はわかりますか?」と聞いてしまうのもアリです。
よくローラー営業みたいな表現をする会社がありますが、上から下までとにかく電話をかけまくるような営業をやっている会社は、この質問に答えられません、
要件を言わない
最後にもう1つ迷惑な電話が「ご用件は?」に答えない電話です。
電話がかかってきた際、電話に出て欲しい人の指名があっても「なぜ電話をかけたのか」「何の用事なのか」をちゃんと伝えてもらえないと取り次ぐことはできないですよね?
けど、ここで営業であることがバレると電話を切られると思って、用件をひた隠しにする営業が多いのも事実です。
よく使う言葉として「ご挨拶で」「ご案内で」「情報提供で」というパターンや、「先日お送りさせていただいたお手紙の件で」「先日のメールの件で」というパターンもあります。手紙やメールは送っていないのに、送ったことにして電話をかけてくる営業もいるので要注意です。
テレアポで多いアプローチ
テレアポの目的は字の通り「テレフォンアポイントメント」なので、アポイントをいただくことが目的です。テレアポ大会なるものが会社でも開催されていて、一斉にみんなで電話をかけている会社もまだまだあります。
こういった営業の中で多いのはこれらです。
◯◯の責任者の方、お願いいたします。
◯◯に入るのは、自分の売り込みたい商品の担当者らしき部署です。
広告営業だったら、「広告周りの責任者の方」「Webの御責任者の方」、人材紹介や求人媒体だと「採用の責任者の方」、経理関係だったら「経理の」、給与計算等の労務関係だと「労務の」、営業関係だったら「営業の」という形でアプローチをしてきます。
◯◯をご担当されている方、いらっしゃいますか?
もう一歩踏み込んで、部署ではなく実務や作業で指名してくるケースもあります。
広告だと「リスティング広告の運用や管理をご担当されている方」、採用だと「新卒採用をご担当されている方」といった内容ですね。
〜〜はされていらっしゃいますか?
採用だと「現在募集されていらっしゃいますか?」、広告だと「現在、リスティング広告などはご活用されていらっしゃいますか?」と自社の商材やサービス内容に対して、現状の取り組みを聞いてくるパターンです。
採用や広告に関しては、ちょっと調べられば相手が何をやっているかはわかります。このジャンルで「〜〜されていますか?」「〜〜されていらっしゃいますか?」と聞いてきた時点で、全くリサーチせずに電話をかけていることがわかります。
一方で、会社の内情に関してはわからない商材もあります。
社内のシステムやツール、機材関連です。OA機器などは実際に相手のオフィスに伺わないとわからないですし、他にも会計関連だと「コスト削減の取り組みはされていらっしゃいますか?」というトークが多いです。
ただこういったトークは、問題を拡大して伝えているので危険です。基本的に企業活動は「売り上げを伸ばす」か「コストを下げる」かで利益を出すことが事業運営の基本で、どちらかしかありません。この組織における最終ミッションを電話段階で、しかも受付の方に聞いてくる時点で、商材のリサーチや提案内容が精査されていない可能性が高いです。(また過去弊社実績で「売り上げアップのご相談」「コスト削減のご提案」は圧倒的に反応の悪いトークです)
〜〜しませんか?
「売り上げをアップが簡単にできる取り組みなんですが、実施しませんか?」「コストを削減されませんか?」と大テーマで話をしてくる会社がいますが、基本的にNGです。
他にも「ご掲載しませんか?」「他社でも成果が出ている取り組みでして、御社でも実施しませんか?」というようなトークがあります。
〜〜していただけませんか?
またより具体的な提案として、人材会社だと「御社の求人を拝見してご連絡させていただきました。現在営業職の方を募集中かと思いますが、弊社では営業職に強いメディアを運営しておりまして、こちらでご掲載いただけないかと思い、ご連絡いたしました」というようなアプローチです。
このトークだけでも1日に何人も言ってそうですよね笑
〜〜ありますか?
広告に関する営業
「売り上げを増やしませんか」「今の広告の効果に満足していますか?」といった文言を使用する傾向にあるのが広告関連業者です。
人材紹介サービスの営業
「新卒採用のお話をしたのですが現在募集をされておられますか?」「求人広告の応募はありますか?」といった文言で営業電話を仕掛ける人材紹介サービスです。
〜〜にご満足されていますか?
「今の(〜〜の)効果に満足されていますか?」というトークです。
もう放っておいてほしいです。
〜〜を拝見して
とある社長が言っていました。テレアポで「〜〜を拝見してお電話しました」という営業トークを聞いたら、「あなたのために掲載したんじゃありません」って言い返してるって。営業側はリサーチしたというつもりなんですが、相手からすれば求めている電話じゃないということを絶対に忘れちゃダメですよね
— 笹田裕嗣 | 営業ハック (@sasada_36) May 28, 2022
求人サイトやメディアへの掲載はあくまで自分の事業を伸ばすためであって、営業に営業しやすい環境を提供しているわけではないですからね。
新しい◯◯を始めまして
これNG。テレアポや飛び込みで「弊社で新しい取り組みを始めまして」というトーク。新規の相手からすれば、新しくても古くても知ったこっちゃありません。「新しい」から興味を持つのは、これまで関係があり、相手の状況を知っている相手。「何ができる」「相手がどうなれる」取り組みかを伝えましょう
— 笹田裕嗣 | 営業ハック (@sasada_36) May 28, 2022
新規であろうがなかろうが、そもそも営業自体が知らない相手からであれば「全部が新しい取り組み」です。相手目線になれない言葉はNGです。
デメリット(リスク)のないお話でして
「デメリットの有無」「リスクの有無」を決めるのはお客様です。
そもそも出逢って(電話で話して)数十秒、長くても数分しか話していない相手に伝わる言葉ではありません。そもそも友人・知人でもこの前置きの言葉を言われたら怪しいと感じてしまいますよね。
決して損をさせない
これも結構多いです。
「決して損をさせないお話なので」というのであれば、まずは自分や周りの人にちゃんと進めなさいと思われてしまいがちです。私も最後に熱量を伝えたい、示したい時に使うことはあります。けど、これもある程度会話ができて、相手が前向きに検討いただけている時です。
簡単にできる
「簡単にできるので」「手軽に始められるので」は営業トークで私は使わない言葉です。そもそも相手がやるときは簡単だからの前に、ほしいものが手に入るか否かの判断が先。ここが伝わっていないとどんなに簡単でもNG。かつ手軽・簡単か否かは相手が決めることで、変にハードルを上げてしまいますよ。
業界ナンバー1の
「業界ナンバー1」「シェアナンバー1」「顧客満足度ナンバー1」
先日こんなツイートをしてしまいました。
やめましょう。テレアポで「業界No.1」「顧客満足度1位」というアプローチ。確かにバンドワゴン効果で証明されている手法ですが、機能するのは相手が検討をしている時です。テレアポは検討しているか否かわからない相手への営業。自ら「営業します」と営業感を出すだけなので使わないことがオススメ
— 笹田裕嗣 | 営業ハック (@sasada_36) May 28, 2022
よくテレビCMで見る言葉ですね。また人はナンバー1に弱いというのもあります。営業で活用すべき心理学56選。売り込み以上に活用すべき心理学の使い方でも紹介した「バンドワゴン効果」があります。「みんなが使っているから大丈夫」という安心感が相手の意思決定に影響を与えるというものです。最近は、自社で満足度調査を実施したり、アワード等に出てこういった実績を作りにいくベンチャー・スタートアップも増えました。
ただこの言葉・アプローチが機能するのは、相手が検討をしてくれている時です。テレアポはそもそも相手がまだ検討していない段階でのアプローチが大半のため、うまくいかず、逆に営業感を丸出しにして相手から避けられます。
テレアポや迷惑な電話営業をスムーズに断る方法
まずテレアポや迷惑な電話営業をお断りする1つのポイントは「淡々と繰り返す」が1番きついです。正直、営業を行う立場からすれば、何かしらの返答やリアクションをいただければ次に繋げられる可能性が生まれます。それは返答の言葉だけでなく、相手のリアクションや言葉のトーンなどから予測を立てながら会話をしています。
しかし同じ言葉を同じトーンで返されると営業側はお手上げです。
シンプルに誰に対してでも基本的にお断りができるトークは
「営業は全てお断りしております」
これに尽きます。「いや営業ではなく」「今回商品のご提案等ではなく」的な回答・切り返しが返ってくると思いますが
「それらの活動は営業ですよね。繰り返しますが、弊社ではこのような営業は全てお断りするルールとなっており、私の判断で決めることはできないため失礼いたします」
と言われたら、もうできることは何もありません
すでに取引のある相手なのか、お客様なのか、新規の営業電話なのか、ここの判別ができないときは「弊社の担当者のお名前とご用件をお聞かせください」で判断できます。名前がわからず、内容が曖昧な場合は営業電話・テレアポですので、お断りでOKです。
また、もう1つ。ここ最近のお断りで厳しいと感じるのは「コロナ関連」のお断りです。新型コロナウイルスは全世界的な問題であり、全員共通で認識をしている問題です。さらに感染症という問題であり、この問題を無視することはできません。そこで
「新型コロナウイルスの影響を考慮し、不要不急のお打ち合わせに関しては、会社から禁止とされておりご対応が難しくなっております。必要な際はこちらからご連絡させていただきますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします」
と言われたらもう営業側もどうしようもありません。「ワクチンを打ってます」「マスクをしています」というレベルの話ではないですからね。お断りする際は、上記のセリフを繰り返し伝えればお断りできます。
テレアポや迷惑な電話営業のお断りでやってはいけないこと
ここでやってはいけないことは相手に失礼な対応をすることです。
具体的には
- ガチャ切りをする
- 相手を否定するような言葉を投げかける
- 怒る
などです。
相手が失礼な迷惑な電話をかけてきているんだから仕方がないとお思いかと思いますし、気持ちもよくわかるのですが、会社としての担当者であっても、個人としては大事なお客様の可能性もあるということです。
例えば昔の私ですが(昔話ですよ。私の心が狭かったんですが笑)、とある飲料系メーカーにテレアポをしたことがあったんです。自分が大好きな飲み物があったので、この会社は絶対にアポが取れる、絶対に良い人たちに違いないと思い込んでいたんです。すると、電話に出たのは超大企業なのに受付の方ではなく、管理職クラスっぽい(声だけの勝手な決めつけですが笑)おじさんが出たんです、するとその方から
まだテレアポなんてやっているのか。そんな時代遅れな営業をいつまでも続けるなんて、御社はこれからの戦略をどのように考えているんだね。弊社はだね、、
と5分ぐらい、ありがたいお話(皮肉)をいただき、一方的に切られました。そこからその会社の商品を目にするたびに、そのおじさまを思い出してしまい、何年も買うことがありませんでした(若気の至りです)。
しかし、これって会社として営業をしていて会社・組織としてはお断りでも、個人としてはお客様ということを全く考えていません。これが会社との関係は新規営業、個人としては顧客ぐらいのレベルであれば良いかもしれませんが、世の中は狭いものです。雑な対応が巡り巡って、回りに回って、自分にとっても大事なお客様や関係者にネガティブな声やクレームが行ってしまう可能性も0ではありません。
「しっかりと断る」は悪ではありませんが、必要以上に相手を落とすようなコミュニケーションはNGです。
これは秀逸・面白いと思ってしまったお断り
なんとかしなきゃいけないと思っているのに、切り返すことを忘れて諦めさせられて秀逸トークを最後にご紹介します。
弊社は来月倒産いたします
この会社、今も元気に経営されていらっしゃいました
社長が危篤でして
不要不急な連絡は申し訳ないですがお控えください
と言われたのですが、社長は元気に翌月インタビューで別のメディアに出ていました。
すいません。今火を使っているので
ご自宅はどちらですか?オフィスじゃないんですか?という話なんですが、火と言われると確かに対応に困ります。
来月から全員でラスベガスに行くんです
「社員旅行ですか?」とお聞きしたら、「いえ社員全員で異動するので、まだどうなるかわかりません」と言われました。本社住所は変わらず、社長のTwitterは変わらず大阪の写真が投稿され続けていました。
私、明日で退職するんで
「私明日やめるんで、正直この会社のことどうでも良いんで」
と言われたら、「他の方を」と言っても「いや、この会社のことどうでも良いんで」と繰り返されました。
副業の邪魔しないでください
もう「すいません」しか言えませんでした。
今骨折してるんです
「お大事に」と返してしまったんですが、関係ないこと後から気づきました
弊社でも同じサービスをやっているので
「ラーメン屋さんですよね?」
【まとめ】テレアポや迷惑な電話営業のお断り対策
テレアポを受けていただいている皆様への記事でも書きましたが、営業は迷惑をかけたくて電話をかけているんじゃありません。自分の受注や売上を伸ばすために会社から言われて掛けている営業と、本気で相手の役に立ちたい・力になれると思って電話をかけている営業の2パターンがあります。
前者の自分都合押し付ける営業はNGですが、本気で役に立ちたいと思っている営業の声はちょっとだけでも聞いてもらえたら嬉しいです。けど、営業する側の営業パーソンの方々は、相手のことをちゃんと理解して営業しないとですよね。
▼テレアポをする側のコツについてはこちらで解説しています!
この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。