私は、これまで営業部長として複数の営業チームを見てきました。最大で40人、最小で2人でした。人数や一緒に営業を行う人によって多少やり方は変わりますが、目的を見失うと、マネジメントは失敗します。これは経験談ですが、私が最初、営業部長についたときはメンバーの顔色ばかり伺っていたため、
営業メンバーは気分よく働いている。しかし、全く成果が出ない。
という、事態に陥りました。この時は辛かったですね。メンバーのために頑張れど頑張れど成果が出ず、社長から怒られるわけです。
結果が出ないことが続き、怒られ続けメンバーへのあたりも強くなる。その結果、営業メンバーがポツポツ辞めていく、という負のループに陥ったことがあるのです。
この記事を読んでいただいた方にはそうならないで欲しいので私が部長の経験で学んだことをお伝えしたいと思います。
部長に求められることは「成果」と「成長」の2つだけです。
具体的に見ていきましょう。
目次
そもそも部長の仕事とは何か?
部長は字の通り、部のトップです。管理職に当たるポジションです。管理職は、部署内の経営資源を活用し、部署の成果を最大化させることが役割になります。その中で部長の役割は、部署の責任者として最終的な意思決定をすることにあります。
部長と課長の違い
よく部長と課長の違いがわからないという話をもらいます。当然、部長の方が偉いということはわかっていると思います。組織図的にみてもこうなります。
部長の上は役員・社長になっていくわけです。役職の序列は一般的に、主任、係長、課長、部長の順に上がっていきます。その中でも部長は部長はその部署における最高責任者です。また、社長や取締役など、経営陣にも非常に近い立ち位置にあり、経営陣と従業員の橋渡し的な存在でもあります。 部長は、プレイヤーとして業務に携わるのではなく、部署内の仕事と人員を管理して、組織を成功に導く役割を担います。そのため、目線としては経営者に近い考え方・見方が必要となります。部長と課長の大きな違いは、「視点」です。具体的には以下のような形になります。
部長というポジション
部署全体の経営資源の運営・管理を行う経営者
- 経営視点
- 戦略の検討・構築
- 仕組みづくりがメイン
主な役割はこのような形です。業務の遂行スキルだけでなく、業績や仕事の生産性を向上させるための方法など、業務全体を客観視して考える能力が求められます。どのような人材に、どのように働いてもらうか、どの業務にいくら予算を回すのかといった、部署のこれから進んでいく方向性や作戦・戦略を考えるのも部長の役割です。
部長は部署のトップであるため、意思決定力や実行力が求められます。会社の規模にもよりますが、現場で部下と直接仕事をするのは課長の役割になるため、一般社員と直接関わる機会は少なくなります。
課長というポジション
現場をしっかりと回すことが役割。実行部隊のリーダー
- 現場視点
- 戦術の実行
- 一般社員との直接のコミュニケーションや管理を行う
- 部下の育成を直接的に行う
課長も部長と同じ管理職ですが、戦略を実行する役割を担う役割を持ちます。そして、直接部下とかかわり、具体的で詳細に指示を出し、迷ったときは、部長に相談して指示を仰ぐこともあります。 これに対して、あくまで部長は経営側の視点を持ち、部署としての戦略を考えます。進むべき道やシナリオを描く役割を担うため、部下との直接のかかわりが減ってくる点もあげられるでしょう。
部長の役割とやるべき仕事
それでは部長の役割は何でしょうか。例えば営業部であれば、部全体の売り上げの最大化が役割になります。部内の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をマネジメントし、成果を出すことが仕事です。具体的な仕事の内容は下記になります。
部長の仕事①目標の設定
- 部署としてどんな数字を追っていくか
- 何を目標にするか
- また課もしくは個人単位にどう落とし込むか
これらを決定するのが、部長の役割です。長期的な部の目標設定・達成についての責任を負っていくことになります。経営計画に基づいた売上予測や売上目標の作成は、課長ではなく部長が管理していることも多いです。
組織全体でどこを目指すか、どこまでやるか。経営陣とのすり合わせも役割となります。
部長の仕事②施策の選定
目標が決まったら何をやるかを決めることです。実際に施策の実行は現場で行いますが、その現場の動きを最大限効果を出すための仕組みや取り組みを決めることも部長の役割です。
部長は、短期の目標達成を現場のリーダー(課長の場合も多いです)と共に設定していくと同時に、中長期の目標(戦略)を立案して部下に落とし込んでいかなければなりません。短期的な目標は常に達成し続け、順調な状態であったとしても、環境は変化していくものです。そうした変化に対応し、長期的に目標を達成していくための施策を選定することが重要になります。
- 外部環境の理解
- 自社や自社サービスの課題の明確化
- 自社独自の強みの把握
環境の変化に素早く対応していくため、こういった点に常にアンテナをはっておくことが営業部長の仕事の1つであると言えるでしょう。
部長の仕事③実績の検証
次にやるべきは実行した結果の振り返りです。施策をやりっぱなしにすることは、組織の営業力を高めるときに1番やってはいけないことです。PDCA等が手法としては有名ですが、行った施策がどのような結果を生み、どの程度効果があったのか整理することは部長の役割として必須です。
また、ここでは課長やメンバーの評価も部長の役割になります。比較的部長は課長と比べ現場とのかかわりが少なくなると上述しましたが、課長やメンバーの仕事ぶりを出来る限り見ておくことが重要です。ここで重要な点は、部下が能力を最大限に発揮できる環境を整えるために承認・評価をすることです。普段自分のことを見てくれない人から急に褒められたり叱られたりしても、心には響きにくいですよね。部下一人ひとりがモチベーションを高く維持していくためにも、現場の状態を見て理解しておくことは重要です。
部長はお伝えした通り、経営資源を最大限使い切ることが役割です。つまり、メンバーや各課の状況把握、投資したお金の回収状況なども把握し、次の期や年度にどうすべきかも検討しなければいけません。
▼PDCAの回し方についてはこちらでまとめています!
140時間残業から見えてきたPDCAのコツと考え方をPDCAノート著者に聞いてきた!
部長の仕事④改善策の決定
振り返りを行なった結果から次に何をすべきかを決めるのが、部長の役割です。
例えば目標に未達だった場合、
- どこに問題があったのか特定する
- なぜその問題が起きたのか原因を特定する
- 対策案を考える
- 対策案をもとにメンバーに実行させる
- フィードバックをし、改善を重ねる
こういった手順をチーム単位で指揮していくことも、部長の仕事だと言えます。
部長に求められる成果とは
ここでいう成果は、「売上・利益目標の達成」と「仕組み構築」です。
部長の成果1:売上・利益目標の達成
売上・利益目標の達成は字の通りです。
こちらは営業部などに特に色濃く求められるものになります。なぜなら、営業に最も求められているもののは”入金”だからです。
会社を支えるお金を入れることが役割です。部として、営業チームがあれば多くのお金を会社にもたらすことが1番の役割であり、求められていることです。
営業メンバーはとにかく入金いただくために営業活動を日々頑張っています。なので部長は、その入金をいかに効率的に集めるかが、部長の役割なのです。
ただ、効率や無駄と色々言いましたがまずは営業が入金を実現しなければ会社は倒産してしまいます。なので、まずはお金を入れることにコミットしましょう。
部長の成果2:仕組み構築
一方で、仕組みの構築も、部長に求められる大切な役割です。こちらはどの部署であっても重要な成果になるはず。
具体的に仕組みとは、度々例に出しますが、営業でいけばリソースを投入すれば売上が増える仕組みです。
他の部署であっても、
- 採用
- 経理
- 広告
など様々な部署で「効率よく求めていることができる」という仕組みを作ることが求められます。いわゆる勝ちパターンを作ることが部長のもう1つの成果なのです。
▼営業の仕組み構築についてはこちらで解説しています!
部長に求められる成長とは?
部長には、成長させなければならない2つのモノがあります。
それはメンバーと組織の成長です。
部長に求められるメンバーの成長
一緒に働くにあたって、メンバーを成長させられなければ部長として、役割を果たしているとは言えません。
メンバーの成績や業務への取り組みはもちろん、人間としても成長できるよう支援することが、営業部長の仕事です。
普段の指導や、研修等を活用していきましょう。成績向上のためのスキルや心構えは勿論ですが、人として信頼されるような人間になれるように、支えていくことが、会社の将来にも繋がっていきます。
▼教育についてはこちらもご参照ください!
10年間営業教育・研修に携わって見えてきた2つの課題と3つの正しい向き合い方
部長に求められる組織の成長
成果の部分と重なりますが、より良い組織にならなければ、部長がいる意味やひいてはマネジメントする意味がなくなってしまいます。
- 組織として、成績は伸びているのか否か
- 効率は上がっているのか
これらを考えていかなければなりません。
例えば、1人の営業マンに依存している状態では、組織が伸びているとは言えません。
また、複数の営業マンがいるにも関わらず、各営業マンが個人事業主的な働き方をしていては、組織としてシナジーを生むことができませんよね。連携力を高め、誰であっても成果が出せる状態を作っていく。いわば再現性を高める仕組みづくりが非常に重要です。
部長の役割は数字と施策で示す
資料を作ることが仕事になっている部長が散見されますが、社内資料はどんなに作っても売上には繋がりません。
これは、私の元上司たちを見て「こうはなるまい」と私が心に決めたことです。笑
しかし、社内やメンバーへの共有・報告は必須です。そこで私の元営業部長たちのことをもう一度考えなおしたのです。その結果、わかったことがあります。
追うべき数字が多すぎる!
もちろん数字を使って、何が良くて何が悪いのかをしっかりと追うことは大切です。
しかし、自分で管理しきれない数字をチェックして(いるふりをして)頑張って報告をまとめるのです。
恐らく部長の報告は、早ければ1週間に1回、間が長くても1ヶ月に1回の頻度で行うのではないかと思います。この期間に改善できる部分は限られているはずです。
課題を整理して、改善して、その結果を再度チェックして……とやっていれば、1週間は少なくとも時間が必要です。
にも関わらず、チェックする項目を5個も10個も設けて、シートに数値を入れることが仕事のようになっている部長が多いのです。
改善は1度に多数のポイントを変えてしまうと、何が良かったのか、悪かったのかがわからなくなってしまいます。
なので、一気に一新するというのは部長のやる方策としては良い選択とは言えません。
上記の表は、実は私が営業部長に付いてから実際に使ったものです。そんなに項目は多くはないですが、営業をしながら、部長職もやっているとこのボリュームでも結構な負荷でした。
そこで、極力部長として追うべき数字を減らしました。今では、「打ち合わせ数」「見積り提案数」「受注数」「入金数・金額」だけにして営業を行っています。そこから、施策ごとに項目を増やしたり減らしたりして動いているのです。
つまり、部長が成果として報告・納品するものは、数字を示すこと、また、その数字目標に向けた対策を示すことなのです。
まとめ
部長の役割を理解いただけましたか?
メンバーと組織を成長させ仕組みを作り、目標を達成する
一言で言えば、これだけです。
そして、そのために最小限のKPIを立てて、日々改善するPDCAを回し数字と施策を示すのです。
この認識さえ忘れなければ、部長の頑張りが必ず組織の、メンバーに還元できるはずです。
面談することや飲み会に行くことが部長の仕事ではありません。部長の仕事って、どうしても身近な先輩や元上司と同じことをしてしまいがちなんです。
私もそうでしたので、あなたはそうならないように日々意識してくださいね。
▼私の管理職の実体験はこちらで詳しく話しています!
ただ鬼詰めするだけの管理をやめよう。営業部長がやるべき本当に意味のある営業管理
部下が成果を出せない4つの理由と営業マネージャーがやるべき社員営業とは?
▼【YouTube】人材育成のコツについてはこちらで解説しています!
この記事の監修者
株式会社営業ハック
代表取締役
笹田 裕嗣
営業代行事業を始め、「売れる営業組織」へと変革するためのあらゆる支援を行っています。
弊社独自のセールスメソッドを用いて、停滞する営業組織の改革から新規営業組織の立ち上げまでトータルでサポートいたします。今までご支援させていただいた企業数は100社を超え、主に中小・零細企業のあらゆる業種で成果を出し続けています。